ろくにデータも分析せずに、温暖化のせいで大雨が激甚化していると騒ぎ立てるニュースが多いが、まじめに統計的に検定するとどうなのだろう、とずっと思っていた。

国交省の資料を見ていたら、最近の海外論文でよく使われている「Mann-Kendall検定」の結果があったので紹介しよう。

IPCC報告の論点㊻:日本の大雨は増えているか検定
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

図中で計画降雨とは、「河川整備において、超えることがあってはらない降雨量を設定したもの。 この規模の雨が 降っても氾濫(はんらん)が発生しないように治水対策が進められている。」ということである。

図中の日本地図を見ると、日本列島の殆どの地域は緑色の「定常」であり、大雨の雨量は有意に増えていないことが分かる。(有意に増えている水系はいくつかある。ただしこれと地球温暖化の因果関係があるかどうかは、また、別途検討しなければならない。海流などの長期的な自然変動のせいかもしれない)。

重要なのは、この間、地球温暖化は約1℃進んだとされているが、それにも関わらず、殆どの地域で大雨は有意に増加していなかった、ということだ。

ならば、あと1℃上昇して2℃になるとしても、突然、多くの地域で有意に大雨が増加するとは考えにくい。

国交省のこの審議会では、もっぱらシミュレーションに依拠して将来は大雨が激甚化すると結論しているようだが、この連載で書いてきたように、シミュレーションは問題だらけだ。このような統計分析の方をより重視すべきではなかろうか。

IPCCの報告が2021年8月に出た。1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

文・杉山 大志/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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