「成長を続ける米国株に投資したいが、どの銘柄に投資すればよいかわからない」という方におすすめなのが、米国株式市場全体に分散投資できる米国ETF「VTI」です。VTIの基本情報や購入できる証券会社、今後の見通しなど、知っておきたいVTIの基本を解説します。
VTIとは?知っておきたい米国ETF「VTI」の基本
Q.米国ETF「VTI」とはどのような商品ですか?
A.米国の資産運用会社「バンガード社」が提供するETF(上場投資信託)で、米国株式市場全体に投資する商品です。
まずは米国VTIがどのような商品なのか、基本を確認しておきましょう。
VTIとは?何の略?
VTIは、「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(Vanguard Total Stock Market ETF)」のティッカーです。
ティッカー(ティッカーシンボル)とは?
株式やETFなどの銘柄を識別するために付けられた記号(コード)のこと。
株式市場などで銘柄を識別するために使われる略称。「ティッカーコード」とも呼ばれます。米国市場では一般的に企業名の略称が使われます。例えば、ゼネラルモーターズは「GM」、アップルは「AAPL」などとなります。日本の市場では、4ケタの数で表す証券コード(銘柄コード)が用いられます。
出典:三井住友DSアセットマネジメント|わかりやすい用語集
バンガード社が提供するETF
VTIはThe Vanguard Group, Inc(ザ・バンガード・グループ・インク、以下、バンガード社)が管理・運用を行うETF(上場投資信託)です。米国証券取引所のNYSE Arcaに上場しており、通常の米国株と同様に売買できます。
ETFとは?
株式市場などの金融商品取引所に上場し、取引されている投資信託のこと。
ETF(上場投資信託)とは、市場全体の動きを示す指標等に連動する投資信託で、株式市場など金融商品の取引所に上場しているものです。ETFは、Exchange Traded Fundの略です。通常の上場株式と同様に市場で売買されています。 対象となる指標は、TOPIXや日経平均株価などの国内の株式指数だけでなく、海外の株式指数や、原油や金といった商品価格などさまざまな指標が対象となります。
出典:SMBC日興証券|初めてでもわかりやすい用語集
バンガード社とは?
1975年に創業した、米国ペンシルベニア州バレーフォージに本社を置く世界最大級の資産運用会社の一つ。
世界中の市場で運用されるバンガード社の資産総額は、2021年1月31日時点で約7.2兆米ドル(約828兆円、1米ドル115円換算)です。これは、2021年の日本の名目GDP(約542兆円)の約1.5倍です。
バンガード社はローコストリーダーとしても知られ、バンガード社独自の会社の所有構造による運用コストの安さが大きな魅力です。
一般的な資産運用会社は少人数の株主によって所有されており、利益を配当として株主に支払わなければなりません。これに対し、バンガード社は米国籍の投資信託とETFによって所有されており、バンガードのファンド(投資信託・ETF)を保有する投資家がバンガード社を所有しています。株主が存在しないため投資家との利益相反は起こらず、経費率の引き下げによってファンドの利益を投資家に還元できるのです。
CRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動
CRSP USトータル・マーケット・インデックス
米国株式市場で投資できる銘柄のほぼ100%をカバーする、時価総額加重平均型の株価指数。
VTIはこの指数に連動する投資成果を目指すETFであり、大型株から小型株まで米国株式市場全体に分散投資するのと同じ投資効果が期待できます。
「時価総額加重平均型」の株価指数とは?
構成銘柄の時価総額の合計額を、基準となる時点の時価総額の合計額で割って算出される株価指数。
「時価総額加重型」の株価指数とは、構成銘柄の時価総額(これは、株価に上場株式数を掛け合わせたもので、その銘柄の資産価値を表します)の合計額を、ある一定時点の時価総額の合計額で割るものです。
出典:日本取引所グループ|よくあるご質問(株価指数関連)
ある過去の一定時点と比較して、計算時点の時価総額がどれくらい増えたか減ったかということを表すものであり、資産としての株式の価値の変動を示すものといえます。
「時価総額加重型」の計算式
株価指数の値=構成銘柄の時価総額の合計÷ある一定時点の時価総額
VTIの構成銘柄
VTIは、約4,000銘柄(2022年1月31日時点で4,136銘柄)の米国株式で構成されています。組み入れ上位銘柄は以下のとおりです。
VTI銘柄構成比率
銘柄 | 比率 |
---|---|
アップル(Apple Inc) | 6.00% |
マイクロソフト(Microsoft Corp) | 5.10% |
アルファベット(Alphabet Inc)※グーグル | 3.40% |
アマゾン(Amazon.com Inc) | 2.80% |
テスラ(Tesla Inc) | 1.70% |
メタプラットフォームズ(Meta Platforms Inc Class A) | 1.60% |
エヌビディア(NVIDIA Corp) | 1.30% |
バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway Inc Class B) | 1.20% |
ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson) | 1.00% |
ユナイテッド・ヘルス(UnitedHealth Group Inc.) | 1.00% |
出典:Vanguard(2022年1月31日時点)
※アルファベットはクラスAとクラスCの2銘柄の合計
VTIのベンチマークであるCRSP USトータル・マーケット・インデックスは、時価総額加重平均型の株価指数です。そのため、すべての銘柄に均等に投資されるわけではなく、時価総額が大きい銘柄ほど組み入れ比率は高くなります。特に時価総額の大きいGAFAMやテスラはVTIでも比率が大きく、この6社を合計するとVTI全体の約20%を占めます。
GAFAMとは?
