パトリックの退場、大島僚太のノーファウル。VARはどこまで介入すべきか
(画像=VARのモニター 写真:Getty Images、『Football Tribe Japan』より 引用)

VARの活用法に疑問

これらの場面において、主審だけを責める気はない。前提として、サッカーにおいて主審を含む審判は間違えることがあると考えている。審判の質がどうこうというものではなく、人間の目には限界がある。どれだけ優れた主審でも、広いピッチの上で起こった事柄すべてを適切に判断することは不可能で、だからこそ副審が配置されており、さらにVAR(ビデオアシスタントレフェリー)が導入されたはずだ。

2つの事例の主審の位置取りを確認しても大きな問題があったようには見えないし、シンプルに主審の位置からはパトリックにはレッドカードを提示すべき、大島はノーファウルと感じられたのだろう。だがスタンドや画面を通して観ていた人の多くは、異なる印象を持った。

そういう時こそVARがサポートすべき場面だ。VARには「最小限の干渉で最大の利益を得る」という哲学が存在しているが、今回の2つの事例はどちらも「退場かどうか」という重大な事象に当てはまっている。VARが介入することは可能だった。

しかし、パトリックの場面では主審が耳に手を当てるしぐさをしVARが事象をチェックしていることがわかるが、オンフィールドレビューは行われず。明本が腕を引っ張られた場面にいたっては、そのチェックさえ行われなかった。この間の主審とVARとのやりとりはわからないため推測の部分もあるが、今回の2つの事象では主審以上にVARに問題があったのではと考えている。

「激しくて、フェアで、エキサイティングな試合」を本当に求めるのならば、明本のシーンについてもチェックを行うべきだった。その後レビューが必要だと感じれば、主審にレビューを提案することになる。パトリックの場面では提案が行われていた可能性もあるが、様々な角度から、何度も観ることのできるVARはもう少し出すぎてもいいのではないか。

もちろん最終的な判断を下すのは主審だ。提案を受けたとしても、オンフィールドレビューを行うかは主審次第だし、オンフィールドレビューを経てあらためてどういった判定をくだすかも主審次第だ。

今後期待したいこと

VARがフィールドの審判員のサポート役ということは周知のことであり、対象の場面にのみ介入するものだと認識している。だが、今回の2つのシーンに関しては介入の対象であり、かつ有識者を含む非常に多くの人が違和感を覚えるような事象であった。

こういった場面では主審が見えていなかった、見えにくかったものをあらためて映像で確認してもらう。そのうえで主審の主観で判定してもらう。主審が間違っているかを判断するものではなく、主審に提案し、援助をする。ある程度融通をきかせてそれを行うことは、選手やサポーターの納得感につながることはもちろん、主審本人にとってもメリットとなるのではないだろうか。

VARが導入されて、まだ2年目のシーズンが始まったばかり。少しずつ改善されていくことを願っている。

提供元・Football Tribe Japan

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