エチオピアにある小さな村「ドルゼ」では、人々が水の確保に苦労しています。

女性や子供たちが毎日何キロもの道のりを歩いて、川で汲んだ水を持ち帰らなければいけないのです。

こうした人々を助けるため、イタリアの建築家アルトゥーロ・ヴィットーリ氏は、空気から飲料水をつくるウォータータワー「ワルカタワー」を開発しました。

これまでにも同様の装置は開発されてきましたが、ワルカタワーの特徴は、発展途上にある現地の人々が簡単に構築できる点にあります。

現地に適用して飲料水を生み出す「ワルカタワー」

クモの巣の結露と同じ原理で遠隔地に飲用水を生み出す「ウォータータワー」
(画像=エチオピアのドルゼ村の人々は水の確保に苦労している / Credit:Warka Water、『ナゾロジー』より引用)

考案されたワルカタワーは、現地の人々がもつ技術と、地元の自然素材を用いて建設できるようになっています。

またコンピュータで作成された構造設計はオープンソース化されているため、世界中の村や集落のニーズに合わせて調整することも可能です。

クモの巣の結露と同じ原理で遠隔地に飲用水を生み出す「ウォータータワー」
(画像=現地に適用できる / Credit:Warka Water、『ナゾロジー』より引用)

そして最初にワルカタワーが建設されたのは、エチオピアの村ドルゼです。

このワルカタワーは、ポリエステル素材のメッシュと、それを支える竹フレームで構成されています。

非常にシンプルな構成であり、空気中の水分が物質の表面に凝縮する現象「結露」を利用します。

蜘蛛の巣に結露した朝露を見たことがあるでしょう。

クモの巣の結露と同じ原理で遠隔地に飲用水を生み出す「ウォータータワー」
(画像=(上)朝露が付いた蜘蛛の巣, (下)ワルカタワーのメッシュ / Credit:(上)Depositphotos, (下)Warka Water、『ナゾロジー』より引用)

同様の現象を利用することで、空気中から飲料水を得ているのです。

さらにこのメッシュは雨や霧からも水を捉えて、タワー下部の漏斗に流し落とせるようです。

クモの巣の結露と同じ原理で遠隔地に飲用水を生み出す「ウォータータワー」
(画像=ワルカタワーが空気中から飲料水をつくる / Credit:Dezeen(YouTube)_Warka Water towers harvest drinkable water from the air | Design | Dezeen(2016)、『ナゾロジー』より引用)

また、このワルカタワーは高さが12mもあるものの非常に軽く、全体で80kgしかありません。

簡単な構造のため、電気工具や足場を使わずに建設可能なのです。

実際、ドルゼ村に建設されたワルカタワーは、たったの1日で完成しました。

クモの巣の結露と同じ原理で遠隔地に飲用水を生み出す「ウォータータワー」
(画像=建設とメンテナンスが簡単 / Credit:Warka Water、『ナゾロジー』より引用)

ちなみに、ワルカタワーの名前の由来は、現地に生育する「ワルカ(学名:Ficus vasta)」という大きなイチジクの木です。

現地での適用を目的としたウォータータワーにはぴったりの名前だと言えますね。

クモの巣の結露と同じ原理で遠隔地に飲用水を生み出す「ウォータータワー」
(画像=ワルカタワーで飲料水を得た人々 / Credit:Warka Water、『ナゾロジー』より引用)

さて、ワルカタワーは2015年にドルゼ村で建設されてからも、バージョンアップを続けています。

そしてこれまでにカメルーンやハイチなどでも最新版のワルカタワーが建設されてきました。

今後もワルカタワーの技術は、「現地の人が自分たちで飲料水を得る手段」として、世界中に広まっていくでしょう。


参考文献

Warka Water towers harvest drinkable water from the air

Arturo Vittori’s Warka Water towers harvest clean drinking water from the air


提供元・ナゾロジー

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