G(Google※アルファベット)、A(Apple)、F(Facebook※メタプラットフォームズ)、A(Amazon)、M(Microsoft)の総称
大型株への偏りはありますが、S&P500の約500銘柄で構成されるETF「VOO」の約25%、ナスダックの大型株100銘柄で構成されるETF「QQQ」の約45%に比べると、その割合は小さく、投資対象がより分散されているといえるでしょう。
VTIのセクター比率
VTI構成銘柄のセクター(業種)比率は、以下のとおりです。
VTI構成銘柄セクター比率
セクター(業種) | 比率 |
---|---|
情報技術 | 28.40% |
一般消費財 | 15.30% |
資本財 | 13.00% |
ヘルスケア | 12.40% |
金融 | 11.50% |
生活必需品 | 5.00% |
不動産 | 3.60% |
エネルギー | 3.40% |
公共事業 | 2.80% |
通信 | 2.60% |
素材 | 2.00% |
出典:Vanguard(2022年1月31日時点)
セクター別では、IT関連銘柄で構成される「情報技術」セクターが最も大きな割合を占めています。情報技術セクターにはアップルやマイクロソフト、半導体大手エヌビディアなどが含まれます。これに、一般消費者向けの小売や製造業、サービス業などの「一般消費財」セクターが続きます。一般消費財セクターにはアマゾンやテスラ、マクドナルド、ナイキ、スターバックスなどが含まれます。
各セクターの比率は、投資資金が集中しているGAFAMやテスラが含まれるセクターにやや偏っています。とはいえ、おおむね米国の産業構造が反映されており、バランスの取れた構成といえるでしょう。
VTIの分配(配当)月
VTIの分配(配当)は四半期(3ヵ月)ごとに行われます。3月、6月、9月、12月の年4回です。
米国株では、権利確定日(Record date)の前営業日が権利落ち日(Ex-dividend date)です。分配を受けるには、権利落ち日の前営業日(権利付き最終日)までにVTIを購入する必要があります。権利付き最終日時点でVTIを保有していれば、その数量に応じて分配金が支払われます。
VTIの運用コスト(経費率)
VTIの運用コスト(経費率)は定期的に見直されており、年率0.03%です(2022年2月時点)。
経費率(expense ratio)とは
ファンド(投資信託)の資産残高に対する、ファンドの運用などにかかる経費の比率のこと。経費には信託報酬や有価証券の売買委託手数料、保管費用などが含まれます。例えば、純資産額1,000億円のファンドで1年間に1億円の経費がかかった場合、経費率は1億円÷1,000億円×100=0.1%です。
信託報酬とは
ファンドの運用や管理にかかる手数料こと。ファンドの資産の中から運用会社に支払われるため、投資家が間接的に負担するコストといえます。
ファンドの運用コストは、一般的に純資産額が大きくなるほどスケールメリットによって抑えられます。VTIの運用コストは2001年5月の設定時は0.15%でしたが、ファンド規模の拡大に伴って段階的に引き下げられ、現在の水準になりました。
同カテゴリーのファンドの経費率の平均は0.80%なので、VTIの経費率がいかに低いかがわかるでしょう。
VTIは何口(株)から買える?最低買付金額は?
VTIは、通常の米国株と同様に1口(株)以上1口(株)単位で購入できます。
1口(株)単位で購入できるため、購入時点の価格がそのまま最低買付金額になります。価格は219.37米ドル、1米ドル115円で換算すると2万5,228円です(2022年2月18日終値ベース)。
VTIのリターンはどのくらい?
Q.VTIのリターンはどのくらいですか?
A.リターンは変動するため一概にはいえませんが、VTIが設定されてからの平均リターンは年率で8.67%です。ここ数年は20%を超えるリターンが続いていましたが、2022年に入ってからリターンはマイナスになっています。
VTIの価格チャート
以下のグラフは、2001年5月のファンド設定から2022年2月までのVTIの価格チャートです。
VTIの価格は、リーマンショックやコロナショックによる暴落を乗り越えながら、おおむね右肩上がりで上昇していることがわかります。
VTIの年率リターン
下の表は、2022年1月末時点の期間別・年別のVTIの年率リターン(米ドルベース)です。
年率トータルリターン(期間別・2022年1月31日時点)
年初来 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 設定来(2001年5月24日) |
---|---|---|---|---|---|
-6.04% | 18.58% | 19.82% | 16.08% | 14.99% | 8.67% |
出典:Vanguard(2022年1月31日時点)
年率トータルリターン(年別・2021年12月31日時点)
2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
16.45% | 33.45% | 12.54% | 0.36% | 12.83% | 21.21% | -5.21% | 30.67% | 21.03% | 25.67% |
出典:Morningstar
トータルリターンとは?
一定期間内の価格の変動と分配金を含めて算出したリターン
2020年初めにコロナショックで大きく下落したVTIは、その後の大規模な経済対策や金融緩和政策もあって急回復し、同年8月にはコロナショック前の水準を上回りました。その後も上昇が続き、2020年、2021年ともにリターンは20%を超えています。
VTIの分配利回り
2022年1月31日時点のVTIの分配利回り(30日SEC利回り、30-day SEC Yield)は1.22%です。
30日SEC利回り(30-day SEC Yield)とは
ETFやミューチュアルファンド(米国の投資信託)の1口あたりの過去30日間の分配り回りのこと。過去30日間の分配金から費用を差し引き、1口あたりの市場価格で除した利率を年率換算して求めます。
直近の分配金実績
権利確定日 | 1口あたりの分配金額 |
---|---|
2021年12月28日 | 0.85920米ドル |
2021年9月27日 | 0.72420米ドル |
2021年6月25日 | 0.67160米ドル |
2021年3月26日 | 0.67160米ドル |
2020年12月28日 | 0.78180米ドル |
2020年9月28日 | 0.67410米ドル |
出典:Vanguard(2022年1月31日時点)
VTIよりも分配金が多い個別銘柄やファンドもありますが、S&P500に連動するETF「VOO」の1.28%とほぼ同じ水準で、ナスダック100銘柄に連動するETF「QQQ」の0.51%と比べると高いといえます。
VTIの配当は安定していますが、価格が大きく上昇していることから、相対的に分配利回りが低くなりやすいともいえるでしょう。
VTIの純資産総額
VTIの純資産総額は、約2,851億米ドルです。1米ドル115円で換算すると約32兆8,000億円です(2022年1月31日時点)。
日本最大の投資信託の純資産総額は1兆6,080億円(※)であり、VTIがいかに巨大なファンドであるかがわかるでしょう(※「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」、2022年2月18日時点)。
純資産総額が少ないファンドはベンチマークとの乖離が大きくなったり、運用コストが割高になったりしやすく、保有期間中に繰上償還されて運用を継続できなくなるケースもあります。VTIであれば、その確率は低いといえるでしょう。
VTIを購入できるおすすめ証券会社5選
Q.VTIはどの証券会社で購入できますか?おすすめの証券会社はありますか?
