カードローンは便利だが、借りやすいためつい借り過ぎてしまうことがある。すると、多重債務に陥ってしまうケースもある。そうならないよう、返済が滞りそうになったら早めに対処する必要がある。そこで、返済できない状態になった場合、どのような対処法があるか紹介する。

目次
1.カードローンが返済できないと生じる4つの不利益
2.カードローンの返済ができない場合の対処法
3.返済期限の延長を相談する場合のメリット・デメリット
4.ローンの「おまとめ」をする場合のメリット・デメリット
5.債務整理のメリット・デメリット
6.返済できない場合でも「踏み倒し」はできない

1.カードローンが返済できないと生じる4つの不利益

カードローンの返済ができなくなると、以下の4つの不利益が生じる。

請求・督促に始まり、最終的には強制執行(差押)に至る

カードローンの返済ができない場合、カードローン会社から催促の電話が入るようになるが、それでも返済がなければ法的手段が取られることになる。そこへ至るプロセスは以下のとおりだ。

(1)請求・督促
返済日が過ぎると、まずカードローン会社から「いつまでに入金できるか」を確認する電話が入る。電話ではなく、メールやショートメッセージで連絡してくることもある。

その連絡を無視して、入金日までに返済しない場合、支払いの催促を受けることになる。カードローン会社によって連絡手段は異なるが、郵便や電話で連絡がくる。催促を繰り返し行っても入金がない場合、今度は督促状が送られてくる。

(2)「差押予告通知」が内容証明郵便で届く
督促にもかかわらず1~2ヵ月返済が遅れてしまうと「差押予告通知」が届き、多くの場合「一括返済しない場合には差押をする」と警告される。最初から一切電話に出ない場合は、もっと早い段階で「差押予告通知」が届くこともある。

「差押予告通知」は、カードローン会社側が強硬手段に出ることを予告するものだ。「強硬」と言っても、取り立てが自宅に押し掛けることはない。あくまで法的に強硬な手段ということだ。

(3)裁判所から「支払督促」が届く
「差押予告通知」が来ても返済がない場合、今度は裁判所から「支払督促(仮執行宣言付き支払督促)」が届く。これにより、債権者であるカードローン会社や銀行は、いつでも差押ができるようになる。

(4)強制執行(差押)
裁判所に債権者から給与差押の申し立てがなされると、裁判所から勤務先へ「債権差押通知書」が送付され、勤務先において給与が差し押さえられる。手取り給与額の4分の1が差押の対象となるが、手取り額が44万円を超える場合は、手取り額から33万円を差し引いて残った金額がすべて差押の対象となる。この段階になると、会社にも借金を滞納していることが知られることになり、社会的信用も大きく損なわれてしまう。

遅延損害金が発生する

返済が1日でも遅れると、通常の利息の代わりに「遅延損害金」が発生する。遅延損害金は、年率19.0~20.0%に設定されていることが多い。カードローンの利率が通常3~18%であることを考えると、遅延損害金の金利は高く設定されていると言えるだろう。

返済が遅れている間は遅延損害金が加算されていくので、返済が遅れるほど支払う金額は多くなる。ただし「遅延損害金」が発生しても、それだけで債務者の信用情報に「傷」がつくことはない。

延滞期間が2~3ヵ月におよぶといわゆる「ブラックリスト入り」となる

「ブラックリスト入り」とは、一般的に「信用情報機関に事故情報が登録されている状態」を指す。明確な基準はないが、2~3ヵ月以上延滞すると信用情報機関に「事故情報」として登録されると言われている。

その場合、完済後も情報が残っている期間は新たな借り入れができなくなる。期間は信用情報機関によって異なるが、延滞の場合は1年または5年だ。カードローンに限らず、住宅ローンや自動車ローンの借り入れ、クレジットカードの新規発行なども含まれる。

キャッシングの限度額が減らされる

信用情報機関に事故情報として登録された場合、すでに所有しているクレジットカードのキャッシングの限度額が減らされる可能が高い。借金をスムーズに返済しないことが明らかになったのだから、当然の処置だ。また、更新日を迎えたときにカードが更新されない可能性もある。

