1915年、イギリスが派遣したエンデュアランス号は南極探検の際に難破。

乗組員たちは奇跡的に生還できましたが、エンデュアランス号だけは100年間見つかっていませんでした。

ところが最近、フォークランド海洋遺産財団が組織した調査隊「エンデュアランス22」によって、沈没した海域から約6km離れた海底3008mで発見されました。

しかもエンデュアランス号の保存状態は極めて良好だったようです。

ここでは、エンデュアランス号と探検隊員たちを襲った悲劇から奇跡の生還劇まで、100年越しの物語をご紹介します。

目次
エンデュアランス号漂流記
奇跡の生還を遂げたアーネスト・シャンクルトン氏と隊員たち

エンデュアランス号漂流記

1914年、イギリスは帝国南極横断探検隊を派遣。

アーネスト・シャクルトン隊長と27人の乗組員からなる探検隊の目的は、南極大陸の初横断でした。

100年前「南極探検で沈没したエンデュアランス号」ほぼそのままの状態で発見される!
(画像=帝国南極横断探検隊の航路 / Credit:endurance22、『ナゾロジー』より引用)

南極大陸の大西洋側にあるウェッデル海(Weddell Sea)から南極を経由して、太平洋側のロス海(Ross Sea)へと渡ろうとしていたのです。

ところが、1915年初頭、探検隊の船「エンデュアランス号」は、密集した流氷に閉じ込められてしまいました。

乗組員たちは当初、「いずれ氷から解放される」と考え、深刻にとらえていませんでした。

なぜなら、流氷に船が閉じ込められた後、開放されたという報告は多く聞かれるものだったからです。

100年前「南極探検で沈没したエンデュアランス号」ほぼそのままの状態で発見される!
(画像=沈みゆくエンデュアランス号 / Credit:Royal Grographic Society(Wikipedia)_帝国南極横断探検隊、『ナゾロジー』より引用)

ところが身動きができないまま数カ月がすぎ、1915年11月には押し迫る氷に圧迫されエンデュアランス号が沈没。

探検隊を構成する28人は、氷の上に取り残されることになりました。

まさに絶体絶命の状況に陥った探検隊員たち。彼らは、どのように生還したのでしょうか?

奇跡の生還を遂げたアーネスト・シャンクルトン氏と隊員たち

28人の探検隊員たちは、陸地から数百kmも離れた流氷上に孤立しました。

外部との連絡手段はなく、物資も限られていたようです。

そのため彼らはエンデュアランス号から運び出していた3隻の救命ボートを使って、陸地を目指すことに。

100年前「南極探検で沈没したエンデュアランス号」ほぼそのままの状態で発見される!
(画像=流氷上に取り残された探検隊員たち / Credit:endurance22、『ナゾロジー』より引用)

道中では、なるべく持参した保存食に手を付けず、アザラシやペンギンを食料としました。

ところが徐々にそうした食料も手に入らなくなり、最終的には同行したそり犬も食べるしかなかったようです。

そして、長い漂流の果になんとか南極海のエレファント島に到着。

しかしエレファント島は航路から大きく外れており、近くを通る船は全くありませんでした。

しかもエレファント島は岩や氷に覆われた不毛な土地だったようで、ただ待っているだけでは助かる見込みがありません。

そこでシャンクルトン隊長は、他の5人の選抜メンバーと共に、僅か7mのボートに乗って助けを求めに出ました。

100年前「南極探検で沈没したエンデュアランス号」ほぼそのままの状態で発見される!
(画像=サウス・ジョージア島に向かう6人の選抜メンバー / Credit:Frank Hurley(Wikipedia)_帝国南極横断探検隊、『ナゾロジー』より引用)

そして暴風と強い海流のなか、1500kmを14日間漂流し、何とかサウス・ジョージア島にたどり着いて救助を求めることができました。

とはいえ救助活動は順調に進まず、結果的にエレファント島に救助船が来たのは、4カ月後だったようです。

それでもエレファント島に残った22人は、その過酷な状況で生き残り、シャンクルトン氏らと再会を果たしました。

100年前「南極探検で沈没したエンデュアランス号」ほぼそのままの状態で発見される!
(画像=エレファント島の22人も4か月後に救出された / Credit:endurance22、『ナゾロジー』より引用)

エンデュアランス号の沈没と帝国南極横断探検隊の奇跡的な生還劇は、大きな話題を呼びました。

これらのエピソードを元にした数々の書籍や映像作品が生み出されるほど、人々の心に残り続けたのです。

しかし1つだけ心残りがあります。

生還した隊員たちとは対照的に、沈没したエンデュアランス号は見つかっていないのです。

そしてこの事件から100年以上経った今、なんとエンデュアランス号が見つかったと報告されました。