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山道具は新商品が発売されるたびに、軽くなって収納サイズも小さくなる。それなのに、いつまでもテント泊の装備は重くてかさばると言われ続けているのはなぜだろう? 10年前の道具と最新モデルを比べて、重量と収納サイズの変化を確かめてみた。

10年前といま、どれだけ違う?

テント泊装備見直し計画

山道具の新商品を毎年チェックしていると、「さらに軽く」とか、「収納サイズがよりコンパクトに」とか、重量と収納性の進化をアピールするものが多いことに気付くはずだ。テント泊の荷物は重くてかさばるといわれ続けているが、総重量も全体の収納サイズも時代とともに変化しているはずである。

そこで今回はテント泊の必須アイテムである、テント、スリーピングバッグ、スリーピングマット、防寒着、レインウエアについて、使い古した10年以上も昔の商品と最新モデルを比べることで、重さと収納サイズがどれほど変化したのか確かめてみた。

協力してくれたのは、本誌でもおなじみの吉野時男さん。登山用品専門店のスタッフとして長年山道具の進化を見続けている、この道のプロだ。
「ここ数年で圧倒的に進化したのはダウンを使った製品です。羽毛の品質が格段に向上し、以前では考えられないほど軽くてコンパクトになりました」。

そのほかの山道具、技術の進歩によって軽さに特化したアイテムが選べるようになったことが、ここ数年の変化だという。今回比べてみたアイテムの結果を参考に、テント泊装備を見直してみてはいかがだろうか?

テント

テントは使用人数によって重さと収納サイズが変わります。居住性を求めて2人用を選ぶ方もいますが、長く使い続けると1人用のスペースでも十分なことに気付くはずです。

もちろん、同じ1人用でも10年前と比べると、生地の厚みやポールの材質によって軽いモデルが増えました。登山でもっとも使いやすいといわれているダブルウォールの自立式テントでも、いまでは1㎏前後が平均重量といえるでしょう。

さらに最近は、1㎏以下の超軽量シェルターも存在します。使い古した2人用テントを持っている方は、買い替えを検討してみるといいですね。

Before

10年以上前に購入した2人用モデル。重さよりも居住性を優先させて購入したが、登山経験を積むたびに1人用で十分と考えるようになり、それからの出番は少ない。

モンベルの2人用テント
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

After

ソロ登山がメインなら1人用で十分。シングルウォールやトレッキングポールで設営する非自立式のシェルターもあるが、やはり使いやすいのはダブルウォールの自立式。

ニーモ/タニ1P ¥50,000
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)
FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

最近のテントは、強度があって軽いDAC社製のアルミポールを使っているモデルが多い。

スリーピングバッグ

ダウン製スリーピングバッグの場合は、ダウンの質が圧倒的に向上しました。10年前は700FPが当時でもっとも優れた品質だったのが、いまでは900FPも当たり前。この進化が軽さと収納性に直結しています。

それと、初めて購入するときは3シーズンで使える保温性があるものを購入しがちですが、夏山をメインに考えるなら、保温力をワンランク落としても、防寒着やスリーピングカバーを活用することで問題なく眠ることができます。

この保温性の違いでも寝袋をさらに軽くコンパクトにすることが可能です。

Before

10年以上前に購入した3シーズンのダウン製スリーピングバッグ。ダウンの品質は700FPだったと記憶しているが、当時としては軽量コンパクトで最高品質の寝袋だった。

モンベルの3シーズンバッグ
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

After

リミット温度が4℃程度の保温力でも夏山をメインに考えるなら十分。昔のものと比べると収納サイズは半分以下だ。寝袋がもっとも軽くコンパクトに進化した道具といえる。

モンベル/ダウハガー900 #5 ¥37,000
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)
FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

この商品のダウンの品質は900FP。シェルに使われている生地も7デニールと極薄。

スリーピングマット

10年前からエアマットはありましたが、完全に空気だけで膨らむタイプが各メーカーから発売されて選択肢が増えたのはここ数年の話。クローズドセルマットはバックパックの外に取り付けるしかないですが、エアマットを選べばバックパックの中に収納することが可能になります。

ただ、重量に注目すると目覚ましいほどの軽量化は進んでいません。代わりに保温性や寝心地がよくなり、エアマットには逆止弁付きのバルブや空気を大量に送り込むポンプが開発されたことで、より使いやすくなったといえるでしょう。

Before

断熱フォームに熱を反射するアルミ箔を貼り付けた、いわゆる銀マット。重量だけ見れば軽いスリーピングマットではあるが、寝心地や収納性に優れているとはいえない。

一般的な銀マット

After

空気だけで膨らむエアマットはとにかく軽量コンパクト。最近は断熱フィルムを組み込むことで、断熱性を向上させたモデルも増えてきた。寝心地もアップしている。

ニーモ/テンサーショート マミー ¥14,500
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)
FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

