(3)宇宙資源と国際ルール

米国とルクセンブルクの動きから、2017年には国連が宇宙資源のあり方を重要議題のひとつとして設定し、国際的な議論も行われるようになりました。ここでは、宇宙資源の利用に関する「ハーグ宇宙資源ガバナンスワーキンググループ」を取り上げます。

ハーグ宇宙資源GWとは?

米国が2015年宇宙法を制定した翌年2016年、宇宙資源開発の国際ルールのあり方を検討していく、ハーグ宇宙資源ガバナンスワーキンググループ(The Hague International Space Resources Governance Working Group
,以下ハーグGW)が発足しました。

GWの名称にも入っている「ハーグ」とは、オランダの北海沿岸部に位置する、デン・ハーグという国際司法裁判所をはじめ国際刑事裁判所や化学兵器禁止機関などの国際機関が多数置かれる都市で、「平和と司法の街」と呼ばれています。また、会合はオランダのライデン大学で開催されました。国際宇宙法において世界的に権威のある大学です。

このハーグGWには、オランダ王国外務省を議長に、研究機関や宇宙機関、関連企業など17ヶ国29組織が参加しています。日本からは月面資源探査を目指しているispace社がメンバーとして、オブザーバーとして宇宙法の研究を行なっている、西村あさひ法律事務所が参加しています。

2016年4月の1回目に始まり、2017年9月に4回目の会合を終え、宇宙資源開発を促進するための国際ルールの草案に合意するとともにこれを公表しました。

草案では「民間企業を含めた宇宙資源の開発者に宇宙資源に対する権利が確保されること」「宇宙資源開発に関するビジネスの発展を妨げることがないよう柔軟に設計すべきであること」といった内容を含んでいます。

また宇宙資源開発関係者間の利害関係の調整を図る観点から、各国が現場におけるセーフティーゾーンの設定や開発における優先権の登録を可能にするべきであるという画期的な内容も記載されています。

宇宙資源と探査のこれから

ハーグGWは草案を作成・公開した2016〜2017年を第一フェーズとし、現在は第二フェーズとして、草案に対して寄せられたパブリックコメントに対する審議が行われています。2019年も引き続き会合が開催されるとみられており、今後の動向も注目されています。

また、はやぶさ2に続いて、NASAの探査機OSIRIS-RExはすでに小惑星ベンヌに到着していて、サンプルリターンは2023年の予定です。

さらに、JAXAは昨年2018年に、フランス国立宇宙研究センターとドイツ航空宇宙センターとともに、火星衛星フォボスおよびダイモスのサンプルリターンを目指す計画に参画することを発表しました。

同プロジェクトの目的は科学的利用ですが、技術が確立されることによって、今後宇宙ベンチャー企業による採掘や商業利用も勢いを増すのではないでしょうか。
日本でも昨年から宇宙資源に関する法整備について有識者会議が行われています。
小惑星探査を引率する国としての姿勢が、今後問われるのではないかと考えられます。

提供元・宙畑

【関連記事】
衛星データには唯一無二の価値がある。メタバース空間のゼロ地点を作るスペースデータ佐藤さんを突き動かす衝動とは
深刻化する「宇宙ごみ」問題〜スペースデブリの現状と今後の対策〜
人工衛星の軌道を徹底解説! 軌道の種類と用途別軌道選定のポイント
オープンデータ活用事例27選とおすすめデータセットまとめ【無料のデータでビジネスをアップデート! 】
月面着陸から50年!アポロ計画の歴史と功績、捏造説の反証事例