将来の年金額が減ることが確実視される一方で、日本人の平均寿命は今後伸びていくことが予想される。独身であれば1人で老後の計画を立てなければならず、より慎重な準備が必要になる。今回は、独身者の貯金の現状と必要な老後資金、老後への備え方を紹介する。

目次
1. 独身の貯金額の平均値と中央値
2. 独身の貯金方法
3. 独身が老後に必要な貯金額とは
4.貯金を増やすための3つの方法
5.資産運用で資産を増やすための方法
6. 貯金を始めるのは早ければ早いほど良い

独身の貯金額は平均値645万円、中央値45万円

周りの人がどれくらい貯金しているかを知るための指標として、「平均値」のほか「中央値」というものをよく目にするのではないだろうか。普段あまり使わない指標だが、貯金額をはじめ金融の世界では「中央値」のほうがより実態を表していることが多い。

貯金額を参考にするときは「平均値」ではなく「中央値」

平均値と中央値の違いを確認しておこう。平均値は「データの数値を足し合わせ、データの数で割った値」、中央値は「データを小さい順に並べたとき、真ん中にくる値」である。

例えば、それぞれ年収が以下のような7人の平均値と中央値を考えてみよう。
{400万円、300万円、400万円、300万円、3,000万円、700万円、500万円}

・平均値
(400万円+300万円+400万円+300万円+3,000万円+700万円+500万円)÷7=800万円

・中央値
小さい順に並べると300万円、300万円、400万円、400万円、500万円、700万円、3,000万円となるので、中央値は真ん中の400万円である。

平均値では800万円であるが、内訳を見ると年収が800万円を超えているのは1人だけだ。特に金融の分野では、平均値は一部の高所得者に引っ張られて高くなる傾向がある。一方、中央値では極端に低い数値や高い数値が除外されるので、普通の人の実態に近い数値として参考になりやすい。

30代から貯金額がぐんと増える

実際に独身者の貯金がどれくらいなのか見ていこう。金融広報中央委員会が発表した調査によると、年齢別の金融資産は表1のとおりだった(※2019年「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和元年)」より)。

表1.年代別金融資産保有額(単身世帯)

年齢 平均値 中央値
20代 106万円 5万円
30代 359万円 77万円
40代 564万円 50万円
50代 926万円 54万円
60代 1,335万円 300万円
全体 645万円 45万円
※家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和元年)を基に筆者作成

20代はまだ給料が多くないためか貯金額は5万円にとどまるが、30代からは貯金額が急に増える。60代の中央値が跳ね上がっているが、これは老後の生活費の不安から貯金への意識が高まっていることや、退職して退職金が入ったことなどが考えられる。

年収300万円未満の人でも半数以上の人が貯金している

同じ調査から、年収別の貯金額を紹介しよう(表2)。

表2.収入区分別金融資産保有額(単身世帯)

年収 平均値 中央値
収入なし 125万円 0円
300万円未満 407万円 10万円
300万円以上500万円未満 669万円 130万円
500万円以上750万円未満 1,570万円 600万円
750万円以上1,000万円未満 2,846万円 1,745万円
1,000万円以上1,200万円未満 6,131万円 2,915万円
1,200万円以上 5,209万円 1,330万円
※家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和元年)を基に筆者作成

年収が多くなるほど、貯金額の中央値も高くなっている。年収が300万円未満でも中央値が10万円なので、年収300万円未満の人でも半数以上の人が貯金していることがわかる。

独身の貯金方法――40歳未満は普通預金、40代以降は保険や資産運用に注力

独身者がお金をどのような形で保有しているのか、内訳を見てみよう(表3)。

表3.年代別保有資産の内訳(単身者)

通貨性預貯金 定期性預貯金 生命保険など 有価証券 その他
20代 44.3% 22.6% 8.5% 17.0% 7.5%
30代 32.0% 17.0% 12.3% 30.6% 8.1%
40代 19.0% 26.2% 15.6% 33.7% 5.3%
50代 19.0% 21.0% 19.7% 37.1% 3.2%
60代 18.8% 24.0% 17.5% 36.4% 3.2%
※家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和元年)を基に筆者作成

20代、30代では普通預金などの通貨性預貯金の割合が高い。特に20代では44.3%の人が預貯金で資産を持っていることがわかる。40代以降では預貯金の割合が20%程度まで下がり、代わって定期預金や有価証券などで資産を運用する割合が増える。独身の間は生命保険などの必要性はそれほど高くないが、それでも50代では20%近くの資産を保険で保有している。

