野生のハトは都市部にも適応し、さまざまな場所を糞だらけにします。
そのせいで、建物の所有者は何度も清掃しなければならず、屋上のような場所では、そもそも清掃すら困難です。
では、ハトを上手に追い払う方法はあるのでしょうか?
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)に所属するファブリツィオ・シアーノ氏ら研究チームは、自律型ドローンを利用して屋根のハトを追い払うシステムを構築しました。
ドローンが究極の「カカシ」として利用できるかもしれません。
研究の詳細は、2021年12月20日付で科学雑誌『IEEE Explore』に掲載されました。
屋根のハトを追い払う自律型ドローンシステム
「ドローンを使ってハトを追い払う」と聞くと、多くの人は、「ドローンを常時パトロールさせて、ハトを追い払う」ことを想像するかもしれません。
しかし研究チームの指摘によると、そのような方法は現実的でありません。
なぜならドローンが巡回・監視するには屋根が広く、消費する電力も大きいからです。
そこでチームは、高解像度のズームカメラを搭載した基地局を設置することにしました。
まずカメラだけを使って、屋根にいるハトを発見するのです。
実際、21日にわたってテストしたところ、ハトの居場所と数を正確に検出できました。
その次に、ドローンの出番です。
カメラがハトを発見するたびに、その情報を自律型ドローンに伝え、ハトが群がっている場所に送るのです。
ドローンは近づいてホバリングすることで、ハトを追い払うことに成功しました。
テストを行った5日間では、ドローンの出動回数が合計55回にもなったとのこと。
その結果、ハトが屋根に留まる時間を大幅に短縮させるとともに、そもそも屋根に着地する回数を減らすこともできました。
通常、ハトの群れは屋根の上で2時間以上過ごしますが、ドローンを使うことによって、わずか数分にまで短縮できたのです。
さらにこの新しい方法なら、ドローンの電力浪費が少なく、効率的な運用を続けられます。
自律型ドローンは、ハトが屋根に来たときだけ作動し、確実に追い払ってくれる「究極のかかし」なのです。
とはいえ、この自律型ドローンシステムは、国によっては違法(人間の監視が必要なため)です。
今回のテストでは研究チームが監視していましたが、実際の運用に移行するためには、いくらかの調整が必要でしょう。
また研究チームは、鳥類学者と協力することで、このシステムの効率アップが可能だと考えています。
街をきれいに保つためのドローン技術の進展に、今後も期待です。
参考文献
Autonomous drones may be the ultimate scarecrows … for pigeons
Rooftop Drones for Autonomous Pigeon Harassment
元論文
Autonomous Detection and Deterrence of Pigeons on Buildings by Drones
提供元・ナゾロジー
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