漁期が短い漁獲物は多々ありますが、その中でもとくに短いといえる「年にたった2日だけしか漁獲できない」貝が北海道に存在します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ユニークな漁が行われる「風蓮湖」
北海道・道東地域にあり、小さな砂州を挟んで根室湾に面する風蓮湖。海とつながる浅い入り江のような汽水湖で、干潮のときは干潟が現れる一方、厳しい寒さ故に真冬には湖面が凍結する時期もあるなど、様々な環境を持ち合わせています。
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そのため、風蓮湖では他ではあまり行われないユニークな漁が行われています。その最も代表的なものが「氷下待ち網漁」。これは氷結した湖面に穴を開け、網やその支柱などを設置して行う漁です。タラの一種で居酒屋メニューに欠かせないコマイのほか、カレイ、ワカサギなどの美味しい魚が漁獲されています。
オオノガイ漁
風蓮湖のユニークな漁は真冬に行われるものだけではありません。ただでさえ短い道東の夏の、そのまたごく短期間にだけ行われるものが存在します。それは「オオノガイ漁」。
オオノガイは、殻の長さが10cmを超えるやや大型の二枚貝。潮が大きく引く日に出現する干潟で、大きな熊手のような「すき」で掘って漁獲されます。
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大型の二枚貝にはおおむね共通する特徴ですが、このオオノガイは成長が遅く、10cm程度になるのに6~7年ほどかかるとされています。そのためオオノガイ漁は例年2日のみに限定されています。
当地におけるオオノガイ食用の歴史は長く、近隣にある縄文時代の貝塚「温根沼貝塚」からもその殻が出土しています。出土するオオノガイの殻はいずれも7cm前後より大きい個体のみだそうで、縄文時代にも今と同様の漁業制限のようなものが行われていたことを示唆するものとなっています。
実は身近なオオノガイ
そんな「レア漁獲物」であるオオノガイですが、実は道東のみならず、全国的に生息している貝です。東京湾などの身近な干潟にももちろん生息しており、貝殻は比較的よく目にします。
しかし、干潟のごく浅いところにいるアサリやシジミと異なり、オオノガイは干潟を30cmほど掘らないと獲ることができません。またそもそも生息数があまり多くないこともあり、漁や潮干狩りのターゲットとなることはまずありません。
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食味は抜群
しかしオオノガイは「白ミル貝」として知られるナミガイや有明海の珍味として知られるウミタケの仲間で、大きく発達した水管の味はとても良く、知る人ぞ知る良食材です。
潮干狩りの折、熊手をスコップに持ち替えて深く掘ってみると、ごろっと大きなオオノガイに出会えるかもしれません。見つけるのも掘り出すのも楽ではありませんが、その分採れたときの達成感や食べるときの満足感は大きなものとなるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
提供元・TSURINEWS
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