教育新聞によると、2月21日の中教審で、教育実習を取りやめる方針が表明され、一部の界隈では衝撃が走っている。ほんの一部の界隈だが。教育実習制度は、学校に通ったことのある方ならよくご存じだろう。
「現在の教育実習の履修時期が民間企業への就職活動の時期よりも遅く、教員の人材確保に悪影響を与えている」との問題意識があるらしい。

代替案は、「学校体験活動の活用」だそうだ。舌を噛みそうだ。
「学生が学校現場での教育実践を段階的に経験」することで、「理論と実践の往還を重視した教職課程への転換」と位置付けているという。つまり学生は通年で断続的に学校に通えということだろうか。そうなると教育学部を目指そうとする高校生自体が減りそうだが。学校の負担(正確には受けもった教員の負担)がさらに増える可能性もある。
また、「特別支援教育の充実に向けて、介護などの体験を教職科目の履修と関連付け、積極的に活用する方向性」も打ち出されたという。
中教審は、現行の教職課程について、「令和の日本型学校教育」の構築に必要と位置付けられている「新たな教師の学びの姿」を実現していく上で、教員養成段階で「自ら仮説や見通しをもって学校現場での実践に挑み、その結果を振り返る学びを充実させることが必要」と、課題を整理しているということだが、ちょっとなにを整理しているのかよく分からない。
たぶん中教審もいろんな委員の意見を取り込みすぎて、なにを言っているのか分かっていないのだろう。
そもそも、教育実習や採用試験の方法をいじったところで、学生が教職を避ける根本的な理由の解決にはなっていない。
根本的な問題があるのに、それを教育実習で挽回しようとするのは、日本経済の効率の悪さを金融政策にすり替えて悪性のインフレを招きつつある他の官庁となんら変わらない。文科省のほうの影響は桁が何個か小さいからかわいいものだが。
それに、文科省自身、21世紀はキーコンピテンシーが重要とか言っておきながら、自分の組織の採用基準にどんなコンピテンシーが必要なのかはまったく考えていない。考えている素振りもない。
知識もあって、感じもよくって、協調性があって、体育会系で・・・となんとなくの採用基準しかもっていないから、民間企業とバッティングして、あらゆる面で待遇のよい企業に流れてしまうのだ。
結局、関係のないものをいろいろあげつらっているうちに、公教育自体が避けられるようになる日はそれほど遠くないのかもしれない。
※ただし、ここ20年ばかりで詰め込みすぎた教育実習が、学生・学校の大きな負担になっている現状が改善されること自体は望ましいことだ。改善されるとはどこにも書いてないし、そのことと採用は関係ないけどね。
文・中沢 良平/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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