A.VTIは、米国株を取り扱う証券会社で購入できます。これから口座を開設するのであれば、以下の5社がおすすめです。
VTIを購入できるおすすめの証券会社5社の特徴は、以下のとおりです。
証券会社 | 楽天証券 | SBI証券 | マネックス証券 | DMM.com証券 (DMM株) |
CONNECT |
---|---|---|---|---|---|
VTIの取引方法 | 現物取引 | 現物取引 | 現物取引 | 現物取引 | 現物取引 (店頭(相対)取引) |
VTIの取引手数料(税込) | 無料 | 無料 | 買付手数料: 全額キャッシュバック 売却手数料: 約定代金の0.495% |
無料 | 無料 ※基準価格(※3)に対して加減算さる0.7%(最大1.5%)のスプレッドが実質的な取引手数料 |
VTIの取引単位 | 1口 | 1口 | 1口 | 1口 | 1口 |
NISA口座でのVTI買付 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
米国ETF取扱銘柄数 | 363銘柄 | 339銘柄 | 351銘柄 | 185銘柄 | 10銘柄 |
為替手数料 (米ドル) |
25銭 | 25銭 | 買付時:0銭 売却時:25銭 |
25銭 | 30銭 (最大50銭) |
取引時間 (日本時間) |
23:30〜翌6:00 (※1) |
23:30〜翌6:00 (※1) |
22:00〜翌10:00 (※2) |
23:30〜翌6:00 (※1) |
9:00〜17:00 |
注文方法 | 指値 成行 逆指値 |
指値 成行 逆指値 |
指値 成行 逆指値 ツイン指値 連続注文 OCO注文 トレールストップ 注文 |
指値 成行 IFDONE (指値/指値) |
※提示される取引価格での取引 |
決済方法 | 円貨決済 外貨決済 |
円貨決済 外貨決済 |
円貨決済 外貨決済 |
円貨決済 | 円貨決済 |
積立投資(定期買付) | ○ | ○ | ○ | × | × |
おすすめポイント | 米国株、米国ETFの取扱が豊富 楽天ポイントで購入可能(円貨決済時) |
米国株、米国ETFの取扱が豊富 住信SBIネット銀行で米ドルに両替すれば為替手数料が4銭(外貨積立利用時は2銭) SBU VTIを購入可能 |
米国株、米国ETFの取扱が豊富 米国株国内店頭取引(日中でも取引可能) 銘柄スカウター米国株が利用できる |
米国株、米国ETFの取引手数料はすべて無料(※円貨決済のみのため為替手数料が必要) 米国株、米国ETFを信用取引の担保にできる |
提示される取引価格による店頭(相対)取引で日本時間の平日日中に即約定する |
出典:楽天証券、SBI証券、マネックス証券、DMM.com証券(DMM株)、CONNECTの公式HPをもとに作成(2022年2月21日時点)
※1:標準時間(冬時間)、サマータイム期間は22:30〜翌5:00
※2:標準時間(冬時間)、サマータイム期間は21:00〜翌9:00
※3:米国各証券取引所(NYSE、NASDAQ)における終値、またはアフターマーケットでの市場価格をもとに決定
楽天証券……楽天ポイントでVTIを購入できる
楽天証券では、VTIの取引手数料が無料で、楽天ポイントを使って購入することもできます。
貯まっているポイントで投資できるのは、楽天証券の大きな魅力です。ただし、VTIは最低投資額が大きいため、ポイントだけで購入するのは難しいでしょう。ポイントを購入金額の一部に充てる、あるいは100円から購入できると投資信託「楽天VTI」を購入するのも手です。VTIへのポイント投資はSPU(スーパーポイントアッププログラム)の対象外ですが、投資信託の楽天VTIなら対象になります。
楽天証券では363銘柄の米国ETF、4,700銘柄超の米国個別株を取り扱っており、楽天ポイントを投資に使いたい人や、VTIに加えて米国個別銘柄にも投資したい人におすすめです。
SBI証券……住信SBIネット銀行経由で為替手数料が4銭(2銭)に
SBI証券では、同じグループの住信SBIネット銀行で日本円を米ドルに交換する場合、通常1米ドルあたり25銭かかる為替手数料が4銭で済みます。外貨積立を利用すれば、さらに2銭まで下がります。交換した米ドルは外貨即時入金サービスでSBI証券にスムーズに移動でき、手数料もかかりません。
またVTIの取引手数料は無料で、米国ETF、米国個別株の取扱銘柄数は5,000を超え、業界トップクラスを誇ります。
このような点から、SBI証券は為替手数料を抑えたい人や、VTIに加えて個別株にも投資したい人におすすめです。
VTIを投資対象とする投資信託「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」(後述)は、SBI証券でしか購入できません。
マネックス証券……VTI買付時の取引手数料、為替手数料が無料
マネックス証券では、VTI買付時の取引手数料が全額キャッシュバックされます。米国株買付時の為替手数料も無料であり、買付時には実質手数料がかかりません。ただし、売却時は取引手数料、為替手数料(日本円に戻す場合)ともにかかります。
米国株国内店頭取引を利用すれば、日本時間の平日の日中にVTIを購入することもできます。米国ETFと米国個別株を合わせた取扱銘柄数は5,000を超え、楽天証券やSBI証券に引けを取りません。
買付時に手数料がかからないことから、基本的に売却はせず長期で保有し、積立投資でVTIの買い増しのみを行う予定の人におすすめです。
DMM.com証券(DMM株)……VTIを含むすべての米国ETFと米国個別株の取引手数料が無料
DMM.com証券(DMM株)では、VTIを含むすべての米国ETFと米国個別株の取引手数料が無料です。VTIの取引手数料を無料にしている証券会社は多いですが、すべての銘柄で手数料が無料なのは大きな強みです。
ただし円貨決済しか利用できず、取引ごとに為替手数料がかかるため、頻繁に売買するとコストがかさみます。
米国ETFや米国個別株を信用取引の担保にできるのもDMM.com証券(DMM株)の特徴です。
これらの特徴から、DMM.com証券(DMM株)は長期保有・積立投資でVTIに加えて個別株にも投資したい人や、長期保有するVTIや米国株式を信用取引の担保として有効活用したい人におすすめです。
CONNECT……相対取引で平日日中にVTIを取引できる
CONNECTは大和証券グループのアプリ証券(スマホ証券)です。CONNECTでは相対取引の「ひな株USA」でVTIを購入できます。
相対取引とは
取引所を介さず、売り手と買い手で取引条件を決めて行う取引のこと。当事者同士の合意で取引が成立するため、取引所取引に比べて取引の自由度が高いのが特徴。
売りたい人と買いたい人がそれぞれ1対1の場合の取引のこと。当事者同士であらかじめ「価格」「数量」「決済方法」を決めてから行う取引で、取引所外取引のひとつです。「相対売買」ともいい、英語表記「Over The Counter」の略で「OTC」と呼ぶ場合もあります。
出典:三井住友DSアセットマネジメント|わかりやすい用語集
ひな株USAでは、米国市場での取引終了時点の価格と為替でその日の取引価格が決まり、日本時間の9時~17時の間にその価格で購入できます。取引は円建てで行われ、注文を出せばすぐに約定します。
円建てで提示される取引価格にはコストも含まれており、固定された価格ですぐに取引が成立するシンプルさがCONNECTの魅力です。
ただし、取引価格には0.7%(最大1.5%)のスプレッドと30銭(最大50銭)の為替手数料が含まれているため、他社と比べるとコストは割高です。
多少コストはかかっても、わかりやすさや手軽さを優先したい人にはCONNECTがおすすめです。
VTIの3つのメリット
Q.VTIに投資するメリットは何でしょうか?
