忽那賢志氏の記事が炎上している。彼は次のグラフを出して「オミクロンの死者は過去最大でデルタより多い」というのだが、それは本当だろうか。
忽那氏は厚労省の新型インフルエンザQ&Aを引用して「インフルエンザで1年間の間に亡くなる方と同じ数の人が、新型コロナでは1日から数日の間に亡くなっている」という。そこにはこう書かれている。
国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214人(2001年)~1818人(2005年)です。
ところがQ&Aでは、その後にこう続くのだ。
また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されています。
「コロナ死者数」は水増しされている
インフルエンザは5類感染症なので、コロナのように全数検査はしない。病院に来てインフルと診断されて死んだ患者を集計したのが2005年で1818人だが、これは全体数ではない。それを推定したのが超過死亡数である。
国立感染症研究所の推定によれば、次の図のように2005年の超過死亡数は1.5万人である。これは全死因の超過死亡数だが、ほとんどは感染症、特にインフルによるものだ。
コロナの死者は2020~21年の2年間で約2万人だから、インフルより少ない。しかもこれは死んだときPCR陽性だった人をすべて集計した速報値で、オミクロンでは70歳以上が90%を占める。
その死因をくわしく調べて死亡診断書に「コロナが直接の死因」と書かれたのは、大阪府の報告書によれば、死亡例445例のうち271例(6割)だった。
これも呼吸器疾患による死亡は少なく、心不全・腎不全などの基礎疾患が悪化して死亡したケースが多い。人工呼吸の実施件数は次の図のように全国で390件で第5波より少なく、重症者数は純減に転じている。
要するにコロナ死者が増えた原因は、オミクロンの感染力が強いために、持病の悪化で死んだ人の中でコロナ陽性が増えたということなのだ。検査陽性者数は2月上旬でピークアウトしたが、死者の増加は2~3週間ずれるので、2月いっぱいがピークだろう。人口統計に記載されるコロナ死者数は死亡診断書ベースなので、速報値の半分ぐらいになるだろう。
文・池田 信夫
文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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