厚生年金保険の保険料額や将来の給付額は一律に固定されているわけではない。保険料、給付額共に決まった計算の仕方があり、対象者によって金額は変わる。それが分かれば厚生年金保険料と受け取ることができる額が分かる。

厚生年金保険における保険料計算

厚生年金保険の保険料は毎月の給与にかかる保険料額と賞与にかかる保険料額を合計した金額になる。具体的には、前者は標準報酬月額に保険料率を掛けた額、後者は標準賞与額に保険料率を掛けた額だ。

保険料率は、2017年9月以降は基本18.3%である。保険料は企業側と従業員側で折半するため、従業員が払う保険料の割合は9.15%となる。つまり毎月の給与と賞与それぞれに9.15%を掛け両者を足した金額が、従業員が支払う保険料額になる。

標準報酬月額と標準賞与額算出にあたっても決まった計算方法がある。標準報酬月額計算の基礎となるのは基本給に残業手当や通勤手当などの各種手当を含めた税引き前の給与額だ。その給与額を厚生年金保険料額表に照らし合わせ、給与額に見合った標準報酬月額を導き出す。

標準賞与額は年3回以下の回数で支給されるボーナスなどの税引き前の額から1千円未満の端数を切り捨てた額である。1回の上限額は150万円で、実際の賞与額がそれを超えても標準賞与額は150万円となる。

毎月の給与が45万円、賞与が75万円で夏冬の2回支給を受けている人の例を上げる。厚生年金保険料額表は2017年9月以降分のものを参照する。標準報酬月額は同表によると給与45万の場合、44万円だ。標準賞与額は75万円のままである。

44万円に9.15%を掛けると4万260円で、これがひと月の給与にかかる保険料となる。1年分だと12を掛けて48万3,120円だ。賞与については75万円に9.15%を掛けた額、6万8,625円が保険料となる。2回分では13万7,250円である。そしてその合計額62万370円が、1年分の保険料額になる。

厚生年金保険加入者が受け取れる年金

年金の給付は基本的に老齢年金、障害年金、遺族年金の3パターンで行われ、それぞれ基礎年金と厚生年金の2種類がある。

老齢年金は、要件を満たした人が一定の年齢を迎えた時に支給される年金だ。障害年金は病気や怪我のため障害を負った人が一定の要件を満たしたとき支給される年金である。遺族年金は、保険加入者や年金受給者が死亡した時一定の要件を満たしていれば遺族に支給される年金となっている。

主に基礎年金は国民年金加入者、厚生年金は厚生年金保険加入者に対する給付だ。ただ厚生年金保険加入者は国民年金加入者でもあるため、要件を満たせば基礎年金に上乗せする形で厚生年金も共に受け取れる。

老齢基礎年金は原則10年の国民年金加入期間がある人に65歳から支給される終身年金だ。対象となった場合その年金額は保険料を最大限支払った場合に支給される年金額の満額をもとに計算される。

例えば2017年度の満額は77万9,300円、月額にして約6万4,941円である。国民年金保険料の免除などを受けた期間がある時は、その期間分をそこから差し引いて、各対象者に適切な年金額を算出する。

老齢厚生年金は老齢基礎年金の受給要件を満たし、かつ一定の厚生年金保険加入期間がある場合支給される。支給開始年齢は基本的に65歳だ。しかし60歳から65歳になるまでの間に、場合によっては特別支給の老齢厚生年金という形で支給されることもある。

特別支給の老齢厚生年金は、年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことによる混乱を避けるため暫定的に設けられた措置である。基本的に1961年4月1日までに生まれた男性、1966年4月1日までに生まれた女性が一定の要件を満たす時、65歳より前の段階で支給が開始される。

老齢厚生年金の構成

特別支給の老齢厚生年金は定額部分、報酬比例部分、加給年金額の3つから成る。定額部分は老齢基礎年金に、報酬比例部分は本来の老齢厚生年金に相当する役割をもつ。65歳から受け取るはずの老齢基礎年金と老齢厚生年金が65歳未満の方を対象に支給される場合はそれぞれ定額部分、報酬比例部分という形で支給されるのである。

本来の老齢厚生年金は報酬比例部分と経過的加算、加給年金額から成り立つ。特別支給の老齢厚生年金であった定額部分は、65歳から支給される老齢基礎年金に切り換わり、報酬比例部分はそのまま引き継がれる。加給年金額は、要件を満たしているならば65歳以降も同様に支給される。

加給年金とは主に一定年齢に到達した厚生年金保険の加入期間20年以上の人に、一定の要件を満たす配偶者または子がいる時支給される年金だ。

経過的加算は特別支給の老齢厚生年金における定額部分と老齢基礎年金の差額を埋めるものである。定額部分のほうが老齢基礎年金よりも金額が大きくなると見込まれるしばらくの間、60歳からの年金額を65歳以降も保障するため設けられている。

老齢厚生年金の計算

特別支給の老齢厚生年金の額は定額部分、報酬比例部分、加給年金額の合計、本来の老齢厚生年金の額は報酬比例部分と経過的加算、加給年金額の合計となる。特別支給の老齢厚生年金と本来の老齢厚生年金に共通する報酬比例部分と加給年金額の計算方法はどちらにおいても変わらない。

定額部分は定額の単価に生年月日に応じた率と被保険者であった期間の月数を掛けて算出する。2017年度の単価は1,625円だ。

報酬比例部分は、基本的に標準となる報酬額に生年月日に応じた率と被保険者であった期間を掛けて算出する。ただ標準となる報酬額は2003年3月までと同年4月以降で異なり、前者は平均標準報酬月額、後者は平均標準報酬額と呼んで区別する。これは標準的な報酬額の計算方法が2003年の4月を境に変更されたためである。

