バックアップ費用を含めると再エネは火力や原子力よりはるかに高い
しかし電力が自由化され、再エネが主力電源になったら、そうは行かない。電力会社の送電部門は別会社になり、送電量と価格は電力広域的運営推進機関が決める。自由化された電力会社(発電部門)は供給責任を負わないので、採算のとれなくなった火力は閉鎖する。
それがいま起こっていることだ。あわてた資源エネルギー庁は「閉鎖する火力は報告せよ」という行政指導をしているが、寄生虫がその生命を維持する固定費を負担しない歪んだ料金体系では火力の閉鎖は止まらない。
再エネの稼働率は約20%だから、残りの80%の悪天候の時間を埋める方法は、基本的には蓄電かバックアップ電源しかない。蓄電池のコストは発電コストの数百倍であり、水素やアンモニアは天然ガスの10倍以上のコストがかかる。
だから蓄電コストを含めると、再エネ100%のコストは69~95円/kWh(今の家庭用電気料金の4~5倍)にのぼる。2050年カーボンニュートラルを再エネだけで実現すると、統合費用を含めた電気代は4倍以上になる、というのがエネ庁の有識者会議で発表されたRITEの試算である。
現実にはCO2排出ゼロどころか、天然ガスの供給がちょっと落ちただけで、今のようなパニックが起こる。「2050年カーボンニュートラル」を本当に実行したら、さらに深刻な第2の石油ショックが起こるだろう。
日本でも多くの火力発電所の採算がとれなくなって退役したので、今年の冬は計画停電が必要になるかもしれない。そしてまた多くの新電力の経営が破綻するだろう。寄生虫が宿主を食いつぶすと、寄生虫も死んでしまうのだ。
文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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