ドイツのエバーハルト・カール大学テュービンゲン(Eberhard Karls Universität Tübingen)とポツダム大学(Universität Potsdam)の天文学グループが新しいタイプの珍しい星の発見を報告しました。
その星は、通常核融合の結果としてコアに存在するはずの重い元素(炭素や酸素)が表面にあり、中心部にヘリウムのコアがある、まるで中身と外側が裏返ったような状態だったというのです。
この原因について、並行して発表されたアルゼンチンの国立ラプラタ大学 (Universidad Nacional de La Plata)の研究により説明されています。
それによると、二つの白色矮星の融合が、まるで裏返ったかのような不思議な構造の星を生み出したというのです。
この研究の詳細は、2つの異なる研究グループより発表されており、どちらの論文も2022年2月に科学雑誌『王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society Letters)』に掲載されています。
構造が裏返しの星の秘密
通常の構成は核融合によって輝いていますが、その燃料は宇宙にもっともありふれた軽い元素の水素です。
水素の核融合によりヘリウムが作られることで、恒星の内部には徐々にヘリウムの核が作られていきます。
重い星の場合、さらに核融合が進み、そこから酸素や炭素などの重い元素が融合されていきます。
そのため、通常星では表面に水素やヘリウムの軽い元素があり、中心部のコアに酸素や炭素の重い元素が存在する玉ねぎのような状態となります。
しかし、今回発見された星は、まるでこの構造が裏返ったかのように、星の表面に炭素や酸素の重い元素があり、中心部にヘリウムのコアがある状態だったというのです。
なんとも不思議な星が観測から発見されましたが、別の大学の研究チームがこの不思議な構造の星の由来に関する分析を、同時に発表したのです。
アルゼンチンのラプラタ大学から発表されたその研究によると、この星はもともと白色矮星の連星であり、二つの星の接近により、片方の星がコアを含めて潮汐力によって破壊され、連星のもう片方に吸い取られたことで生まれたといういうのです。
こうして、本来コアにあるはずの酸素や炭素が表面を覆い、コアはヘリウムという、特殊な珍しい天体が誕生したのです。
この形成に関するより正確なモデルを作るためには、さらなる観測を行わなければならないと研究者は話しますが、これは連星の特殊な進化を理解するための新しい手掛かりとなりそうです。
参考文献
Astronomers observe a rare stellar wedding
Logran explicar las características de dos grupos de estrellas exóticas
Rare ‘upside-down stars’ are shrouded in the remains of cannibalized suns
元論文
Discovery of hot subdwarfs covered with helium-burning ash Get
An evolutionary channel for CO-rich and pulsating He-rich subdwarfs Get
提供元・ナゾロジー
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