2022年3月16日付けで「アゴラ」に以下の記事を掲載した。

日本人はワクチン未接種でも欧州旅行ができる

その後も各国で国境規制解除の動きが進んでいるので紹介したい。

ヨーロッパの入国規制解除はどんどん進む
(画像=anyaberkut/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

上記記事を書いた段階では、スウェーデンには日本から直接入国することは規制されていた(直行便がないので実質的に不可能だったが)。

ところが4月1日から全てのコロナ関連の国境規制が撤廃されることが発表された。

このように、欧州ではワクチン接種の有無に関わらず、全てのコロナ関連規制が撤廃される国が増えている。背景としては、新型コロナを国内では「普通の感染症」扱いにしたため、国境規制の必要がなくなった、ということがある。

ここで今のEU諸国の状況を整理したい。

まずEUの方針をおさらいする。基本的な方針をEU理事会が策定し、その内容を加盟国に対し推奨している。実際の決定権は各国にあり、全ての国がEUのきまりに従っている訳ではない。そのため国によって入国規制に差がある。

EUの規制はHPに掲載され、内容は適宜改訂されている。

EUの規制内容としては、大きく入国対象者の「居住国に対する規制」と「人に対する規制」がある。いずれも「コロナウイルスの流入をゼロにする」のではなく、「流入を少なくする」という考え方から、「リスクの低い入国者には入国を認める」という規制内容になっている。

「人に対する規制」はワクチン接種により感染リスクが低いとみなされる人の入国を認めるというものだ。2022年2月22日に規定が改正され(3月1日から実施)、ワクチン接種の条件として2回接種者は接種完了後270日以内という条件が加えられた。つまり2回目接種後270日を過ぎれば3回目の接種をしない限り未接種者と同じ扱いになる。

「居住国に対する規制」は「感染度の低い国からの入国を認める」というもので、入国を認める国のリスト(グリーンリスト)が作成されている。このリストに掲載されている国からの入国はワクチン接種条件に関わらず認めるよう推奨されている。リストは2週間おきに更新されることになっているが、オミクロン株の感染拡大に伴い各国が独自規制を強めたことからリストの必要性が薄れ、さらに今は各国が入国規制自体をなくす動きに向かっているため、リストの更新頻度は低くなっている。3月26日現在で最新のリストは1月17日付けのものである。

ちなみに日本は2021年夏の流行時にグリーンリストから外されて以降、秋の落ち着いた時期にもリストに復活せず今に至っている。その時の状況は以下の記事で述べた。

現在のグリーンリスト掲載国は以下の通りである。

Bahrain Chile China (subject to confirmation of reciprocity) Colombia Indonesia Kuwait New Zealand Qatar Peru Rwanda Saudi Arabia South Korea United Arab Emirates Uruguay Hong Kong Macao

2ヶ月以上改訂されていないので今の感染状況とはかけ離れたリストになっている。ずっとリストから外れなかったオーストラリアを除外する所までは改訂されたが、ニュージーランドは残っているし、現在人口10万人あたり世界最大の新規感染者を出している韓国や香港も掲載されたままだ。

現実の動きとしては、このリストに関わらず各国が国境を開放しているので、そのうちEUの指針自体がなくなるのではないかと私は思っている。昨年秋には、いつ日本がグリーンリストに復帰するのかやきもきしていたが、もう今はリストに載らなくても各国が入国規制を撤廃して、日本からどこの国にでもワクチン未接種で入国できるようになると思うようになった。ちなみにEU非加盟のイギリスはすでに入国規制を撤廃している。

また前述した通りEUの指針では2回接種後270日を経過すると未接種者扱いになるので、欧州旅行をしようと考えている2回接種の日本人で、夏には未接種者扱いになる人は多いと思う。近いうちに入国規制がなくなるので、その人たちは3回目接種をしなくても欧州旅行ができるようになると私は予想している。

そして欧州だけでなく東南アジアでも開国ラッシュが続いている。

東南アジアの場合はワクチン接種を条件に入国を認めるケースが多いが、これも早い段階で全ての入国条件を撤廃するのではないかと期待している。

アメリカは今の所入国条件としてワクチン接種を原則義務づけている。その状況は以前「アゴラ」で紹介した。

アメリカの場合、民主党のバイデン政権がワクチン接種を進めたいためにワクチン接種条件を付けているという政治的側面が強い。これも11月に行われる中間選挙で共和党が優勢になると予想されるので、選挙前に規制撤廃の動きが出る可能性は十分にあると私は思っている。

文・前田 陽次郎/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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