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独身が老後に必要な貯金額とは

2019年に「老後資金2,000万円問題」が話題になったが、2,000万円という数字は収入を年金のみに頼る無職世帯を想定して算出されたデータであり、独身者には当てはまらない。そこで、老後に必要な資金のデータから、独身者に必要な金額を考えてみよう。

公的年金だけでは毎月約3万円の赤字

総務省統計局発表の「平成26年全国消費実態調査」によると、高齢無職単身世帯の家計収支は以下のとおりだ(表4)。

表4.高齢無職単身世帯の家計収支

実収入(うち年金給付) 支出 不足分
男性 13万9,385円(12万8,981円) 16万9,616円 3万231円
女性 13万875円(11万7,088円) 16万2,867円 3万1,992円
※平成26年全国消費実態調査を元に筆者作成

男女とも公的年金を含む収入より支出のほうが多く、1ヵ月で3万円強の赤字となっている。この赤字分は、各々の金融資産を取り崩してまかなうことになるだろう。

厚生労働省が発表した「平成30年簡易生命表」によると、2018年時点の65歳の平均余命は男性が19.7年、女性が24.5年だった。つまり平均的な寿命まで生きる場合、最低でも以下の金額が必要になるということだ。

男性:3万231円×12ヵ月×19.7年 =714万6,608円
女性:3万1,992円×12ヵ月×24.5年=940万5,648円

老後は住宅リフォームの費用も必要

老後に必要になるのは、生活費だけではない。趣味や娯楽にどれだけお金をかけるかは人それぞれだが、最低限必要な支出として住宅のリフォーム費用を考えておく必要があるだろう。

消費者庁が2018年に公表した資料によれば、毎年約3万人の高齢者が不慮の事故で亡くなっている。特に「転倒・転落」「不慮の溺死及び溺水」によって、合計1万3,875人もの高齢者が亡くなっているのだ(※2018年「高齢者の事故の状況について-「人口動態調査」及び「救急搬送データ」調査票分析」より)。

「転倒・転落」「溺死」は自宅でも起こりうる事故であり、消費者庁も注意喚起を行っている。高齢者になっても家で安心して過ごすためには、浴室周辺や階段などの住環境整備が必要になる。

住宅リフォーム推進協議会の調査によると、リフォーム予算は戸建で約269万円、マンションで約262万円だ(※2019年「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査」より)。

これまでの支出をまとめると、独身者は最低でも以下の金額が必要になる。

男性……714万6,608円+262万円=976万6,608円
女性……940万5,648円+262万円=1,202万5,648円

60歳で定年退職するなら公的年金がない期間の生活費として約1,000万円必要

2017年に施行された新しい高年齢者雇用安定法により、希望すれば65歳まで働くことができるようになったが、60歳で退職する計画を立てている人もいるだろう。この場合、原則65歳までは年金が給付されないため、60歳から65歳までの生活費を別で確保しておく必要がある。

上記で紹介した支出額で考えると、5年間に必要になる生活費は以下のとおりだ。

男性:16万9,616円×12ヵ月×5年=1,017万6,960円
女性:16万2,867円×12ヵ月×5年=977万2,020円

早期に退職する予定であれば、プラス1,000万円を目安に老後資金を準備する必要があるということだ。

独身で貯金を増やすための3つの方法

貯金を増やすために投資を考える人は多いが、まず始めるべきことは支出の管理である。投資にはリスクが伴うので、運用次第では貯金が減る可能性もあるが、支出を削減できれば確実に貯金を増やせる。

方法1……固定費の見直しをする

節約というと、食費の削減などが思い浮かぶ。しかし、食費を削減しようとすると毎日工夫する必要があり、かける手間の割に効果は薄いだろう。まず削減すべきは、固定費である。契約の変更や解約など、一度手続きをすれば節約の効果が続くものを重点的に見直したい。

・スマホの料金プラン
スマホの料金が高すぎると感じたら、スマホショップに行って料金プランを見直してもらおう。プランを変えるだけで数千円安くなるケースもある。仕事などで特定のキャリア以外は使えないという事情がなければ、格安スマホへの変更も検討したい。

・インターネット利用料
インターネットのプロバイダーも、特に長年同じものを使っている場合は、より安いサービスや、価格は同じでも通信速度が早いものが利用できる可能性がある。特にスマホのキャリアとセット割が使えるものは、積極的に利用したい。