A.コストを抑えながら長期的な成長が期待できる米国株式市場全体に分散投資できるのが、最大のメリットです。
VTIのメリットを詳しく見ていきましょう。
VTIの3つのメリット
- 長期的な成長が期待できる
- 大型株から中小型株まで米国株式市場全体に投資できる
- 運用コストが安い
長期的な成長が期待できる
米国株式市場は今後も成長が続くと見込まれているため、長期投資に適した投資先といえます。
成長を支えるのは、人口の増加とイノベーションを創出できる土壌です。
多くの先進国で人口が減少に転じる中、米国の人口は2100年頃まで増加すると予想されています。人口の増加は労働力と消費を生み出し、それがGDP(国内総生産)の成長を支え、株価上昇の原動力となります。
また、米国では私たちの生活を一新するような製品・サービスが次々と生み出されています。イノベーションを創出できる土壌(環境)があることも、米国の大きな強みといえるでしょう。
大型株から中小型株まで米国株式市場全体に投資できる
VTIは1本で大型株から中小型株まで、米国株式市場全体に分散投資ができます。すでに成功している企業(大型株)だけでなく、これから急成長する可能性を秘めた企業(中小型株)にも投資できる点は大きな魅力です。
4,000銘柄を超える銘柄に分散投資するため、リスクを平準化できる点もメリットです。
中小型株は急成長が期待できる反面、事業が失敗して倒産するリスクも高いといえます。急成長が期待できるといっても、このような企業へ個別に投資するのは勇気がいるものです。特に情報を入手しにくい米国企業なら、なおさらでしょう。VTIなら多くの銘柄に分散投資を行うため、個別銘柄の倒産リスクなどを過度に心配する必要がありません。
ただし、分散投資はリターンも平準化します。そのため、個別株への集中投資のように短期間で資産を何倍にも増やすことは期待できません。
運用コストが安い
バンガード社はコストリーダーとしても知られ、VTIの経費率はわずか0.03%です。
同カテゴリーの米国ファンドの経費率の平均(2022年2月現在0.80%)や、つみたてNISA対象のインデックスファンドの信託報酬率の平均(2022年2月現在0.259%)と比較すると、その低さが際立ちます。
運用コストは、ファンドのリターンを目減りさせます。特にインデックスファンドはファンドの運用手腕によるリターンの差がほとんどないため、運用コストの差がリターンの差に直結します。その点でVTIは優れたファンド(ETF)といえるでしょう。
VTIの今後の見通しは?
Q.VTIは今後どのような値動きが予想されるでしょうか?
A.2022年の米国株式市場は、年初から急激なインフレ、FRBによる利上げとバランスシートの縮小、緊迫するウクライナ情勢など逆風が強まっています。VTIの価格は長期的には上昇が続くと予想されますが、足元では低調に推移しています。一時的な調整に留まらず、年単位の本格的な下落相場へと転換するリスクを警戒しておくべきでしょう。
2020年のコロナショックでは、米国だけでなく世界中の株式市場が暴落しました。これに対し、米国では1.9兆ドル(約220兆円)規模の経済対策や大規模な量的緩和が実施され、市場には大量の資金が流入しました。その結果、2020年夏にはコロナショック前の水準を回復し、2021年末まで1年以上にわたって株価の上昇が続きました。
VTI価格の推移
2022年に入ると株価は下落に転じます。コロナ禍による供給の減少に巨額の財政出動による需要の増加が重なり、2022年1月の米国の物価上昇率(CPI)は、前年同月比で7.5%上昇し、1980年代以降の最低水準まで悪化しています。
インフレを抑制するため、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備理事会)は、2022年3月にも国債買入れによる量的緩和終了と利上げの再開を示唆しています。政策金利の段階的な引き上げによる金融引き締めと、資産買い入れにより膨れ上がったFRBの資産(バランスシート)の縮小(売却)に着手する構えです。
ロシアによるウクライナ侵攻はこの状況に拍車をかけ、株式市場は不安定な状態が続いています。ウクライナ危機が早期解決に向かえば株価にはプラス要因ですが、経済制裁に伴って天然資源の供給が逼迫すれば、インフレがさらに加速するおそれもあります。
利上げは、株式市場にとって大きな懸念材料です。3月以降の利上げペースによっては一時的な調整に留まらず、年単位の下落相場に転換するリスクもあります。相場全体が下落すれば、株式市場全体に分散投資を行うVTIも下落を回避できません。
一方、コロナが終息に向かいつつあるのは好材料です。供給が回復してインフレ圧力が弱まれば、利上げペースが遅くなるかもしれません。利上げによるマイナスを経済回復によるプラスが上回れば、一時的な調整を経て再び上昇基調に転じる可能性もあります。
一時的な調整に留まるなら投資のチャンスといえますが、下落リスクも高まっているため、慎重に投資を判断すべきタイミングといえるでしょう。今から投資を始めるのであれば一括投資は避け、投資するタイミングをずらしながら少額を投資することをおすすめします。
VTIの2つの購入方法
Q.VTIを購入するには、どのような方法がありますか?
A.通常の個別株と同様に取引する「現物取引」と、差額だけを取引する「CFD(差金決済取引)」があります。
ここからは、VTIの「現物取引」と「CFD(差金決済取引)」について詳しく解説します。
現物取引
取引所にVTIの買い注文を出し、約定した価格で現金とVTIを受け渡して決済するのが「現物取引」です。通常の個別株を取引するのと同じようにVTIを購入できます。
積立投資(定期買付サービス)
米国ETFの積立投資(定期買付)に対応している証券会社であれば、指定したタイミングで定期的にVTIを購入することもできます。
ネット証券で米国ETFの積立投資(定期買付)に対応しているのは、楽天証券、SBI証券、マネックス証券の3社です。
CFD
VTIはCFD(差金決済取引)で購入することもできます。
CFDとは?
