オランダ、ライデン大学などの研究チームは、電波観測によってこれまでで最大の銀河を発見したと報告しました。
その驚異的なサイズは1630万光年に及び、これは私たちの属する天の川銀河の約153倍の長さです。
この天体は、地球から約30億光年の彼方にあるにも関わらず、地上からは月と同等の大きさで夜空に存在して見えるといいます。
この研究に関する論文は、科学雑誌『Astronomy and Astrophysics』への掲載が決定しており、現在プレプリントサーバー「arXiv」に公開されています。
これまでで最大の銀河の発見
今回発見された銀河は、その巨大さから、ギリシャ神話に登場する巨人の名を取って「アルキオネウス(Alcyoneus)」と名付けられています。
アルキオネウスはこれまで人類が見てきた中で最大の大きさを持つ電波銀河です。
電波銀河の中心は、宇宙でもっとも明るい天体とされるクエーサーと同じ活動銀河核と考えられますが、塵などの影響で可視光の強力な光が遮られ、代わりに強力な電波を放っている状態です。
電波は可視光よりも波長が長い電磁波で、塵などの影響を受けにくく遠くまで届き、また通常は発光しない物質でも放つことがあるため、天文学では重要な観測対象となっています。
そのため電波銀河は、遠く離れていても見つけられることが特徴です。
ただ電波は目では見えないため、観測はかなり 特殊なものになります。
今回の発見では、オランダにある低周波アレイ(LOFAR)電波望遠鏡の観測データを解析することで発見されました。
観測されているのは、アルキオネウスの中心にある超大質量ブラックホールが噴射したと考えられる、強力なジェットの残骸です。
ジェットとは、ブラックホールが極方向に対して光速に近い速度で物質を噴射する現象のことです。
これは周囲に豊富な物質が存在し、活発にそれらを吸い込んでいるブラックホールでしか起こりません。
これが確認されたブラックホールは活動状態であると認定され、それは同時に活動銀河の核になっていることも示しているのです。
またジェットの残骸が、どれほどの距離まで広がっているかを見ることで、ブラックホールのサイズや、それを擁する銀河のサイズを推定することができます。
遠い天体は、地球方向の視点以外から見ることができないため、そのサイズを見るときも奥行きなどを知ることができません。
そのため、天文学者はこの銀河の一部しか測定することはできませんが、今回の観測から電波銀河アルキオネウスのサイズは1630万光年であると推定されました。
これは約10万6000光年の大きさを持つ天の川銀河の153倍にあたります。
アルキオネウスの中心にある超大質量ブラックホールは、太陽質量の約4億倍であると考えられています。
また、こうした巨大なジェットの噴射の残骸(ブルーム)は、宇宙の大規模構造の影響を受けて変形していくてと考えられており、未だ謎の多い宇宙の大規模構造を解明する手がかりになることも期待されています。
アルキオネウスはこうした宇宙の大規模構造のフィラメントと呼ばれる枝の1つに存在していると考えられ、周囲を太陽の2400億倍に相当するフィラメント構造に囲まれていると推定されています。
まだ全貌を理解するには情報が不足していますが、研究者たちはこのような電波銀河がどうやって形成されるのか、またもっと巨大な銀河は存在しうるのかを今後明らかにしたいと語っています。
参考文献
Astronomers find largest radio galaxy ever
Largest galaxy yet seen, in radio: Alcyoneus
元論文
The discovery of a radio galaxy of at least 5 Mpc
提供元・ナゾロジー
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