仲間の死を悲しむのは人間だけではありません。
実際これまでの研究で、トリやゾウなど、いくつかの種が「仲間の死の影響を受ける」と報告されています。
そして最近、イタリア・ミラノ大学(University of Milan)獣医学部に所属するフェデリカ・ピローネ氏ら研究チームは、飼い犬は仲間が死んだときに、悲しみの兆候を長く示す、と発表しました。
「イヌが仲間の死を悲しむ」と正確に報告されたのは、これが初めてです。
研究の詳細は、2022年2月24日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。
イヌは人間のように仲間の死によって元気がなくなる
「イヌが仲間の死の影響を受ける」という学術的な報告が今回初めてされたという事実に、驚いている人は多いかもしれません。
犬の飼い主なら「そんなの当たり前じゃん」と言いたくなるかもしれません。
もちろんこれまでも、同様の報告がなかったわけではありません。
しかし、全体的に証拠はまばらで信頼性は薄いものばかりでした。
それは飼い主による個人的な報告に限定されていて、それらは飼い主の「望み」や「感情」によって過剰表現される傾向にあったのです。
この背景には、研究者たちの間でも、犬の悲しみについてわざわざ調査してまとめ直す必要はないだろうと考える人が多かったからかもしれません。
そこで今回の研究チームは、大きなサンプルと統一した方法で、イヌが仲間の死を悲しむかどうか、きちんと調査することにしたのです。
調査には、イタリアの成人426人が参加。
彼らは皆、2匹以上のイヌを飼育しており、イヌ1匹が生きている間にもう1匹が死んでしまう、という経験をした人たちです。
そして彼らにアンケートをお願いし、仲間を失った飼い犬がどのように変化したか答えてもらいました。
その結果、86%の飼い主は「仲間を失ったイヌはネガティブな影響を受けた」と報告しており、4分の1は、その状態が6カ月以上も続いたとのこと。
実際に見られたネガティブな影響は次の通りです。
飼い主の注意をいっそう引くようになった(67%)
遊ぶ時間が減った(57%)
全体的な活動量が減った(46%)
眠る時間が増えた(35%)
食べる量が減った(32%)
鳴いたり吠えたりする頻度が増した(30%)
イヌは、人間や他の動物と同じように、仲間が死ぬことで悲しみ、長期間にわたって気力や体力がなくなってしまうようです。
ちなみにこの調査では、悲しみの深さに影響を与える要因も明らかになりました。
イヌがどれだけ悲しむかは、2匹の犬がどれだけ長く一緒に暮らしていたかは関係なく、むしろ2匹の関係の質が重要だと判明したのです。
友好的な関係であるほど残されたイヌの悲しみは深くなります。
逆に、冷めた関係を長く続けたとしても相手の死からは大して影響を受けないようです。
また、残されたイヌの悲しみは、「飼い主が抱いている喪失感」とも関連しており、イヌは飼い主の悲しみやネガティブな感情に反応すると分かっています。
では、仲間の死を悲しむ飼い犬をどのように慰めてあげられるでしょうか?
研究チームは、「失われた関係性を埋めるため、飼い主がいっそう飼い犬との関係を強めるよう気遣ったりサポートしたりすることが大切」だと結論付けています。
人間も動物も、仲間を亡くして悲しんでいるなら、「そばで支えてあげる」ことが大切なのです。
参考文献
Dogs show signs of mourning after loss of canine companions
元論文
Domestic dogs (Canis familiaris) grieve over the loss of a conspecific
提供元・ナゾロジー
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