繰り返される「悪夢のループ」を止める方法とは？

「誰かに追いかけられる夢」「遅刻する夢」「自然災害にあう夢」など、同じ夢を何度も繰り返し見ることがあります。

これはよく知られた現象で、人類の3分の2が同じ夢を繰り返し見ると報告されているほどです。

では、なぜ私たちは同じ夢を何度も見てしまうのでしょう？

また、この夢に終止符を打つにはどうすればよいのでしょうか？

カナダ・モントリオール大学（University of Montreal）の神経科学者、クラウディア・ピカード・デランド氏は、繰り返される夢の原因と解消法について解説しています。

何度も同じ夢を見るのはなぜ？

一般的に夢は、私たちの感情を整理し、ストレスに対処するのに役立つと言われています。

これは2009年に行われた研究（APA PsycNet, 2009）でも主張されていることです。

夢の中に感情的な問題をあえて組み込むことで、大きなストレスに対処するのです。

そして、こうした目的の夢が繰り返されるということは、そのストレスを夢だけで処理しきれていないのかもしれません。

多くの理論でも、繰り返しの夢は「人生における未解決問題や葛藤に関連している」と説明されています。

実際、悲惨な出来事のトラウマは繰り返される悪夢を生じさせます。

以前に虐待されていたり大きな地震や津波を経験したりすると、時間が経っても心が処理しきれておらず、何度も悪夢を見ることになるのです。

（画像＝繰り返される夢の原因は？ / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用）

また幸福度の低下、不安などが隠喩的に夢で繰り返される場合もあります。

たとえば、「誰かに追いかけられる夢」は、常々誰かに追いかけられることを恐れているからではなく、別のストレスから来ている場合が多いのです。

さらに、睡眠中の生理現象が影響するケースもあります。

私たちが眠っているとき、脳は外界から完全に遮断されているわけではありません。

音・匂いなどの外部刺激や、体内の感覚を知覚し続けているのです。

そしてこれらの知覚が夢に介入し、繰り返される可能性があります。

2018年の研究（Frontiers in Physchology, 2018）は、睡眠中の歯ぎしりや歯の不快感が「歯が抜ける夢」と関連していると報告。

また「トイレが見つからない夢」や「公共の場で裸になる夢」は、夜中の尿意やゆったりとしたパジャマが原因かもしれません。

さて、このように繰り返される夢にはいくつかの原因があると考えられます。

多くの場合それらは不快なので、なんとかして悪夢のループを終わらせたいと感じているでしょう。

そこで次に、繰り返される夢を終わらせる方法について解説します。

繰り返される悪夢を終わらせる方法は確かにあります。

2016年の研究（APA PsycNet, 2016）では、起きている間に悪夢を視覚化し、それを書き換える方法が勧められています。

いつも見る悪夢を頭の中で再現し、その結末をよりポジティブなものに変換するのです。

（画像＝夢の結末をポジティブなものに修正する / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用）

たとえば、「波にのまれる夢」を見るのであれば、波から何とか逃げて助かるストーリーを思い巡らすことができるでしょう。

また、夢だと自覚しながら見る「明晰夢」が解決策になる場合もあります。

明晰夢を見る人は大抵、夢の内容に干渉できます。

繰り返される悪夢の中でも自覚できるなら、夢に対していつもとは異なった反応ができます。

こうしたアプローチを行えば、心の中の処理しきれない問題が解決し、悪夢が繰り返されなくなるでしょう。

とはいえ、繰り返される夢自体が悪いわけではありません。

それは私たち個人の内に秘めた葛藤やストレスの証拠だからです。

夢が繰り返されることで自分の苦悩や願望を自覚・理解でき、解決のために動き出せることもあります。

もし、現在進行形で繰り返される悪夢に悩まされているなら、それはあなた自身から発せられたSOSなのかもしれません。

参考文献

Being chased, losing your teeth or falling down? What science says about recurring dreams