替えのきかない人間はいる
「世の中に替えのきかない仕事はない」については、厳密さが必要だろう。確かに会社経営における運用や技術については、替えはきくのかもしれない。「この仕事はAさんにしかできない」というような主張も、新たな人材を連れてくれば会社は問題なく存続するという例は個人体験的に見てきた。すでにビジネスとして運用がまわっている業界で、オペレーションが出来上がっているなら人材の替えはきくだろう。そもそも、この存続性こそが個人にはない、企業が持つ特異な機能性だからである。
だが、0→1の仕事の中にはそうはいかないものもあるだろう。歴史にIFはないが、たとえばエジソンの白熱電球の発明は、明らかに大きな貢献であり、エジソンという人的特性に由来する結果に思える。彼の研究所には多くの学者や専門家がいたが、当時圧倒的な熱量と情熱で研究開発に勤しむエジソンがいなければ、あの時代に白熱電球が生まれたかは疑わしい。
繰り返しだが、カズレーザー氏の主張の意図はよく分かる。「人材なんて替えがきくのだ。頑張りすぎるな」という温かみのあるメッセージと理解すれば、ムキになって反論するべきテーマではないだろう。だが、経営やビジネスオペレーションはあくまで技術であるため、替えは聞く仕事であるのに対して「情熱」の替えはきかない。中小企業は創業者が亡くなると、2代目、3代目はうまくいかないケースが多いのは、まさしく創業者の情熱までは代替できないことを示していると思うのだ。
文・黒坂 岳央
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文・黒坂 岳央/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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