現物をやり取りせず、売買の差額のみをやり取りする「差金決済取引」のこと。
英語表記「Contract for Difference」の略で、「差金決済取引」のこと。 証券会社などの取引業者に証拠金(担保)を預けて、実際に原資産(株式など)に投資するのではなく、原資産の価格や指数を参照して買値と売値の差損益部分を決済する金融商品です。
出典:三井住友DSアセットマネジメント|わかりやすい用語集
インターネットでの取引が中心で、取引所を介さない取引業者との相対取引となります。 取引できる銘柄は、日本株、海外株、株式指数や株価指数先物、為替、商品など広範囲で、売りから入ることも可能です。
レバレッジ(てこの原理)を効かせることで、証拠金の何倍もの取引ができるため、小さな資金で大きな利益を得る可能性がある一方で、多額の損失が発生するリスクがあります。 株式の現物取引での差金決済取引は金融商品取引法等で禁止されています。
例えば、VTIが1口200米ドル(1米ドル=115円換算で2万3,000円)の時、10口を23万円で購入し、220米ドル(同2万5,300円)になったタイミングで売却して25万3,000円になったとします。この25万3,000円を受け取る一連の取引を、現物の受け渡しを行わずに行い、差額の2万3,000円だけをやり取りするのがCFDです。
レバレッジ5倍(証拠金率20%)でCFD取引を行う場合、4万6,000円(=23万円÷5倍)以上の証拠金を用意すれば取引できます。4万6,000円の元手で2万3,000円の利益が出れば、元手は一気に1.5倍になります。
しかし、価格は予想どおりに動くとは限りません。VTIの価格が200米ドルを下回れば証拠金率が20%を下回るため、20%を上回るように証拠金を追加するか、決済して損失を確定しなければなりません。
損失を限定するために、一般的に含み損が基準を超えると自動的に建玉(ポジション)が決済される「ロスカット」が設定されています。とはいえ、価格が急変した場合にはロスカットが間に合わず、証拠金を超える損失が生じることもあります。
建玉(ポジション)とは?
CFDや信用取引、先物・オプション取引、FXなどで、約定後に反対売買されないまま保有している未決済分のことです。
信用取引・先物取引・オプション取引において、未決済になっている契約総数のこと。玉ともいう。売り建て玉と買い建て玉がある。
出典:野村証券|証券用語解説集
ある契約の建玉が1枚あるということは、その契約に関して一人の売り手と買い手がいることを意味する。
少額で取引できるのが魅力のCFDですが、証拠金はなるべく多めに預け入れて、証拠金率に余裕を持って取引することが大切です。
VTIをCFDで取引できる証券会社には、IG証券やサクソバンク証券などがあります。
VTIの5つのデメリット
Q.VTIにはどのようなデメリットがあるのでしょうか?
A.デメリットとしては、1口の価格が高い、為替手数料がかかる、分配金の再投資が難しい、二重課税を避けるには確定申告が必要になる、といったことが挙げられます。
VTIは魅力的な商品ですが、デメリットもあります。デメリットをしっかり把握した上で購入を検討しましょう。
1口(株)の価格が高い
VTIの1口(株)の価格は、2022年2月25日の終値で221.41米ドル。1米ドル115円で換算すると2万5,462円です。これがVTIの最低投資額なので、一般的な投資信託に比べて多くの資金が必要になります。証券会社によっては、100円から投資信託に投資できるところもあります。
より少額でVTIに投資したい場合は、後述する楽天VTIやSBI VTIなど、VTIを投資対象とする投資信託を購入するとよいでしょう。
為替手数料がかかる
VTIは米国株式市場に上場しているETFなので、取引は米ドルで行われます。そのため、日本円しかない場合は、米ドルに交換する際に為替手数料がかかります。
為替手数料は米国株式市場に投資する際に避けられないコストですが、利用する証券会社の選択や、ちょっとした工夫によって抑えることができます。
例えばSBI証券では、グループ会社の住信SBIネット銀行で米ドル交換すれば、通常1米ドルあたり25銭かかる為替手数料が4銭に、外貨積立を利用すれば2銭に抑えられます。
マネックス証券では買付時の為替手数料がかからないため、最終的に利益を確定するまで基本的に買付のみを行う長期積立投資に向いています。
分配金の再投資が難しい
VTIでは、年4回配当が支払われます。長期投資では分配金を再投資して元本に組み入れ、複利効果を狙うのがセオリーです。しかし、国内には米国ETFの分配金を自動で再投資できる証券会社がありません。VTIの分配金を再投資するには、受け取った分配金を使って自分でVTIを購入しなければならないため、手間がかかります。
また、1回に受け取る分配金がVTIの1口分に満たなければ、分配金をそのまま再投資できません。
1回の分配でVTI1口分の分配金を受け取るには、VTIをいくら保有していればよいのか計算してみましょう。
例えば2021年12月の1口あたりの分配金は0.85920米ドルであり、税引き後の手残りは約0.616米ドルです(米国で10%の税率で課税され、残り90%に対して日本国内で20.315%の税率で課税されます)。VTI1口の価格216.59米ドル(※)をこれで割ると、約350口になります。金額にすると約7万6,000米ドルで、1米ドル115円で換算すると約874万円です。
※分配金現地支払日の2021年12月30日終値時点のVIT価格。実際に国内口座への分配金が振り込まれるのは、現地支払日の約1週間後。分配金額は外国税額控除前の金額で計算。
1回の分配金だけでVTIを購入できない場合、分配金を再投資するには資金を追加して購入するか、VTIを購入できるようになるまで分配金をプールしておく必要があります。
一般的な投資信託では分配金が自動的に再投資されるため、このような手間はかかりません。
二重課税を避けるには確定申告が必要
米国のETFであるVTIの分配金は米国と日本国内でそれぞれ課税されるため、「二重課税」になります。これを解消する方法として「外国税額控除」の仕組みが用意されていますが、控除を受けるには自分で確定申告をしなければなりません。
外国税額控除とは
確定申告をすることで、二重課税された税金を所得税から控除できる制度のこと。
居住者が、その年において外国の法令により所得税に相当する租税(以下「外国所得税」といいます。)を納付することとなる場合には、次の算式(1)で計算した金額(以下「所得税の控除限度額」といいます。)を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引くことができます。
出典:国税庁|居住者に係る外国税額控除
(1)所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
米国ETFの分配金は、米国株と同様に米国で10%の税率で源泉徴収され、残り90%に対して日本国内で20.315%の税率で課税されます。外国税額控除に関する明細書を添付して確定申告をすることで、米国で源泉徴収された税額相当分が所得税から控除されるのが外国税額控除です。
分配金にかかる税金は支払い時点で源泉徴収されているため、確定申告をしないという選択もできます。VTIの保有額が少なく、外国税額控除によって還付される税金が少ない場合、確定申告をする手間と比較して、あえて確定申告をしないという選択もあるでしょう。
あくまで米国株式市場への集中投資
VTIは米国株式市場全体に分散投資ができる商品ですが、世界や金融商品全体に視野を広げると、「米国」の「株式」に集中投資する商品といえます。
米国は世界経済を牽引し、今後も成長が期待できる有望な投資先ではありますが、この先もずっと安泰とは限りません。
投資先をさらに分散したい場合は、全世界の株式を投資対象とするETFや投資信託に投資する方法や、VTIと米国以外の国や地域を投資対象とするETFや投資信託を組み合わせて投資する方法があります。
【全世界の株式を投資対象とするETF・投資信託(例)】
- バンガード・トータル・ワールドストックETF(VT)
- iシェアーズ MSCI ACWI ETF(ACWI)
- 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
運用目的や許容できるリスクによっては株式ではなく、債券や不動産(REIT)、コモディティ(金など)といった商品が適している場合もあります。これらの商品も選択肢として持っておきましょう。
VTIとVOO、QQQの違いは?どれがおすすめ?
