FIREを目標に仕事や資産運用に励む若者は相変わらず多いようです。

FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった言葉で、経済的自立と早期リタイアを目指すライフスタイルです。2010年以降広がってきたもので、雑誌などでも特集が組まれるくらい注目されています。

「FIREブーム」は昭和バブル期のフリーターブームに似ている
(画像=jp_3d/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

コツコツと仕事をして節約して作り出した資金を投資に回して資産形成する。その考え方自体は間違ってはいません。

例えば、40歳で1億円の資産を手に入れたとして、FIREして好きなことだけをして生きていくことは可能なのでしょうか?

もし、1億円を年平均5%で運用できれば、年間500万円のリターンが見られます。これだけあれば、生活するのには不足のない金額と思うかもしれません。

しかし、現在の日本で安定的に年間5%のリターンを確保できる投資対象はほとんどありません。

株式の配当は将来の企業業績に左右されますし、債券は低金利下で利回りが低下しています。不動産投資も、立地を間違えると、将来の空室リスクや家賃下落リスクに巻き込まれます。

また、長生きリスクもあります。平均余命がこれからも伸びていけば、リタイアした後に必要となる資金が、当初想定した額より増えていきます。

生活するためのお金が足りなくなれば、再び仕事に戻らなければいけません。といっても仕事のブランクが長い人のできる仕事は限られています。

それまでやっていた仕事以上に、自分が本当のやりたくない仕事をやらざるをえなくなる可能性が高くなってしまうのです。

このように考えると、FIREというのはブームに乗せられて安易に真似するものではなく、長期的な計画をしっかり立てた上で、かなりの覚悟を持ってやるべきものと思います。

1990年代前半の昭和のバブル期には、フリーターブームがありました。会社を辞めて自由になり、組織に縛られない生活に憧れる若者がたくさんいました。

しかし、その後雇用環境は激変し、スキルを持たないフリーターの人たちは非正規労働者と呼ばれるようになり、生活環境は悪化してしまいました。

今のFIREブームは、私にはフリーターブームと重なってみえます。

雇用環境が激変しフリーターブームが終わったように、金融マーケットの投資環境が激変すれば、FIREブームも終焉するのではないかと思っています。

文・内藤 忍/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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