ロシアのプーチン大統領はウクライナへの武力侵攻を断念し、外交・対話政策を進める姿勢を見せてきたが、欧米外交筋では「ウクライナ危機」から次は「フィンランド危機」になるのではないか、といった懸念の声が聞かれる。

フィンランドの「ウクライナ化」とは
(画像=新年のスピーチをするフィンランドのサウリ・ニー二スト大統領(フィンランド大統領府公式サイトから、2022年1月1日)、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

フィンランドは冷戦時代から中立主義を堅持し、地理的に隣接している大国ロシアとは友好関係を維持してきたが、そのフィンランドで北大西洋条約機構(NATO)への加盟を模索する動きが出てきたからだ。

フィンランドは1995年に欧州連合(EU)に加盟したが、北欧ではスウェーデンと同様NATOには加盟していない。ヘルシンキでは今、「バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)が2004年3月、NATOに、同年5月にはEU加盟を実現したように、わが国もEUだけではなく、NATOにも加盟しておくべきだった」と嘆く声が聞かれる。当時、ウクライナ危機のような新たな東西紛争が起きるとは予想していなかったからだ。

同国ではNATO加盟問題(2020年の時点で加盟国30カ国)は久しくタブーだったが、プーチン大統領がウクライナのNATO加盟を拒絶し、対ウクライナ国境沿いに10万人以上の兵力を結集させ、キエフに圧力をかけている状況を目撃したフィンランドではロシアに対する警戒心が再び高まってきた。それを受け、NATO加盟問題が再びホットなテーマとなってきたわけだ。

ドイツ放送のギュナール・ケーネ記者は14日、フィンランドのNATO加盟の可能性について長文の記事を掲載している。同記者は、「フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領は新年のスピーチで自国の安全保障問題をテーマに語り、その中でNATOとのメンバーシップという言葉を発した。ほんの数年前には想像もできなかったことだ」と述べている

フィンランドは1939年(冬戦争)と1941年の継続戦争の2回の対ソ連戦争で敗北し、カレリア地域の大部分を失い、モスクワによって命じられた友好条約に署名しなければならなかった。全ての重要な外交政策決定はその後、ソ連との間で暗黙のうちに調整しなければならなくなったことから、「フィンランド化」という表現が生まれたわけだ。

ただ、冷戦の終結後、フィンランドは外交政策の自由を取り戻し1995年にEUに加盟したが、NATOには加盟しなかった。しかし、ロシアが2014年にクリミアを併合して以来、フィンランドはいわゆる「NATOオプション」を公式の政策としている。