サステナビリティはファッションを通じたコミュニケーションの一つ
20トンの「ジーンズの山」との出合いから、約一年後の2021年12月。「デニム de ミライ〜DENIM PROJECT〜」の個性豊かなアイテムの数々が、関係者向けに限定公開された。2022年3月23日にはいよいよ、伊勢丹新宿店を含む協業6社および三越伊勢丹オンラインショップで一斉に公開・販売を開始する(商品やブランドは展開店舗ごとに異なる)。
この「デニム de ミライ〜DENIM PROJECT〜」の他にも、愛着のあるアイテムを黒染めするアップサイクルサービス「KUROZOME REWEAR」など、「ファッション×サステナビリティ」のユニークな企画を仕掛けてきた神谷氏。その背景には、バイヤーとしてファッションを軸に顧客との接点づくりを考え続けてきた中で、抱いた危機感がある。
「かつてはファッションといえば『このアイテムが流行っているから着る』のが当たり前だった。しかし、今はお客さまが『自分がどうありたいか』『自分を世の中にどう表現していきたいか』をファッションに求めるようになっている」(神谷氏)。
単にモノとしてファッションを提案しても売れなくなってきている。顧客一人ひとりの生き方や価値観、多様な選択肢に、ファッションをどのように結びつけるか――思索をめぐらせる中で出た答えが「KUROZOME REWEAR」であり「デニム de ミライ〜DENIM PROJECT〜」だった。つまり、神谷氏にとってサステナビリティとは、ファッションを通じたコミュニケーションの一つ。あくまで主眼は「ファッション」にあるのだ。
「ファッションとはあくまで、かわいいから、かっこいいから『着てみたい』と高揚感を与えるものであるべき。サステナビリティも、一方的な価値観の押しつけではなく自然に『着てみたい』と思ってもらえるようにお客さまに提案していきたい。それは、私たち売り手側の責任でもある」(同)。
バイヤー 「リ・スタイル」バイヤーの神谷将太氏 「アパレル業界でも過剰在庫を抱える素材は他にもたくさんある」と、神谷氏はさらに先を見すえる。素材・作り手・売り手の三者の思いを結びつける「デニム de ミライ〜DENIM PROJECT〜」のスキームがさらに進化していく、そんな「ファッション×サステナビリティ」の未来を期待したい。

文・堀尾大悟/提供元・DCSオンライン
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