トンガ王国はニュージーランドの北、そして日付変更線のすぐ西に位置する171の島からなる群島です。
このあたりには、「赤い波によって多数の大きな岩が堆積した」という伝説があります。
神戸大学・大学院海事科学研究科に所属するクリストファー・ゴメス氏ら研究チームは、トンガ王国の本島「トンガタプ島」にある巨大岩の調査により、この伝説が真実だったと発表しました。
15世紀に落下した隕石により大津波が発生し、周囲に壊滅的な影響を与えていたと判明したのです。
研究の詳細は、2021年12月20日付の学術誌『Frontiers in Earth Science』に掲載されました。
目次
トンガにある巨大岩を調査する
伝説は本当だった!15世紀、隕石による大津波が発生していた
トンガにある巨大岩を調査する
トンガの歴史は古く、14世紀にはトンガ大首長国(別名:トゥイ・トンガ帝国)として広範囲を統治していました。
ところが15世紀中ごろに重大な危機に陥り、その影響力は失われてしまったようです。
この歴史的な変化の理由は未だ明らかになっておらず、「内政上の混乱を引き起こした何らかの理由がある」と考えられてきました。
そして今回、トンガ王国の本島「トンガタプ島」の現地調査によって、1つの答えが明らかになりました。
調査でまず判明したのは、「過去にトンガを大津波が襲った」という事実です。
これは津波による堆積物が広範囲で発見されたことから明らかになりました。
特に大きな証拠となったのは、写真にある巨大なサンゴ岩です。
この岩は大津波によって運ばれたと考えられており、下にある堆積物や木炭を調べたところ、その時代が15世紀ごろだと判明。
つまりトンガタプ島は、15世紀の大津波によって浸水していたのです。
では、サンゴ岩を運ぶほどの大津波が生じた原因はなんだったのでしょうか?
伝説は本当だった!15世紀、隕石による大津波が発生していた
研究チームによると、「トンガ周辺の地質学的な活動状況(プレート運動、活断層、火山など)からすると、これらが原因で巨大な岩を動かすほどの津波が生じたとは考えられない」とのこと。
一方で、この地域の海底には大きなクレータが存在します。
このことからチームは、隕石の衝突で大津波が発生したと推測。
そして隕石衝突の影響をシミュレーションした結果、最大30mの津波がトンガ大首長国の島々を襲ったと算出しました。
つまり当時勢力を拡大し繁栄を続けてきたトンガ大首長国は、隕石と大津波によって突如壊滅的な影響を受けたのです。
研究チームは、この出来事によってトンガ大首長国の時代が終焉を迎えたと結論付けています。
そしてこの新しい事実は、現在のトンガ王国やニュージーランド、オーストラリアに残っている「赤い波」伝説と一致します。
この「赤い波」とはトンガ語で津波を意味するようです。
以前から「隕石が降ってきた」「赤い波によって多数の岩が堆積した」という伝説が語り継がれてきましたが、今回、科学的手法によってこれら伝説が真実だったと明らかになったのです。
さて今回の現地調査により、これまで謎だった16世紀以前のトンガの歴史的イベントが解明されました。
この結果は太平洋諸島における今後の歴史研究に大きな影響を与えることでしょう。
参考文献
伝説と科学の架け橋 15世紀のトンガ王国を襲った大津波の現地調査から見えること
元論文
Bridging Legends and Science: Field Evidence of a Large Tsunami that Affected the Kingdom of Tonga in the 15th Century
提供元・ナゾロジー
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