警察や救急車のサイレン、信号機の「止まれ」、自動車のブレーキランプには共通点があります。
どれもが警報のサインであり、すべて「赤色」が利用されている、という点です。
では、なぜ警報には赤色を用いるのでしょうか?他の色、たとえば青色ではダメなのでしょうか?
今回は、赤色が警報に役立つ2つの理由について解説していきます。
遠くまで届く「赤色」
赤色が警報に利用されている1つ目の理由は、「赤い光は遠くまで届くから」というものです。
なぜそう言えるのか、光の仕組みから考えてみましょう。
そもそも、光は電磁波という波の一種であり、山と谷が交互に繰り返されて伝わっていきます。
そしてある山から次の山までの長さを「波長」と言い、この波長の違いが色の違いを生みます。
つまり、ある波長の光が目に入ると、私たちはその波長に合った色を認識するのです。
ちなみに、目に見える光(可視光線)の中で一番波長が長いのが赤色であり、そこからオレンジ、黄色、緑、水色、青、紫と短くなっていきます。
さらに光には、「波長が長ければ長いほど遠くまで届きやすい」という性質もあります。
通常、光は大気中の粒子(塵など)にぶつかると、四方八方に散らばってしまいます。
これを「散乱」といいますが、散乱すると私たちの目に光は届きません。
つまり、「散乱しにくい光」は「私たちの目で認識しやすい光」ということになります。
では、散乱しにくい光とはどんな光なのでしょうか?
実は、光には「波長が長ければ長いほど散乱しにくい」という性質があります。
光の波が大きいので、障害物である粒子にぶつかりにくいイメージですね。
ですから、赤色は最も遠くまで届きやすい可視光線であり、逆に青色と紫色は最も届きにくい可視光線だと言えます。
この現象は夕焼けなどで観察されます。
夕方になると太陽と私たちの距離が日中に比べて遠くなるため、青色付近の色は散乱して届かなくなります。
そして赤色やオレンジ色だけが届くようになり、夕焼けは私たちの目に赤く見えるのですね。
さて、ここまで考えると、赤色がなぜ警報として利用されるか理解できます。
私たちが視認できる光の中で一番散乱しにくい光が選ばれているのです。
サイレンの光や信号機の「止まれ」、そしてブレーキランプの情報は、たとえ霧や煙などで大気中に多くの粒子が充満していても、私たちの目に届かせなければいけません。
そのために赤色を選ぶのは、当然と言えるでしょう。
では次に、赤色を利用すべきもう1つの理由を解説します。
赤色は「脳に訴える」
赤色が警報に利用されている2つ目の理由は、「赤色が脳に訴えかけるから」というものです。
人の心や体は、あらゆる種類の刺激に対して何らかの反応を示します。
過去の研究(Frontiers in Human Neuroscience, 2015)では、赤色が人間の反応を増強すると判明していました。
つまり、人は赤色を見ることで、即座に行動したり、確固とした対応を取ったりするというのです。
さらに赤色には、怒りや恐怖、危機感などのネガティブな感情を誘発する性質もあるようです。
そのため、赤色を見ると、私たちの脳はすぐに活性化され警告を発するようになります。
状況がはっきり分からないとしても、危険を感じたり、その場から離れたいという気持ちになったりするのです。
つまり、赤色は私たちの脳に直感的に警報を届けてくれます。
さて、これら2つの理由を考えると、確かに赤色が警報に役立つと分かります。
普段は無数にある色の中の1つにすぎませんが、重要で急を要する場面になると、赤色が最も目立つ色となり、私たちに迅速な行動を促してくれるのです。
次に信号機の赤やサイレンに遭遇したとき、自分がどんな反応をしたか分析してみてください。
きっと警報が赤色であることに納得するでしょう。
参考文献
Why Is Red The Color Of Alarms And Signals?
提供元・ナゾロジー
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