テレビの健康食品を買い続ける親戚

親戚の年配女性に健康に熱心な人物がいる。会うたびに「納豆がいいらしい」「バナナがいい」といい、その都度1つの食品を爆買いして食べ続けている。聞けば、昔からテレビの健康番組にハマっており、そうした健康食品の効用が取り上げられるたびに、その食品を食べ続けるという消費行動を取っているらしい。

一度、本人に正論を言ったことがある。筆者は医師ではないものの、健康における一般論として「食品の栄養は総合的に考えた方がいい。どれだけ体に良いとされている食品でも、過剰摂取は毒になり得る。同じものを集中的に食べるより、バランス良く食べるべきでは?」という趣旨の話をしたことがあった。しかし「でもテレビの先生が健康に良いと言っていた」とまったく聞き入れられなかった。その回答を聞き、すぐ意見を伝えるのを諦めた。

ネット情報に触れる世代は視野が広い?

インターネットで記事を書き、動画を出すと必ず多面的な意見が寄せられる。的外れなものや、内容を読まずにタイトルだけで感想を書いて来る場合も多いが、時には「確かに。そういう視点はなかった」と思わされることもある。また、自分がニュースを見る場合においても、必ずTwitterなどで複数人の専門家たちによる、様々な議論を多面的に確認するようにしている。気になるニュースは日本語だけでなく、必ず英語でも調べる。そうした情報消費様式に慣れると「情報とは一方向からではなく、多面的に考えて総合的に判断するもの」というスタンスが当たり前になる。

このように情報を消費しているのは、筆者だけではないはずだ。どちらかといえば、テレビ世代ではなく若者世代の方が割合は多いだろう。もちろん、ネットの情報を一方向から見てすべて鵜呑みにしてしまう人物もいるが、テレビと異なるのは情報意欲がある人には、多様な意見を受け入れることが可能という点にある。

デジタルネイティブ世代の情報ソースは、従来のマスメディアではなくネットがメインだ。結果としてテレビ世代と比べて意識すれば触れられる情報源の豊富さも、視点の多さも違う環境に身をおいている。

だが「ネットこそ大正義」と思うのも危険である。小賢い人がネットを使うことで逆効果になることもあるからだ。自分が支持したい情報を効率的、偏重的に収集することで、誤った認識を強固にしてしまうケースすらある。だからインターネットも「使用するユーザーの知恵次第」という点は否定できない。いずれにせよ、世代間の認識の格差が生まれる根拠の一つが、情報ソースの違いというのが筆者の結論である。

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文・黒坂 岳央/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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