2.カードローンの返済ができない場合の対処法 

カードローンの返済が滞った場合、目先のことだけを考えて他社カードローンなどから借り入れを行い、それを返済に充てる人がいる。これは多重債務と呼ばれる状態であり、新たなカードローンの返済のために、さらに別のところで借り入れてしまい、雪だるま式に借金が膨らんでしまう。

多重債務状態になると完済は遠のいていき、自力では抜け出せない借金地獄に陥ってしまう。それを避けるには、以下の3つの方法がある。

カードローン会社に返済期限の延長を相談する

返済が遅れそうなとき、あるいは返済の催促があった最初の段階でカードローン会社に返済期限の延長を打診すると、応じてくれることがある。返済しなければならない状況は変わらないが、少し待てば返済できる場合はその状況を説明することが大切だ。たとえば、消費者金融系カードローン会社のプロミスでは、電話相談で債務者の状況に合わせた返済プランを提案している。

金利の安いローンに一本化する

現在借り入れているローンを、それより安い金利の「おまとめローン」による借入金ですべて返済し、その後は「おまとめローン」の返済を行っていく。多重債務と異なるのは、借金をより安い金利のローンに一本化することで利息負担を軽減し、返済を容易にする点だ。

債務整理を行う

先に紹介した方法をもってしてなおカードローンの完済が難しい場合、借金そのものを減らしたり、なくしたりする「債務整理」を行う。債務整理には、「任意整理」「個人再生手続」「自己破産手続」がある。

3.カードローンの返済期限延長を相談する場合のメリット・デメリット 

決められた返済日までにカードローンの支払いができない場合は、なるべく早い段階でカードローン会社に連絡して、支払いの意思を伝えるべきだ。返済期限の延長は必ず応じてもらえるとは限らないが、いつまでにいくら用意できるかを具体的に説明することで、返済日の延長が認められることがある。

メリット……返済計画を提案してくれる場合がある

カードローン会社によっては、債務者からの相談をもとに返済計画を提案してくれることがある。たとえば、当面は遅延損害金だけを支払うなどの方法が認められることがある。返済期限を延長してもらえた場合は、信用情報機関に「事故情報」として登録されることを回避できる。

デメリット……返済総額が膨らむ

返済期限の延長が受け入れられた場合、当面は利息だけを支払えばいいことになるが、その分完済までの期間が長くなってしまうため、カードローンの返済総額は膨らんでしまう。

相談で決まった返済日に返済せず、再び延滞してしまった場合は、悪い印象を与えることになり、かえって強硬手段を取られてしまうことになりかねない。その段階で、信用情報機関に「事故情報」として登録されてしまう可能性も高くなる。

4.カードローンの「おまとめ」をする場合のメリット・デメリット

「おまとめローン」とは借り換え目的の融資が受けられるローン商品であり、一般的なカードローンよりも金利が低く設定されているため、毎月の利息をより安くでき、返済が楽になる。

メリット……返済総額を減らすことができる

金利が高いカードローンから金利が低いカードローンにまとめた場合、金利の差だけ毎月の利息が減り、借入期間(返済期間)が同じなら返済総額は減ることになる。

横浜銀行カードローンの公式サイトには、「おまとめローン」による借り換えシミュレーションが紹介されている。借入期間を5年とした場合の試算を表にまとめた。

借り換え前

借入額 金利 毎月の返済額
A社ローン 90万円 17.8% 2万3,000円
Bクレジットカード分割払い 80万円 14.75% 1万9,000円
合計 170万円 4万2,000円
※横浜銀行の公式ホームページを元に筆者作成

「おまとめローン」で借り換えた後

借入限度額 借入額 金利 毎月の返済額
200万円の場合 170万円 11.8% 3万8,000円
1,000万円の場合 170万円 1.5% 2万9,000円
※横浜銀行の公式ホームページを元に筆者作成

カードローンでは、審査で決定される「借入限度額」によって金利が変わる。ここで紹介した「おまとめローン」では、借入限度額が200万円の場合は毎月4,000円、借入限度額が1,000万円の場合は毎月1万3,000円返済額が減る。

このシミュレーションのように借り入れが複数ある場合は、「おまとめ」することで返済先が一本化されるので、うっかり返済を忘れてしまうなどのミスを防ぎやすくなるというメリットもある。

