5月20日、「ホリエモン」の愛称で知られる実業家の堀江貴文氏が、東京都知事選へ出馬することが報じられました。東京都知事選は6月18日告示、7月5日投開票の予定で、堀江氏は告示直前に出馬を表明すると見られています。

これに対し現職の小池百合子氏は「まあ賑やかなこと」と発言し、個性の強い両名の動きにネットでは注目が集まりました。

この東京都知事選には、現時点では自民党が独自候補の擁立を断念するなど、小池氏に有力な対立候補が見受けられない状況です。そのような中、小池氏が出馬するのであれば、堀江氏が小池氏を破って都知事に当選するのは難しいのではないかともみられています。

この点について、報道によれば、同氏は今回、当選ではなく、出馬そのものを目的としているようです。

今回は、東京都知事選をめぐる堀江氏の狙いとは何なのか、世の中にどのような変化が生まれるか、インバウンド業界にも影響を与えるのかについて、考察します。

目次
著書『東京改造計画』出版「実質的マニフェスト」の内容は?
実は早くからインバウンドにも注目していたホリエモン

ホリエモンの出馬でインバウンド業界にポジティブな刺激も

著書『東京改造計画』出版「実質的マニフェスト」の内容は?

多数の著作で知られる堀江氏ですが、5月30日にも新刊『東京改造計画』の発売が予定されています。

この本は同氏による「東京都への緊急提言37項」から構成され、教育や社会保障、経済、新型コロナウイルス対策などに対する考えが綴られています。この本について脳科学者の茂木健一郎氏は、堀江氏の「マニフェスト」にあたると指摘しています。

行政手続きの電子化や、オンライン教育体制の整備など、公的な領域における抜本的な改革の必要性は、新型コロナウイルスをめぐる混乱の中でよりはっきりと意識されています。

こうした環境の中で発行される「東京改造計画」の提言は、いずれも行政に大胆なメスを入れる内容ばかりです。現職の小池都知事に有力な対立候補が現れない中、何とか都政を活性化させようとする堀江氏の意欲が伝わるものとなっています。

すでに自身のYouTubeチャンネルで多くの登録者を抱え、書籍も多数発表している堀江氏ですが、都知事選への出馬というサプライズによって、YouTubeの登録者や新刊の売上部数も大きく伸びる可能性があります。

当選のための選挙活動はしないとの情報もあり、出馬を通して自身の主張や、技術活用による新しい情報伝達の形式を日本社会に知らせることがその目的の一つとみることもできるでしょう。

実は早くからインバウンドにも注目していたホリエモン

ロケット開発など実業家として様々なビジネスを手掛ける堀江氏は、実は早くからインバウンドにも注目していたとみられます。

頻繁に更新している自身のツイッター上では、コンスタントにインバウンドにビジネスの可能性を見出す発言が投稿されています。

堀江氏は、世界屈指の和牛輸出王とされる浜田寿人氏とともに、ユニット「WAGYUMAFIA」を結成し、積極的に海外市場にアプローチしています。この活動では、和牛をはじめとする日本ならではの食材をコミュケーションツールとして世界に発信し続けています。

ツイッター上では、プロデュースした2万円の高級カツサンドが外国人観光客から高い人気を集めたことを報告しています。

ツイッターの過去の発言からは、以下のような発言も確認できます。

食だけでなく、インバウンドのタクシー需要に着目するなど、堀江氏は日頃から、インバウンドという視点から日本の課題に着目していることが分かります。

運営する動画チャンネル「ホリエモンのQ&A」では、2014年という早い時期から「インバウンドがビジネスチャンス!?」と題したトークを繰り広げていました。

動画の中で堀江氏は、日本の街中に観光案内所が少ない、無料Wi-Fiスポットが少ないといった日本の課題について言及し、外国人のために日本を紹介する観光アプリの開発にも意欲を見せていました。外国人の目線でニーズを捉え、柔軟な視点で問題を解決しようとする堀江氏の姿勢がうかがえます。

実質的なマニフェストとみられる書籍「東京改造計画」には、直接的にインバウンドへ言及している提言項目は見受けられません。しかし外国人のニーズを捉えるために欠かせない、鋭い「顧客目線」を持ち合わせている堀江氏の感性は、日本が観光立国に近づくために役立つでしょう。

情報発信力や訴求力、インバウンド業界も参考に

地上波の人気番組にもたびたび出演している堀江氏ですが、最近ではテレビ出演よりもYouTubeでの情報発信にメリットがあるということを主張しています。

頻繁に更新される同氏のYouTubeチャンネルは現在、108万人もの登録者を抱えています。例えば5月11日に公開された、検察庁法改正案を取り上げた動画では、323万回以上もの再生回数を記録しています。

YouTube同様、自分の発言を世の中に知らせファンを獲得する新たな手法として昨今注目を集めている、オンラインサロンでも堀江氏は成功しています。「堀江貴文イノベーション大学校」は、月額約1万円で1,400人以上の会員を有し、ビジネスや遊びなどの交流を精力的に行っています。

堀江氏はすでにテレビなどのマスメディアから、YouTubeやオンラインサロンといったネットの世界に軸足を移しています。時代に合ったマスとの交流チャンネルを見つけ、アカウントを開設しコンスタントに発信する機動力と継続力、そして求心力があるといえるでしょう。

訪日外国人へのアプローチは、旅マエや旅アトの場合、物理的に距離があり、インターネットユーザーに対するものが最も容易です。堀江氏のインターネットプラットフォームを用いたファンコミュニティ形成の手法は、インバウンド向けプロモーションにおいても参考にできる点があるはずです。

ホリエモンの出馬でインバウンド業界にポジティブな刺激も

新型コロナウイルス対策などで全国的な注目を集めている都政への挑戦とあって、堀江氏の出馬は大きな注目を集めることは間違いありません。

堀江氏は日本の課題や、自身のビジネスアイディアについて頻繁に発信しており、そこにはインバウンド市場への訴求方法についてのヒントも少なくありません。忖度なしで柔軟な発想をできるだけでなく、実行に移す堀江氏のビジネスセンスは、消費者の国籍にかかわらず購入意欲を刺激するようです。

堀江氏の東京都への提言は、月末に発売される書籍や、6月18日に告示される東京都知事選での選挙活動を通してより明らかになっていくでしょう。その中でインバウンドについてどのような言及がなされるのか注目されます。

書籍「東京改造計画」に示されている東京都への提言の中には「Uber解禁」、「江戸城再建」、「現金使用禁止令」、「築地市場跡地のブランド化」など、インバウンドに影響がありそうな項目も見受けられます。

堀江氏が都知事に当選して自ら采配を振るうことは難しくても、都知事選を通してより日本中から注目を高めることは間違いありません。発信力と実行力のある同氏によりインバウンド経済に関する提言がなされれば、今後の市場回復にもブーストをかける節目になるのではないでしょうか。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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