Q.米国株を投資対象とするETFには「VOO」や「QQQ」などもありますが、どう違うのですか?投資するならどれがおすすめでしょうか?
A.投資対象(構成銘柄)やベンチマークなどが異なります。構成銘柄数はVTI、VOO、QQQの順に多いため、どの程度投資対象を分散したいかによって選ぶとよいでしょう。QQQはVTIやVOOに比べてITセクター(ハイテク企業)の割合が多いため、成長期待の高い大型IT銘柄に投資したい人におすすめです。
VTIとVOO、QQQの違いをまとめると、以下のようになります。
銘柄 | VTI | VOO | QQQ | |
---|---|---|---|---|
運用会社 | バンガード | バンガード | インベスコ | |
ベンチマーク | CRSP USトータル・マーケット・インデックス | S&P500 | ナスダック100 | |
投資対象 | 米国株式全体 | 米国大型株 | ナスダック上位100銘柄(金融除く) | |
構成銘柄数 | 4,136銘柄 | 507銘柄 | 102銘柄 | |
経費率 | 0.03% | 0.03% | 0.02% | |
価格 | 221.41米ドル (2万5,462円) |
402.37米ドル (4万6,273円) |
345.77米ドル (3万9,764円) |
|
トータルリターン | 3ヵ月 | -7.88% | -6.42% | -14.50% |
1年 | 6.38% | 16.05% | 5.55% | |
3年 | 17.32% | 18.31% | 26.11% | |
5年 | 14.62% | 15.14% | 22.09% | |
直近分配金利回り (税込) |
1.55% | 1.52% | 0.57% | |
純資産総額 | 2,792億米ドル (32兆1,080億円) |
2,770億米ドル (31兆8,550億円) | 1,820億米ドル (20兆9,300億円) |
|
設定日 | 2001年5月31日 | 2010年9月9日 | 1999年10月3日 |
出典:Bloomberg(VTI、VOO、QQQ)(2022年2月25日時点)、構成銘柄数はVanguard(VTI、VOO)(2022年1月31日現在)、Invesco(2022年2月24時点)、1米ドル115円換算
VOO(バンガード S&P500 ETF)
VOO(バンガード S&P500 ETF)
アメリカの代表的な株価指数である「S&P500」に連動する運用成果を目指すETF。VTIと同じくバンガード社が運用しています。
投資金額ベースで比較するとほぼVTIと同じで、これ1本で米国株式市場に幅広く分散投資ができます。
ただし、VOOの投資対象は大型銘柄が中心で、構成銘柄数はVTIの約8分の1です。時価総額が小さい中小型株はほとんど含まれていないため、新興銘柄の成長に伴う恩恵はあまり期待できません。
すでに実績があり、今後も継続的な成長が見込める大型株を中心に投資したい人にはVOOをおすすめします。
VOO以外のS&P500連動ETF
「SPDR S&P500 ETF(SPY)」や「iシェアーズ・コアS&P500 ETF(IVV)」も、S&P500に連動する投資成果を目指すETFとして有名です。
SPDR S&P500 ETF(ティッカー:SPY)
米国運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによって1993年1月に設定された、米国最初のETF。
純資産総額は2,022年2月24日現在3,875億米ドル(約44兆5,600億円)で、VTIやVOOの約1.5倍の規模です。東京証券取引所にも上場しているため、日本円で取引することもできます。経費率は0.0945%なので、VTI・VOO(0.03%)に軍配が上がります。
iシェアーズ・コアS&P500 ETF(ティッカー:IVV)
米国運用会社ブラックロックが運営するETF。
純資産総額は同3,115億ドル(約35兆8,000億円)とSPYに匹敵する規模で、経費率はVOOと同じく0.03%です。
QQQ(インベスコQQQトラスト・シリーズ1)
QQQ(インベスコQQQトラスト・シリーズ1)
ナスダック100に連動する運用成果を目指すETF。米国運用会社インベスコ社が運用しています。
ナスダック100(NASDAQ100)は、米国ナスダック(NASDAQ)市場を代表する100銘柄で構成される株価指数です。投資比率は、GAFAMを始めとする情報技術(IT)セクターが約50%を占めています。VTIやVOOのITセクターは約25%なので、倍近い水準です。
S&Pとの大きな違いは対象市場の他、ナスダック上場銘柄であれば米国外の企業も対象であり、基準を満たせば赤字企業でも指数に採用される可能性がある点です。成長期待の高い新興企業は、積極的な投資によって赤字になることも少なくありません。ナスダック100にはS&P500では除外される企業も含まれるため、成長の種を早い段階で取り入れる指数といえます。
このような特徴から、QQQは高い成長を期待して米国経済を牽引するIT企業や、第二、第三のGAFAMとなる可能性を秘めた新興企業を中心に分散投資をしたい人におすすめです。
楽天VTIとは?直接VTIを購入するのと何が違う?
Q.「楽天VTI」とはどのような商品ですか?直接VTIを購入するのと何が違うのでしょうか?
A.楽天VTIは国内の投資信託であり、米国市場に上場するETFであるVTIとは商品性が異なります。国内向けの商品であるためVTIよりも投資しやすく、VTIに直接投資するのと同じような運用成果が期待できます。
楽天VTIはどのような商品なのでしょうか。VTIとの違いを確認していきましょう。
楽天VTIとは?仕組みを解説
楽天VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)とは?
マザーファンドを介してVTIに投資し、円換算ベースのCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動する投資成果を目指す投資信託です。
マザーファンドとは?