・光熱費
冷蔵庫にビニールシートをかけたり、使わないコンセントを抜いたりするより、契約プランの見直しから考えたい。電力会社を変えたり、契約アンペアを変更したりすると基本料金が安くなることもあるので、自分の電力使用料とプランを確認して適切なプランを選ぼう。

・保険の見直し・振込方法の変更
不要な保険は、思い切って見直そう。保険料の節約を検討する際は、保険料の支払い方法を変えることも考えたい。定期的にボーナスが出る人であれば、その月に合わせて半年払い、年払いなどに変更すると保険料はトータルで安くなる。

方法2……節税対策をする

お金を貯めるなら、支払う税金は少なければ少ないほうがいいが、会社員でもできる節税対策にはどのようなものがあるのだろうか。会社員でも利用できる節税対策を3つ紹介する。

・ふるさと納税
ふるさと納税は、自分が生まれた故郷や応援したい自治体に寄付できる制度だ。手続きをすることで、寄付金のうち2,000円を超える部分について所得税の還付、住民税の控除が受けられるうえ、自治体から特産品や宿泊券などがもらえる。実質負担額2,000円で、さまざまな商品を受け取ることができるのだ。会社員にとって、最も利用しやすい節税方法と言えるだろう。

・iDeCo(イデコ)の所得控除
iDecoとは拠出した掛金を自分で運用し、資産を形成する私的年金制度だ。iDeCoに掛金を拠出すると、その全額が所得控除される。例えば所得税率10%、住民税率10%の人がiDeCoに年間25万円拠出すると、25万円の20%である5万円税金が安くなる。つまり、実質負担額20万円で25万円分の資産を運用できるのだ。

・生命保険料控除
生命保険料を支払うと、年間の支払い保険料に応じて「生命保険料控除」「介護保険料控除」「個人年金保険料控除」でそれぞれ4万円まで、最大12万円が控除される。ただし、不要な保険に入って固定費が増えたら元も子もないため、加入する保険は慎重に選びたい。

方法3……ポイントの活用

必ず支払わなければならない光熱費やスマホ代などの固定費をクレジットカード決済などにしておくと、その分のポイントを貯めることができる。また証券会社の中には、投資信託の残高に応じてポイントが付与されるものもある。貯めたポイントで生活費の一部を支払えるようになれば、その分お金を貯められる。

ただし、ポイントを貯めることに意識を向けすぎると、かえって支出が増えてしまう可能性がある。ポイントはあくまでおまけと考え、ポイント還元に振り回されないようにしたい。

独身者が資産運用で資産を増やすための3つの方法

支出の管理ができたら、資産運用も考えてみよう。初心者であれば大きな利益を狙うより、長期に渡ってコツコツと資産を増やす運用方法がおすすめだ。ここでは、初心者におすすめの方法を3つ紹介する。

方法1……つみたてNISA

つみたてNISAは、特に少額からの長期・積立・分散投資を後押しするために作られた非課税制度だ。毎年40万円まで投資でき、最長20年間投資から得られた分配金や譲渡益が非課税になる。投資できる投資信託も手数料が低く、分配金が頻繁に支払われないなど、長期の積立・分散投資に適した商品が厳選されている。初心者でも安心して資産形成ができるように工夫されているのだ。

方法2……iDeCo(イデコ)

iDeCoでは、節税対策の項目でも紹介したように掛金が全額所得控除される。さらに、つみたてNISAと同様、運用によって得られた分配金や譲渡益が非課税になる、税制面で優遇されている制度だ。ただし、原則として60歳まではお金を引き出せないため、緊急時に利用できない。老後資産の形成という目的に特化した制度であることを覚えておこう。

方法3……株式投資

株式投資は高いリターンを狙える分、リスクも高い投資法だ。初心者であればキャピタルゲインを狙うより、配当金や株主優待などのインカムゲインでじっくり資産を形成したい。短期的な利益を期待せず、余裕資金で長期的に保有できる銘柄を選ぶことが大切だ。

独身者が貯金を始めるのは早ければ早いほど良い

独身者の貯金額は50代まで低いままで、貯金に対する意識は低いことがわかる。しかし、独身でも老後には1,200万円から2,000万円程度の資産は必要だ。将来のために無駄な支出を見直しながら、早い段階から計画的にお金を貯め、老後に備えていただきたい。
 

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文・松岡紀史(ライツワードFP事務所代表)
 

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