目次
躯体と設備に分けた場合、分けなかった場合
・躯体と設備に分けない場合
・躯体と設備に分ける場合
・シミュレーション結果
・設備の割合に関連する裁決事例
不動産投資の減価償却は複雑。専門家に聞こう
躯体と設備に分けた場合、分けなかった場合
次の物件を購入したとして、減価償却費を「建物だけで計上した場合」、「建物本体の躯体と、附属する建物附属設備で分けて計上した場合」の金額シミュレーションです。
【例:築16年の不動産価格2,200万円の中古マンション】
- 物件価格:2,200万円(土地価格1,100万円、建物価格1,000万円、消費税100万円)
- 築年数:16年
- 2021年1月から不動産経営事業を開始
躯体と設備に分けない場合
物件価格 | 22,000,000円 |
---|---|
消費税 | 1,000,000円 |
建物価格 | 10,000,000円 |
土地価格 | 11,000,000円 |
土地割合 | 50% |
土地取得価格 | 11,000,000円 |
躯体100% | 11,000,000円 |
設備0% | 0円 |
築年数 | 16年 |
償却年数(躯体) | 34年 |
減価償却費 | 330,000円 |
償却月 | 12カ月(1月から事業開始) |
※固定資産税・都市計画税等の清算金を考慮しません
躯体と設備に分ける場合
物件価格 | 22,000,000円 |
---|---|
消費税 | 1,000,000円 |
建物価格 | 10,000,000円 |
土地価格 | 11,000,000円 |
土地割合 | 50% |
土地取得価格 | 11,000,000円 |
躯体80% | 8,800,000円 |
設備20% | 2,200,000円 |
築年数 | 16年 |
償却年数(躯体) | 34年 |
償却年数(設備) | 3年 |
減価償却費(躯体) | 264,000円 |
減価償却費(設備) | 734,800円 |
償却月 | 12カ月(1月から事業開始) |
※固定資産税・都市計画税等の清算金を考慮しません
設備の法定耐用年数は15年で築年数が16年のため、耐用年数を割り出す計算式としては、「2)法定耐用年数を過ぎた物件の耐用年数=法定耐用年数×0.2」を用います。耐用年数は3年となり、3年間で減価償却費を計上することとなります。
シミュレーション結果
不動産を2021年1月に購入し、令和3年度の確定申告を2022年に行う際、建物と設備を一体にすると減価償却費は「330,000円」になるのに対し、建物と設備を分けると減価償却費は「998,800円」になり、1つの物件で70万円ほど経費が多くなります。複数物件所有する際にも建物と設備を分けることで、その差はますます大きくなります。
年収2,000万円超で所得税と住民税合わせた税率が50%の人にとっては、70万円ほど経費が増えることで、約35万円(700,000×50%)の節税効果があります。
建物のみで長期間減価償却するよりは、法定耐用年数が15年の設備費で減価償却する方が、加速度的に償却費が計上できます。
なお、躯体と設備に分けた場合は、設備の減価償却計上が終わると、その後は躯体(建物本体)の減価償却費計上のみとなり、それ以降は土地と建物で躯体と設備を分けない場合よりも減価償却費は少なくなります。
設備の割合に関連する裁決事例
税務上、躯体と設備を8:2に分けて計上すると紹介しましたが、過去には設備の割合について建物本体と建物附属設備の割合も含めて争点となった国税不服裁判所の裁決事例(平12.12.28裁決、No.60)があります。
第一の争点は土地と建物の割合に関することですが、建物の割合を建物本体と建物附属設備と区分する必要性についても触れられています。関連箇所のみ抜粋します。
【事案の概要】
土地と建物(建物本体と建物附属設備を合わせたものをいう)並びに建物本体と建物附属設備の取得価額の区分を争点とする事案
【認定事実】
- 建物本体と建物附属設備の工事費の割合は、建築主が保存している工事請負契約書から算出ができた
【判断】
- 鉄筋鉄骨造りのマンションの場合には、建物本体及び建物附属設備の減価償却費の計算は、それぞれ別個の耐用年数により計算する必要がある
- 購入した建物本体及び建物附属設備については、それぞれの購入代価等が売買契約書等で区分して明らかにされている場合は、その区分されているところの購入代価等によることとなるが、その購入代価等が区分して明らかにされていない場合には、建物の取得価額を合理的な方法により建物本体及び建物附属設備に区分計算する必要がある
- 工事費の割合を中古資産の取得時における建物本体及び建物附属設備の割合により補正したうえで、建物の取得価額をあん分する
この判例では、新築時の建物本体と建物附属設備の工事費の割合が保存されていたことから、中古不動産として補正されたうえ、建物と設備の割合は72.91:27.09と判断されています。
参照:平12.12.28裁決、裁決事例集No.60 157頁 |裁決事例集 No.60|| 公表裁決事例 | 国税不服審判所
不動産投資の減価償却は複雑。専門家に聞こう
減価償却は、まず概念を理解するまでに時間がかかります。そして、購入した物件の建物割合や耐用年数により、減価償却費の計算も複雑です。わからない場合は確定申告時に税務署に相談するか、事前に税理士に相談するなど、プロに確認することが大切です。
監修: 中井哲也 (中井哲也公認会計士税理士事務所 公認会計士・税理士)
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。
提供元・RENOSYマガジン
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