複数の投資信託(ベビーファンド)の資金をまとめて運用する投資信託のこと。
マザーファンドとは、複数のベビーファンドと呼ばれる投資信託から資金を預かり、それをまとめて運用する投資信託のことです。親ファンドとも呼ばれます。ベビーファンドの資金をまとめて運用することで、ベビーファンドが個別にいろいろ運用するよりも運用規模を大きくしたり効率化を図ったりすることができます。
出典:SMBC日興証券「初めてでもわかりやすい用語集」
簡単にいえば、楽天VTIを購入した投資家から集めた資金で運用会社(楽天投信投資顧問)がVTIに投資し、その運用成果が投資家に還元される仕組みです。
楽天VTIの概要
商品名 | 楽天・全米株式インデックス・ファンド | |
---|---|---|
運用会社 | 楽天投信投資顧問 | |
商品分類 | 追加型投信・海外・株式・インデックス型 | |
ベンチマーク | CRSP USトータル・マーケット・インデックス | |
基準価格(1万口あたり) | 1万8,021円 | |
純資産総額 | 4,634.32億円 | |
トータルリターン | 1年 | 25.55% |
3年(年率) | 21.21% | |
分配金(2021年7月期) | 0円(分配なし) | |
決算 | 年1回(7月) | |
購入時手数料 | なし | |
信託財産留保額 | なし | |
信託報酬率(税込) | 年0.162%程度 | |
主な取扱証券会社 | 楽天証券 SBI証券 松井証券 auカブコム証券 マネックス証券 GMOクリック証券 SMBC日興証券 岡三証券 フィデリティ証券 |
出典:楽天投信投資顧問|楽天・全米株式インデックス・ファンド、トータルリターン、取扱証券会社はモーニングスター(2022年2月25日時点)
2020年は基準価額が一時1万円を割り込む場面もありましたが、その後急回復し、2022年2月現在は1万8,000円付近で推移しています。
直近1年のトータルリターンは25.55%、直近3年でも21.21%と高い水準で、本家VTIのトータルリターン(1年:6.38%、3年:17.32%)を大きく上回ります。楽天VTIの価格は円換算ベースであり、為替レートが円安で推移していることが主な要因です。
楽天VTIとSBI・V・全米株式インデックス・ファンド(SBI VTI)の違い
VTIに投資する投資信託は楽天VTIの他に、SBIアセットマネジメントが運用する「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド(以下、「SBI VTI」)」があります。
SBI VTIとは? 楽天VTIと同じく、マザーファンドを介してVTIに投資し、円換算ベースのCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動する投資成果を目指す投資信託です。
商品名 | SBI・V・全米株式インデックス・ファンド | |
---|---|---|
運用会社 | SBIアセットマネジメント | |
商品分類 | 追加型投信・海外・株式・インデックス型 | |
ベンチマーク | CRSP USトータル・マーケット・インデックス | |
基準価格(1万口あたり) | 1万207円 | |
純資産総額 | 548.59億円 | |
トータルリターン | 1年 | − |
3年(年率) | − | |
分配金 | − | |
決算 | 年1回(7月) | |
購入時手数料 | なし | |
信託財産留保額 | なし | |
信託報酬率(税込) | 年0.0938%程度 | |
主な取扱証券会社 | SBI証券 |
出典:SBIアセットマネジメント|SBI・V・全米株式インデックス・ファンド、トータルリターン、取扱証券会社はモーニングスター(2022年2月25日時点)
2021年6月に設定された比較的新しいファンドなので、比較できるトータルリターンの実績はありませんが、楽天VTIと投資対象とベンチマークが同じなので、同程度の運用成果が期待できるでしょう。
特筆すべきは、信託報酬率の安さです。VTIへの投資にかかる年0.03%程度のコストは楽天VTIと同じですが、SBI VTI自体の信託報酬率は年0.0638%と低く、トータルで年0.1%を下回ります。SBI証券でしか購入できない商品であり、利益度外視でSBI証券を利用してもらうための客引き商品といえるでしょう。
SBI証券でVTIを投資対象とする投資信託を購入するなら、SBI VTIをおすすめします。
VTIと楽天VTIの違いは?
直接VTIに投資する場合と楽天VTIに投資する場合では、以下のような違いがあります。
VTIと楽天VTIの違い
- VTIは米国ETF(≒米国株)、楽天VTIは国内投資信託
- VTIの最低投資額は約2万5,000円、楽天VTIは最低100円から
- VTIは米ドルまたは円、楽天VTIは円で取引
- 楽天VTIはつみたてNISAやiDeCoでも購入できる
- 楽天VTIは分配金(配当金)が自動的に再投資される
- 楽天VTIのほうが運用コストは割高
違い1,VTIは米国ETF(≒米国株)、楽天VTIは国内投資信託
VTIは米国株式市場に上場しているETFなので、購入するには米国株と同様に外国証券取引口座が必要です。
一方で楽天VTIは国内で設定された投資信託であり、通常の証券口座で購入できます。証券会社だけでなく、一部の銀行でも購入できます。
違い2,VTIの最低投資額は約2万5,000円、楽天VTIは最低100円から
VTIは1口あたりの価格が高く、2022年2月25日の終値で221.41米ドル、1米ドル115円で換算すると2万5,462円です。
楽天VTIであれば他の投資信託と同様に、証券会社によっては100円以上1円単位で購入できます。
違い3,VTIは米ドルまたは円、楽天VTIは円で取引
VTIは米ドル建ての商品なので、保有している米ドルで決済する「外貨決済」か、日本円に換算した価格により円で決済する「円貨決済」のいずれかを選択して取引を行います。
それに対して楽天VTIは円建ての商品なので円で取引を行い、外貨決済の選択肢はありません。
違い4,楽天VTIはつみたてNISAやiDeCoでも購入できる
投資信託である楽天VTIは、つみたてNISAやiDeCoでも購入できます。楽天VTIをつみたてNISA、iDeCoで購入できる証券会社は以下のとおりです。
証券会社名 | つみたてNISA | iDeCo |
---|---|---|
楽天証券 | ○ | ○ |
SBI証券 | ○ | × |
松井証券 | ○ | ○ |
auカブコム証券 | ○ | × |
マネックス証券 | ○ | × |
SMBC日興証券 | ○ | × |
岡三証券 | ○ | × |
フィデリティ証券 | ○ | × |
出典:楽天証券、SBI証券、松井証券、auカブコム証券、マネックス証券、SMBC日興証券、岡三証券、フィデリティ証券の公式HPより作成(2022年2月時点)
iDeCoの取扱銘柄数には最大35銘柄という制約があるため、楽天VTIを取り扱っていてもiDeCoの対象商品ではないケースもあります。
米国ETFのVTIは、つみたてNISAやiDeCoでは購入できません。NISA口座で外国株式を購入できる証券会社であれば、NISAでVTIを購入することができます。
違い5,楽天VTIは分配金(配当金)が自動的に再投資される
楽天VTIでは分配金の支払いはなく、投資対象であるVTIから受け取った分配金は自動的に再投資されます。
VTIの場合、受け取った分配金を再投資するには、自分で購入手続きを行う必要があります。
違い6,楽天VTIのほうが運用コストは割高
楽天VTIでは、投資対象であるVTIの運用コスト(年0.03%程度)に加え、運用会社や販売会社、信託銀行(受託会社)への信託報酬(年0.132%)がかかります。一方、直接VTIに投資する場合の運用コストは年0.03%のみです。
VTIよりもコストは高いですが、その差はVTIに小口で手軽に投資できる、分配金を再投資する手間がかからないといった投資信託のメリットを得るためのコストといえるでしょう。投資信託で少しでもコストを抑えたい場合は、SBI VTIを検討するとよいでしょう。
VTIと楽天VTIはどっちがおすすめ?
