目次
ハーレー、BMW、トライアンフを凌駕する圧倒的な高性能
・想定を超える好調なセールスを記録
・「世界初」のオンパレード
・稀代の名車カワサキZ900super4「Z1」登場のきっかけに
・モデルチェンジを繰り返して熟成を重ねる
・ホンダCBの空冷インラインフォアは受け継がれる
かつて味わうことができた鼓動する4気筒
ハーレー、BMW、トライアンフを凌駕する圧倒的な高性能
68年の東京モーターショーにおいて参考出品され、翌年世界初の量産インラインフォアとして販売が開始されたCB750FOUR。
その存在は世界のオートバイ市場の勢力図を変えてしまうほどのインパクトを秘めていた。
それまで欧米メーカーの圧倒的優位にあったオートバイ産業だったが、このCB750FOURの登場以降、日本メーカーは飛躍的に技術を高め、今に続く「日本バイク=高性能」のイメージを決定づけることになる。
想定を超える好調なセールスを記録
CB750FOURと言えば、そのアイデンティティは、なんと言っても空冷4気筒エンジンである。
大きく重い巨体(今見るとコンパクトです!)に当時としては超高額な38万5,000円という価格設定もあって、当初はそれほど売れないと予想されていたが、蓋を開ければ年間販売計画台数をはるかに超える注文が一気に舞い込んでくることになった。
世界中から寄せられる爆発的なオーダーに対応するため、クランクケースを砂型鋳造から金型によるダイキャストに変更し、工場の人員を大幅に増員するなど、生産方法も大きく改善されることになる。
つまり、砂型クランクケースはCB750FOURのごく初期モデルのみの特徴であり、これが現在、大きなプレミア価格を生じさせる要因となっている。
砂型クランクケースのCB750 K0は、簡単には出会うことはできないし、販売車があっても超高額だ!
「世界初」のオンパレード
量産車で最高速度200km/hを達成したCB750FOUR。その高性能を受け止める車体にも豪華な装備が奢られた。
ブレーキは量産車初となるディスブレーキ。
フレームは、量産車初のダブルクレードルフレーム、
さらに、ジェネレーターやメーターなどなど
電装車体補機パーツに至るまで、とにかく当時の最先端装備が満載されていた。
これらの技術は、現代のバイクにも通じているもので、いかに当時のホンダに先見性があったかが窺えるものである。
稀代の名車カワサキZ900super4「Z1」登場のきっかけに
このCB750FOURの登場に驚いたのはカワサキであった。当時水面下で750cc、4気筒エンジンを搭載した新型車の開発を進めていたのだが、CB750FOURを見て、急遽排気量を900ccに拡大。
CB750FOURを凌駕する新型車を生み出すことになったのだ。
もし、CBの存在がなければ、Zは750ccだったわけで、そうなると海外での人気や評価もまた違っていたものとなっていただろう。
モデルチェンジを繰り返して熟成を重ねる
69年に初期型K0(ケーゼロ)が登場したCB750FOURだが、その後、シリーズは徐々に各部に改良が加えられ、オリジナルの姿を残すのは76年モデルのK6が最終型となった。
今では6年くらいのモデル継続は当たり前だが、当時は技術的過渡期でもあり、最先端のマシンだったCB750FOURも6年の歳月で並み居るライバル達に対して性能面で水をあけられていた。
ホンダCBの空冷インラインフォアは受け継がれる
そこで次世代のニューモデルとして登場したのがCB750Fである。
新たなDOHC4気筒エンジンとより現代的な装備&デザインのF(エフ)でCBの人気は再び高まり、やがて時代は80年代の空前のバイクブームに突入していくことになる。
かつて味わうことができた鼓動する4気筒
私もかつて、CB750FOURの初期型K0に試乗する機会に恵まれたことがある。
現代のバイクに比べればコンパクトだが、重厚で威厳をたっぷりと湛えるような姿は惚れ惚れするもので、本能に訴えてくるようなカッコよさがあった。
現代のモデルにくらべ、マスが集中していない車体は数値以上に重く感じたし、クラッチもブレーキもスロットルも操作は軽快ではない。
しかし、操安性は実に素直でハンドリングもニュートラル。まったく乗りにくいことなどなく、故障の心配さえ無ければ今でも日常使いできるし、現代のバイクと遜色が無い。というより、現代のバイクよりも乗り手の感覚に近いものがあり、勝手にバイクが走っていくような“乗らされてる感”が全くないのだ。
いかに当時の技術が優れていたのかを身をもって体感し、驚きを新たにした次第である。
やはり特筆すべきはエンジンである。4気筒のスムーズさを持ちながら、まるでシングルとかツインエンジンのような鼓動感を持っていて、スロットルを開くと地面を蹴るように加速していく。その感覚が実に気持ち良い。
さらに、4本マフラーから吐き出される排気音は、腹に響く低音と高回転の高音がハーモニーを奏でるようで実に官能的。いつまでも乗っていたいと思わせるものだった。
現代の最新4気筒は全く癖無くひたすらスムーズな吹き上がりが持ち味だが、CB750FOURは全く違うフィーリングで、まさに個性の塊のようである。こうしたエンジンフィールは初期型K0が顕著らしく、これがK0人気の要因でもあるらしいのだ。
カワサキZともまた違った個性である。
世間一般的にはホンダはジェントルで、カワサキはワイルドなイメージだが、個人的に言わせてもらえば、Z1とCB750FOUR K0で比較すればCBの方がよっぽど荒々しくてエキサイティングだ。
エコこそ正義、乗りやすさが正義、安全こそ正義、うるさいバイクはもう受け入れられないのはわかっている。
しかし、エンジン屋のホンダの本気が詰まった、宗一郎の「ドリーム」を体現した、わくわくするような「ホンダのバイク」を内燃機関が消える前にもう一回見たいものである。
CB750FOURを回顧するとそんなことを思わされた。
text/丸山淳大
提供元・Moto Megane
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