変更前は毎月の給与から導く標準報酬月額のみを計算に用いていたが、変更後は加えて賞与の分、標準賞与額も計算に組み入れることになった。その影響で、報酬比例部分の計算に際しては、2003年3月までの分と同年4月以降の分をそれぞれ計算した後に足し合わせることになったのである。

定額部分と報酬比例部分で用いる乗率は概ね1,000分の5から10の間で定められており、変更の前後で用いる率は異なる。

加給年金額は配偶者、また子どもの数、年齢によって変わる。65歳未満の配偶者、第1子、第2子がいるなら2017年度4月以降の基準だと各22万4,300円、第3子以降は7万4,800円が加算される。

加給年金の計算に含まれる子どもの定義は18歳到達年度の末日、3月31日を迎えていない状態の子、また20歳未満で1級、2級の障害の状態にある子となっている。状況によって加給年金はさらに加算される場合もある。

経過的加算は、定額部分から厚生年金保険の加入期間のうち、1961年4月以降かつ被保険者が20歳以上60歳未満の頃に限定した期間の老齢基礎年金相当額を差し引いた金額になる。

65歳からの受給額はいくらになるか

老齢基礎年金と老齢厚生年金が65歳から支給された場合、年金額はどれぐらいになるか計算例を挙げる。国民年金と厚生年金保険に40年加入した人が65歳になった時に受け取れる年金額についてだ。保険料の未納、免除はないものとする。

加入期間の内訳は、2003年3月までの加入期間が15年、2003年4月以降の加入期間が25年と設定する。2003年3月までの平均標準報酬月額は30万円、2003年4月以降の平均標準報酬額は53万とする。

配偶者と子については、65歳未満の配偶者はいるが生計を維持されている子はいない状態と仮定する。経過的加算などは考慮せず、未来についての例示ではあるが諸々の制度、計算の基礎となる金額などは2017年度のものを適用した。

老齢基礎年金は加入可能年数の上限である40年という期間があるため満額を受け取れることになる。2017年度9月分からの年金額を参照すると77万9,300円である。

老齢厚生年金については報酬比例部分と加給年金額を計算する。報酬比例部分はまず2003年3月以前と4月以降で分ける。2003年3月までの分の計算に用いる数値、平均標準報酬月額、乗率、加入期間月数はそれぞれ30万円、1,000分の7.125、180である。これらを掛けた額38万4,750円が2003年3月までの分の年金額となる。

2003年4月以降の計算は、平均標準報酬額、乗率、加入期間月数を掛けて行う。それぞれは53万、1,000分の5.481、300となり、計算すると87万1479円だ。2003年3月以前の38万4,750円と足すと125万6,229円で、こちらが老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額となる。加給年金額は配偶者1人なので22万4,300円である。

全てを計算した額、77万9,300円、125万6,229円、22万4,300円の合計225万9,829円が、年金として受け取れる額になる。月額で表すと約18万8,319円である。

障害年金の計算

障害基礎年金は、国民年金の加入者が医師の診療を受けた際一定の障害が認められ、かつ保険料納付要件などを満たす時に原則支給される。対象となる障害の等級は1級と2級だ。1級の場合は年金額の満額に1.25をかけた額、2級の場合は年金額の満額が支給される。

子がいる時は1級と2級のどちらの場合でもその人数に応じて一定額が加算される。子に応じた金額、子の定義は加給年金額と同じである。

障害厚生年金は、厚生年金保険の加入者が概ね障害基礎年金と共通の要件を満たした時に支給される。ただ対象はより広く、障害等級1級、2級、3級がその範囲となる。一時金として障害手当金が支給される場合もある。

年金額は1級の場合老齢厚生年金の報酬比例部分を1.25倍した額、2級、3級の場合は報酬比例部分が基本の年金額となる。1級、2級においては一定の要件を満たす配偶者がいる場合は加えて一定額、2017年4月以降分だと22万4,300円が加算される。なお3級には最低保障額が定められており、同年基準だと58万4,500円になる。

遺族年金の計算

遺族基礎年金は一定の受給資格期間などの要件を満たした国民年金加入者が死亡した時に支給される。給付を受けるのは死亡者に生計を維持されていた子のある配偶者か子だ。給付対象となる子の定義は加給年金、障害基礎年金と同様である。

年金額は老齢基礎年金の満額に子の人数に応じた額を加算した金額となる。子の人数に応じた加算額は加給年金、障害基礎年金と同じだ。ただし受給権を得た子が1人だけの場合、第1子としての子の加算はない。また受給権を得たのが子どもだけで、その人数が2人以上の場合、第1子の分は支給されない。

遺族厚生年金は一定の要件を満たした厚生年金保険の加入者が亡くなった時に支給される。対象となり得るのは妻、夫、子、父母、孫、祖父母である。子、孫の定義は加給年金、障害基礎年金と同様だ。夫、父母、祖父母の場合は、原則年齢が55歳以上であることが要件となる。年金額は基本的に老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する額である。

文・ZUU online編集部

【関連記事】
ネット証券は情報の宝庫?日経新聞から四季報まですべて閲覧可!?(PR)
40代で「がん保険」は必要か?
40歳から効率的にお金を貯めるための6つのステップ
共働きの妻が産休・育休中でも夫の「配偶者控除」を受けられる 意外と知らない節税法
40代が知っておきたい保険の知識まとめ