熟成時間を所有して「一緒に育てる」感覚を

ーーすでに所有しているので、「これは何年物のお酒だ……」という高級酒のロマンがより自分ごとになりますね。

クリス:そうですね。一緒にお酒を育てるようなイメージでしょうか。

昨年末に発売して9分で完売した「Genesis Cask」(スプリングバンク 1991年)は、小口のNFTを保有している方に対して、20年後にボトリングすることを約束しています。2041年の12月からボトリングがはじまるということです。

20年経てば実物に会える高揚感と、20年物のウイスキーを熟成前の現在の価値での価格で購入できる投資が同時に成立する場となります。

ーー投資目的での購入のみならず、コレクターにとっても絶好のチャンスですね。

クリス:ほとんど手に入らないような希少価値のあるお酒を事前に手に入れることができます。スプリングバンクは91年なので、すでに30年モノ。20年後には50年熟成した価値あるお酒になります。

時間が改ざんできないこともNFTの強みです。唯一性の証明や過去の権利者が誰であったかという情報以外に、NFTでは時間情報も記録できます。蒸留酒にとって「そのお酒が何年物か」の証明はお酒の価値の証明と直結します。これは蒸留酒にNFTを発行する新たな利点ですね。

NFTに関してはまだ手探りな企業も多く「それをNFTで発行する理由って?」と指摘されるアイテムも少なくありませんが、ウイスキーなどの蒸留酒はNFT化することでさらに可能性が広がるように思います。

ーーたとえば「これは80年代の味だ」という郷愁が、“2040年代” といった未来の方向に伸びるのが面白いですね。

クリス:単なる資産としてではなくコレクションとして保有する感覚を楽しんでもらいたいので、現在はNFTのデータとそれに紐づいたデジタル上のカードを提供したり、ウイスキーファン同士が交流できるディスコードコミュニティを運営したりしています。

やはり無形のものなので、価値を実感しやすい工夫をしています。

デジタル移行することで、お酒との距離が変わる

ーー今後の御社の展望について教えてください。

クリス:ひとつはマーケットを安定させることです。現在はウイスキーを小口で提供しているため、供給量が多く異常な価格の高騰などは見受けられませんが、さらなる安定を追求して、マーケットを拡大していきたいと思います。

一次流通はまだまだ伸びるでしょうし、OpenSeaでの売買などの二次流通ももうすぐ解禁する予定です。今後もさまざまなウイスキーを提供できればと思います。

また、私たちの販売システム自体の提供も計画中です。ありがたいことに、企業さんや酒造会社さんなどから多くの問い合わせをいただいています。

ーーコミュニティ運営についての動きはありますか?

クリス:はい。こちらも「所有」を実感するのに欠かせない要素ですから、おっしゃる通り重要です。

ほかのコミュニティをすでに持っているサービスと共同で何かできないかと考えた結果、NFTプロジェクト「Metaani」さんのメタバース上でコラボ樽を作って販売するプロジェクトが進行中です。

ちなみにウイスキーは羽生蒸溜所が手がける一級品です。

クリス:コミュニティの運営・NFTカードを用いた交流は事業の設計段階から用意していました。デジタル上で自分の購入したウイスキーの存在を実感できる取り組みは、今後も創意工夫して取り組んでいきたいと思います。

文・川合裕之/提供元・TECHABLE

【関連記事】
トヨタと日野が北米向けに燃料電池トラックを共同開発、2021年前半にデモ車両
このメルセデスなら手が届く? ラストマイル用折りたたみ電動キックスクーターを発表
赤ちゃん向けウェアラブル体温計を開発したiWEECARE
無料公開! 総務省が「社会人のためのデータサイエンス演習講座」を再開講
MITがダイヤモンドをひずませて金属に変える技術!