デメリット……返済期間が長くなる

横浜銀行カードローンのシミュレーションでは、借金を一本化する前と後で借入期間が変わらなかった。しかし、実際は返済できるところまで毎月の返済額を減らすと、完済までの期間が長くなることがある。毎月の返済の負担が軽くなる代わりに、なかなか返済が終わらなくなるのだ。

完済までの期間が長くなると、一本化によって金利と毎月の負担は減っていたとしても、トータルの利息額はかえって増えてしまうケースもある。

横浜銀行カードローンのシミュレーションでは、11.8%の金利で5年で完済する場合、利息を含む総返済額は約226万円だが、7年で完済するとなると総返済額は約251万円に下がる。実に25万円の差だ。

5.カードローンの借金をなくす、債務整理の3つの方法

借金を減らしたり、なくしたりする債務整理の方法には、「任意整理」「個人再生」「自己破産」がある。

どの方法にも共通するメリットは、借金が減額されたり、なくなったりするということ。そして、弁護士に依頼した段階で督促が止まり、一連の手続きが終わるまで返済が不要になることだ。

デメリットは、手続きに時間がかかることだ。早くても3ヵ月はかかり、長い場合は1年以上かかってしまう。そして、信用情報機関に金融事故として記録されるため、5~10年間は新たな借り入れやクレジットカードの申し込みができなくなる。

3つの債務整理の方法について、メリットとデメリットを挙げてみよう。

任意整理――カードローン会社に返済方法を交渉

任意整理は裁判所を介さず、カードローン会社に返済方法を交渉する方法だ。遅延損害金や、延滞が解消された後の返済における利息を減らしてもらうことができる。

・メリット……周囲に知られることなく返済手続きを進めることができる
手続きの窓口が弁護士または司法書士になり、督促の連絡や通知が自宅に来なくなるため、周囲に知られず返済手続きを進めることができる。また、任意整理の場合は官報に自分が債務整理をしたという情報が載ることはない。

・デメリット……返済の負担は継続する
返済を続けることになるので、安定した収入がないと任意整理はできない。また、借金を減らせる額は利息分だけなので、返済の負担が続くことには変わりがない。カードローン会社との交渉は、できれば弁護士や司法書士などの専門家に任せるべきで、その場合は費用がかかる。

個人再生――裁判所を介して借金を5分の1まで減額

個人再生は裁判所を介して、法律に基づき借金を5分の1まで減額する方法だ。手続き後、原則的に3年以内に返済しなければならない。

・メリット……借金の返済額を大きく減らすことができる
任意整理では利息分のみがカットされるが、個人再生では借金を5分1まで減額することができる。また自己破産とは異なり、自宅などの一定の財産を残すことができる。

・デメリット……債務整理したことが周囲に知られる可能性がある
借金を3年間で分割して返済していかなければならないため、安定した収入がないと個人再生はできない。また、官報に住所・氏名が掲載されるので、周囲に債務整理をしたことが知られてしまう可能性がある。

自己破産――すべての財産を処分し、借金は全額免除

自己破産は、裁判所に認められると借金が全額免除される方法だ。自宅などを含むほとんどすべての財産を処分することになる。

・メリット……借金が全額免除になる
任意整理や個人再生とは異なり、借金を完全になくすことができる。借金を返済する必要がなくなるので、無収入でもできることがメリットの一つだ。

・デメリット……財産をほぼ失う
自宅や車などの20万円を超える財産や、99万円を超える現金は処分される。また、自己破産した事実が官報に住所・氏名とともに掲載され、銀行系カードローンでは官報の情報を最長10年間保管する。そのため、10年間は新たな借り入れができなくなってしまう。それ以外のカードローンでも5年間はいわゆる「ブラックリスト」に登録されるため、新たな借り入れはできない。

6.カードローンが返済不能になっても「踏み倒し」はできない

カードローンが返済不能になった場合、催促から逃げ続けることを選択する人もいるかもしれない。しかし、借金を踏み倒すことはできないので、返済が難しいことがわかったら、なるべく早い段階でカードローン会社に相談することが大切だ。

どんなローン会社でも、規約や法律に基づいた対応しかできないため、まずは返済が滞っている理由を率直に伝え、一緒に対応を考えてもらうのがベストなやり方と言えるだろう。

文・モリソウイチロウ(ライター)
 

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