3月5日は、記念すべき「サンゴの日」です。

語呂だけでなく、珊瑚(コーラル)が3月の誕生石であることから、WWF(世界自然保護基金)が1996年に、サンゴの保全と育成を目的に制定しています。

そんな日に嬉しいニュースが飛び込んできました。

世界最大のサンゴ礁帯である「グレートバリアリーフ」にて、4年にわたるサンゴ育成プログラムが、かつてないほどの成果をあげていると発表されたのです。

これまでに約7万のサンゴ断片が植え付けられ、第1弾のうち、なんと85%が産卵に成功したといいます。

しかし、一体どんな経緯で、サンゴ育成プログラムは始まったのでしょうか。

目次

  1. サンゴの「白化現象」がプロジェクトのきっかけに

サンゴの「白化現象」がプロジェクトのきっかけに

グレートバリアリーフの「サンゴ育成プログラム」が最高の成果をあげている
(画像=サンゴの断片を集める / Credit: CalypsoProductions、『ナゾロジー』より引用)

このプロジェクトは、豪クイーンズランド州の観光業者である「ウェイブレングス・リーフ・クルーズ(Wavelength Reef Cruises)」により、4年前に始められました。

きっかけは、2016年に起こったグレートバリアリーフのサンゴの「白化現象」です。

サンゴは普段、光合成を行う褐虫藻(かっちゅうそう)と共生することで成長しています。

しかし、海水温の上昇が続くと、褐虫藻がサンゴから脱出し、サンゴは色素を失うとともに死んでしまうのです。

その際に、サンゴが白く見えることから「白化現象」と呼ばれます。

これを機に、同社の経営者で海洋生物学者のエドモンドソン夫妻は、サンゴを回復させるための取り組みとして、本プロジェクトを立ち上げました。

現在では、シドニー工科大学(UTS)の科学者と、他のツアー業者5社も参加しています。

サンゴ育成の方法とは

サンゴの育成プログラムは、簡単かつシンプルです。

まず、サンゴの破片を回収し、海面下2メートルに吊るされた苗床で育てます。

グレートバリアリーフの「サンゴ育成プログラム」が最高の成果をあげている
(画像=グレートバリアリーフの「サンゴ育成プログラム」が最高の成果をあげている、『ナゾロジー』より引用)

その後、化学接着剤ではなく、金属製のクリップを使って、サンゴ礁に取り付けます。

従来よりも低コストかつ早く植え付けができ、高い生存率にもつながっているようです。

サンゴの苗は6週間もすると、サンゴ礁に吸着し、数年後には他のサンゴ礁とまったく同じになります。

グレートバリアリーフの「サンゴ育成プログラム」が最高の成果をあげている
(画像=クリップでサンゴ断片を植え付ける / Credit: CalypsoProductions、『ナゾロジー』より引用)

果たして成果のほどは?

共同チームは今回、4年間のサンゴ育成プログラムの成果を確認するべく、2週間にわたる水中調査を実施。

これまでに7万にのぼるサンゴの植え付けを終えていますが、調査の結果、どの苗も非常に目覚ましい成長を見せていることがわかりました。

UTSのデビッド・サゲット(David Suggett)氏は、こう話します。

「育成中のサンゴ礁を訪れるようになって1年ほど、いずれも素晴らしい成長を見せています。

とくにここ2年は、成長するにはとても良い環境だったため、サンゴも非常に生き生きとしていました。

新たに植え付けられたサンゴの断片も増えており、サンゴ礁が徐々に回復していることが大きな励みとなっています」

グレートバリアリーフの「サンゴ育成プログラム」が最高の成果をあげている
(画像=サンゴの苗は順調に成長を続けているとのこと / Credit: CalypsoProductions、『ナゾロジー』より引用)

今のところ、グレートバリアリーフの27カ所に7万個以上のサンゴの断片が植えられ、平均85%という高い生存率でサンゴが再生されていると言います。

これは、前例のない規模でのサンゴ礁の復活です。

気候変動からサンゴ礁を守るために…

このように、繁殖可能なサンゴ礁が新たに増えることで、将来的に何千ものコロニーが作られるようになります。

また、息を吹き返したサンゴ礁には、たくさんの魚たちが戻ってきますし、色鮮やかなサンゴのもとでは、シュノーケリング体験も一段と魅力的なものとなるでしょう。

共同チームは今後も、深刻化する気候変動からサンゴを守るべく、協力関係を築いていくとのこと。

グレートバリアリーフの「サンゴ育成プログラム」が最高の成果をあげている
(画像=サゲット氏 / Credit: Queensland – サンゴ育成プログラム~将来に希望が持てる成果を確認!(2022)、『ナゾロジー』より引用)

サゲット氏は、次のように述べています。

「今では、さまざまなツアー業者が一緒になって、何万ものサンゴの植え付けに参加するようになりました。

サンゴの移植をどのように、いつ行えば成功するのかが分かるようになっています。

この新たな協力関係の下でより良い管理が出来るようになるでしょう」

参考文献
サンゴ育成プログラム~将来に希望が持てる成果を確認!

提供元・ナゾロジー

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