不動産取引時にしばしば耳にする「オーバーローン」という言葉。不動産売却時にはオーバーローンが足かせになってしまうことも多く、解決策や対応を講じる必要があります。今回は、オーバーローン状態のマンションを売却する方法を細かく解説。オーバーローンの意味から、ローン残債のあるマンションを売るときの注意点やポイントまで幅広くご紹介します。

目次
そもそもオーバーローンとは?
 ・住宅購入時におけるオーバーローン
 ・住宅ローン残債>不動産売却価値 状態のオーバーローン
オーバーローン状態でも売却するための解決策
 ・1. 住み替えローンの利用
 ・2. 無担保ローンの利用
 ・3. 任意売却の利用
 ・4. 相場より少し高い価格で売り出す
 ・「REINS Market Information」で売却相場をチェック
オーバーローンでも売却は可能! 追加ローンや任意売却も視野に

そもそもオーバーローンとは?

「オーバーローン」とは、貸出超過の状態にあること。ローン残高が所有する不動産の売却価格を上回っており、該当物件を売却してもローンが完済できないケースを指します。売却時だけでなく、近年は不動産の購入時にもオーバーローンで融資を受けるケースも増えています。

住宅購入時におけるオーバーローン

マンション購入時にオーバーローンを利用する場合には、マンションの物件価格以上を借り入れて頭金や諸費用に充てます。本来、自己資金でまかなうことが多い住宅購入時の頭金や諸費用ですが、どうしても用意できない場合にローンによって費用を用意するのです。

住宅ローン残債>不動産売却価値 状態のオーバーローン

多くの戸建住宅やマンションでは、経年劣化・地価下落・需要変化などの理由から、一般的に年数の経過に比例して不動産の価値が下がっていきます。購入時に受けた融資(住宅ローン)の返済スピードよりも不動産価値の下落スピードが速い場合には、住宅ローンの残債が不動産価値を上回る状態になります。

不動産売買時は売主が住宅ローンを完済したのち、抵当権を抹消したうえで買主に引き渡すのが一般的です。法律上は抵当権の残っている不動産も売却できますが、万が一売主(債務者)がローン返済を滞らせた場合には所有権金融機関(債権者)が抵当権を行使し、買主の所有権が脅かされる可能性もあります。そのため買主から敬遠され、結果的にオーバーローン状態の不動産はなかなか売却できません。では、オーバーローン状態にあるマンションを売却したい場合にはどうすればよいのでしょうか。

オーバーローン状態でも売却するための解決策

先述したように、抵当権のかかった状態ではマンションを売却できません。オーバーローン状態のマンションを売却するためには、追加の融資や最終手段としては任意売却の利用によって抵当権を外す必要があります。次は、オーバーローン状態のマンションを売却するための4つの解決策をご紹介します。

1. 住み替えローンの利用

マンション売却後に新しい物件を購入しようと考えている場合、金融機関から新たに融資を受ける「住み替えローン」の利用も一案です。住み替えローンは、売却後にも残ってしまうローンと新たな物件を購入するためのローンを合算して組むものです。オーバーローン状態かつ自己資金がない場合であっても、ローン金額を増額させることで、マンション売却と新しい物件の購入が叶います。

(例)
売却価格5,000万円、ローン残債6,500万円、新居の購入価格5,500万円の場合

新たな物件の購入代金5,500万円に、残債6,500万円から売却価格5,000万円を引いた1,500万円を合算

→5,500万円+1,500万円=7,000万円で融資を受ける

ただし、当然ながらローン金額が増える分、審査が厳しくなってしまうという難点もあります。担保となる不動産以外に加えて借入れを受けるかたちになるため、所得や収入によっては金融機関の審査に落ちてしまう可能性も十分考えられるのです。

また、ローン金額が増えるため、どうしても月々の返済額が高額になってしまいます。自分の所得や今後の人生計画を踏まえたうえで、無理のないローンを締結するようにしてください。

2. 無担保ローンの利用

オーバーローンになっている部分を、金融機関の「無担保ローン(フリーローン)」によって相殺する方法も有効です。ローンの目的が決められていない無担保ローンは、債務者が自由に使用できるというメリットがある反面、住宅ローンやマイカーローンといった目的の定められたローンと比べて、金利が高くなるというデメリットがあります。

金融機関によっては無担保ローンを取り扱っていない、もしくは審査に通らない可能性も十分考えられるため、借入れを予定している場合には事前に金融機関に確認しておきましょう。

【無担保ローンの例(2021年4月時点)】

金融機関名ローン名称借入上限金利借入期間
三井住友銀行フリーローン(無担保型)10万円以上、300万円以内変動金利 5.975%1年以上、10年以内
中央労働金庫無担保住宅借換ローン2,000万円まで変動金利 年1.8〜2.8%固定金利年1.0〜2.9%最長20年間(最終返還時が76歳未満)
イオン銀行無担保住宅借換ローン50万円以上、1,000万円以内基準金利に0.5%を加えた利率1年以上、20年以内
みずほ銀行多目的ローン(無担保)10万円以上、300万円以内変動金利、固定金利選択制6カ月以上、7年以内
りそな銀行フリーローン10万円以上、500万円以内固定金利年6~14%(4種の金利から選択)1年以上、10年以内
住信SBIネット銀行多目的ローン10万円以上、1,000万円以内変動金利(毎月見直し)2.975%~4.975%1年以上、10年以内

3. 任意売却の利用

売却予定のマンションの状態やローン残債によっては、「マンションを売却しても到底完済できない」と、住宅ローンの返済や不動産売却後のローン完済が難しい場合には、最終手段として「任意売却」の利用も視野に入れることもあります。

任意売却は、債権者である金融機関の同意を得たうえで、オーバーローン状態の物件を売却する手続きのこと。売却代金のすべてをローン返済に充てて任意売却後にも残ってしまったローン金額は、引き続き返済していかなければなりません。

また任意売却時には、通常の売却手続きよりも1~3割程度安い価格で引き渡されることもあります。任意売却を希望する場合には、デメリットを理解したうえで金融機関に相談しましょう。

4. 相場より少し高い価格で売り出す

土地の価格が高いエリアや、築年数の浅い物件、管理状態のいいヴィンテージマンションなどの場合には、周辺相場よりも高い価格で売却できる可能性も考えられます。間取り・築年数・周辺環境・部屋の面積・マンション設備など、売却するマンションの条件を細やかに確認したうえで、売り出し価格を慎重に決めていきましょう。複数の仲介会社に一括査定を依頼して価格を比較するのはもちろんですが、売主自らも同条件のマンション相場を確認しておくとよいでしょう。そのうえで、売却専門チームがあるような不動産会社に相談するのがよいでしょう。

「REINS Market Information」で売却相場をチェック

周辺エリアや同条件のマンションの相場を確認したい場合には、「REINS Market Information」で検索してみることもおすすめです。日本全国の取引情報が掲載されており、価格・単価・面積・築年数・成約時期など、さまざまなデータを手軽に確認できます。査定金額や売り出し価格が正当であるかを見極めるヒントとして活用できます。

参考: REINS Market Information

オーバーローンでも売却は可能! 追加ローンや任意売却も視野に

マンションを売却してもローンが完済できない場合には、無担保ローンや買い替えローン、最終的には任意売却の利用もひとつの手段です。追加ローンや任意売却には本記事で解説したデメリットもあるので、利用前にしっかり確認しておきましょう。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

提供元・RENOSYマガジン

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