VTIを直接購入するか楽天VTIを購入するかは、投資形態や投資金額などによって決めましょう。
VTIの購入が向いている人
VTIの購入が向いているのは、以下のような人です。
VTIの購入が向いている人
- 少しでも運用コストを抑えたい人
- まとまった金額を投資できる人
- 多少の手間はかかっても構わない人
- 保有している米ドルを運用したい人
- 定期的に分配金を受け取りたい人
少しでも運用コストを抑えたい人は、VTIのほうが向いています。また、楽天VTIに比べて投資単位が大きく投資金額を調整しにくいため、ある程度まとまった金額を投資できる人向けの商品ともいえるでしょう。分配金の再投資や、二重課税を回避するための確定申告などの手間を許容できるかどうかもポイントです。
VTIは、保有している米ドルをそのまま運用したい人にもおすすめです。
楽天VTIの購入が向いている人
楽天VTIの購入が向いているのは、以下のような人です。
楽天VTIの購入が向いている人
- 少額投資をしたい人
- 定額で積立投資をしたい人
- つみたてNISAやiDeCoでVTIに投資したい人
- なるべく手間をかけずに投資したい人
楽天VTIは最低100円から、金額を指定して購入できます。そのため、少額からVTIに投資したい人や、定額で積立投資したい人に向いています。つみたてNISAやiDeCoで購入したいなら、楽天VTI一択です。
なるべく手間をかけずにVTIに投資したいなら、楽天VTIを選びましょう。楽天VTIなら分配金の再投資や二重課税を回避するための確定申告、為替の計算、外国株式取引口座の開設といった手間がかかりません。
VTIのよくあるQ&A
VTIに関してよくある質問とその回答をまとめました。
Q.VTIとは何の略?
A.VTIは、バンガード社が提供するETF「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(Vanguard Total Stock Market ETF)」のティッカーです。
Q.VTIは何口(株)から買える?
A.VTIは、1口以上1口単位で購入できます。
Q.VTIの最低買付金額はいくら?
A.VTIの最低買付金額は、1口あたりのVTI価格と同じです。VTI価格は、2022年2月25日の終値で221.41米ドル、1米ドル115円で換算すると2万5,462円です。
Q.VTIの年率リターンは?
A.VTIの設定来の年率リターンは8.67%です(2022年1月31日時点)。ここ数年は20%に迫る高いリターンを上げていましたが、2022年に入ってから低調に推移しており、年初来のリターンはマイナスになっています。
VTI年率リターン(期間別)
年初来 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 設定来(2001年5月24日) |
---|---|---|---|---|---|
-6.04% | 18.58% | 19.82% | 16.08% | 14.99% | 8.67% |
出典:Vanguard(2022年1月31日時点)
Q.VTIのメリットは?
A.コストを抑えながら、長期的な成長が期待できる米国株式市場全体に分散投資ができることが最大のメリットです。
Q.VTIを購入できる証券会社は?
A.VTIは、米国株式を取り扱う証券会社の多くで購入できます。手数料が割安なネット証券でVTIを購入できるのは、以下のとおりです。
【VTIを購入できるネット証券】
- 楽天証券
- SBI証券
- マネックス証券
- DMM.com証券(DMM株)
- auカブコム証券
- 松井証券(2022年2月28日〜)
- CONNECT
- PayPay証券
- IG証券(CFD)
Q.VTIは今後どうなる?
A.VTIの価格は、長期的には上昇することが予想されます。ただし、足元では低調に推移しているため、それが一時的な調整に留まらず、年単位の本格的な下落相場へ転換するリスクもあります。
Q.VTIのデメリットは?
A.VTIには、以下のようなデメリットがあります。
- 1口の価格が高い
- 為替手数料がかかる
- 分配金の再投資が難しい
- 二重課税を回避するには確定申告が必要
- 米国株式市場への集中投資になる
Q.VTIとVOO、QQQの違いは?
A.投資対象(構成銘柄)やベンチマークなどが異なります。違いは下の表のとおりです。
銘柄 | VTI | VOO | QQQ | |
---|---|---|---|---|
運用会社 | バンガード | バンガード | インベスコ | |
ベンチマーク | CRSP USトータル・マーケット・インデックス | S&P500 | ナスダック100 | |
投資対象 | 米国株式全体 | 米国大型株 | ナスダック上位100銘柄(金融除く) | |
構成銘柄数 | 4,136銘柄 | 507銘柄 | 102銘柄 | |
経費率 | 0.03% | 0.03% | 0.02% | |
価格 | 221.41米ドル (2万5,462円) |
402.37米ドル (4万6,273円) |
345.77米ドル (3万9,764円) |
|
トータルリターン | 3ヵ月 | -7.88% | -6.42% | -14.50% |
1年 | 6.38% | 16.05% | 5.55% | |
3年 | 17.32% | 18.31% | 26.11% | |
5年 | 14.62% | 15.14% | 22.09% | |
直近分配金利回り (税込) |
1.55% | 1.52% | 0.57% | |
純資産総額 | 2,792億米ドル (32兆1,080億円) |
2,770億米ドル (31兆8,550億円) | 1,820億米ドル (20兆9,300億円) |
|
設定日 | 2001年5月31日 | 2010年9月9日 | 1999年10月3日 |
出典:Bloomberg(VTI、VOO、QQQ)(2022年2月25日時点)、構成銘柄数はVanguard(VTI、VOO)(2022年1月31日現在)、Invesco(2022年2月24時点)、1米ドル115円換算
Q.楽天VTIとは?
A.楽天VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)は、マザーファンドを介してVTIに投資し、円換算ベースのCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動する投資成果を目指す投資信託です。
楽天VTIを購入した投資家から集めた資金で運用会社(楽天投信投資顧問)がVTIに投資し、その運用成果が投資家に還元されます。
Q.VTIはNISA口座で購入できる?
A.VTIは外国株式(米国株式)と同じ扱いです。そのため、NISA口座で米国株式を購入できる証券会社であれば、VTIを購入できます。
VTIならコストを抑えて米国株式市場全体に投資できる
VTIなら、一般的なインデックスファンドよりも運用コストを抑えながら、米国株式市場全体に分散投資を行うのと同じ投資成果が期待できます。個別株投資のような銘柄分析は必要ないため、投資初心者でも投資しやすいでしょう。
少額から投資したい場合は、コストは少し増えますがVTIに投資する楽天VTIやSBI VTIもおすすめです。自分の投資スタイルに合った商品を選びましょう。