空気を抜くとペラペラになるのがエアマットの特徴。収納サイズは手の平に収まる。

インシュレーション

スリーピングバッグと同様で、封入するダウンの品質が向上したことで、同じ保温性を維持しながら軽量コンパクトなモデルが増えました。なかには1000FPという驚異的な品質のダウンを使っているモデルもあります。

さらに、シェルに使われている生地もどんどん薄くなり、7デニールという細さの糸で作れられる商品もあるほど。ダウン製品は長く使うほどダウンが汚れや汗などで潰れてしまい保温力が低下してしまいます。

もし洗濯しても膨らみが復活しないようなら、買い替えを考えてみるといいですね。

Before

長く使い続けた結果、ダウンの膨らみがなくなってしまった。汗を吸っているせいか、持つと重さも感じられた。保温性の観点からも、買い替えを検討するタイミングだ。

アウトドアリサーチのダウンジャケット
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

After

最新モデルは驚くほど軽い。重さを感じることはなく、ふわっと浮くような感覚さえある。シェルの生地も極薄だがリップストップ構造で耐久性も備えている。

モンベル/プラズマ1000ダウンジャケットMen’s ¥25,400
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)
FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

膨らみがあり保温性も十分。格子状に織られた生地が裂けることを防いでくれる。

レインウエア

個々のアイテムが軽くなっていることもありますが、過去には考えられなかったほど軽量なモデルが増えたことで、選択肢の幅が広がったといえるでしょう。

耐久性を保ちながら生地を薄くできるようになった技術的な進歩が、重量の削減に貢献しています。重量や収納性とは関係ないですが、ストレッチ性に優れたモデルも最近は増えました。

3シーズンで一般登山道を歩くだけなら、ウエアを枝などに引っ掛けて破いてしまうシーンは少ないですし、山道具のなかでも使う出番が少ないものなので、軽さに特化したコンパクトなモデルを選んでもいいと思います。

Before

3レイヤーのゴアテックスを使用したスタンダードモデル。生地に厚みがあるので安心感はあるが、一般登山道ではここまでの耐久性を必要としない場合も多い。

ザ・ノース・フェイスのレンウエア上下
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

After

最近は軽さに特化した2.5レイヤーのレインウエアも増えてきた。さらに表の生地を薄くすることで、軽量化を図っている。どれを選んでも基本、耐久性は問題ない。

モンベル/バーサライトジャケットMen’s ¥14,600 &パンツMen’s ¥9,500
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)
FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

生地を光にかざしてみると、胸元のロゴプリントが透けて見えるほど薄いのがわかる。

5アイテム見直せばこう変わる!

Before 4.7kg

After 2.3kg

今回比べたアイテムの実測値の総重量を比べてみると、2.4㎏も軽くなっていることがわかった。全体の収納サイズも小さくなっているので、バックパックの容量を見直してもいいかもしれない。

バックパックは……

Before

1気室で外にポケットなどが付いていないシンプルなモデル。機能的にはこれでも十分だが、最新の山道具の収納サイズから考えると、60ℓの容量は大きすぎる。

ゼロポイントの60ℓクラスバックパック
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

After

最新モデルは軽量化され、同じ容量でも収納ポケットの数が増えて収納力や使い勝手が向上した。背面のメッシュも開発され、背負い心地も改良されている。

オスプレー/ストラトス50 ¥21,000
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

軽さに特化したモデルが増えたため、選択の幅が増えました。同一モデルで進化したポイントを比べてみると、生地が薄くなることで軽くなったうえに、背負い心地や収納ポケットの数などで、主に使い勝手が改良されています。

容量については、いままではテント泊だと60ℓが基本だといわれていましたが、個々のアイテムの収納サイズが小さくなっているため、50ℓ前後のモデルを用意しても問題ないですね。もっと道具を厳選すれば40ℓ前後の容量でもパッキングできるでしょう。

※重量・サイズは実測値を記載しています

教えてくれたのは吉野時男さん
 

FUNQ
(画像=FUNQ/PEAKSより引用)

千葉県にあるヨシキ&P2のスタッフとして、かれこれ15年以上も山道具と関わっている。イベントなどで年間130日も山に入り、一年をとおしてフィールド経験も豊富。

PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

出典
PEAKS 2019年9月号 No.118

CREDIT :
文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
写真◉村上修子 Photo by Nobuko Murakami

提供元・FUNQ/PEAKS

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