4年に1度のビックイベント「冬季オリンピック」が、今まさに北京で開催されています。
雪上での熱戦が連日繰り広げられていますが、テレビ中継を見ていると、競技場の外に雪が積もっていないことに気づいたかもしれません。
1月29日に撮影された衛星写真を見ても、競技場だけに雪が積もっている様子がはっきりと分かります。
実は今回のオリンピックでは、競技フィールドのほぼ100%が人工雪なのです。
目次
「白くない」北京オリンピック会場の衛生写真
人工雪の利用と将来の課題
「白くない」北京オリンピック会場の衛生写真
2022冬季オリンピックの開催都市である北京はアジア屈指の世界都市であり、南以外は山に囲まれています。
その山々がつくりだすスロープは、スキーやボブスレー、スノーボード、スケルトンなど、冬季オリンピックの競技に最適です。
今回のオリンピックは、上記の3Dマップが示すように、北京(Beijing)ゾーン・延慶(えんきょう、Yanqing)ゾーン・張家口(ちょうかこう、Zhangjiakou)ゾーンからなる3つの会場で行われています。
北京ゾーンには、開会式・閉会式が行われる国家体育場があり、スケートやアイスホッケー、カーリングもこのゾーンで実施されます。
また張家口ゾーンでは、バイアスロンやクロスカントリースキーが、延慶ゾーンの山々では、ボブスレーやスケルトン、アルペンスキーが行われます。
1月29日に撮影された延慶ゾーンの衛星写真を見ると、使用されるコースが白く映っていますね。
逆にコース以外の場所では乾燥した岩山がはっきりと確認でき、雪がほとんど積もっていないのが分かります。
それもそのはず、この地域は2月でも少量の雪しか降らない場所なのです。
ですから今回の北京オリンピックには、人工雪が採用されています。
競技に必要なほぼすべての雪を、人工的に作り出しているのです。
テレビ中継を見たとき、コースにだけたくさんの雪があるのはこれが理由だったのです。
では、北京オリンピックの要である人工雪は、どのように作られたのでしょうか?
人工雪の利用と将来の課題
北京オリンピックの人工雪は、主にイタリアの企業「TechnoAlpin」によってつくられました。
コースを完成させるには、少なくとも120万立方メートルの人工雪が必要だと言われています。
その膨大な量は、同社の提供する300機以上の人工降雪機によって生み出されました。
ちなみに人工雪と天然雪では、組成がいくらか異なります。
人工雪は天然雪に比べて、含まれている空気の割合が少ないので、どうしても硬くなってしまいます。
そのため、転倒した際のダメージが大きいというデメリットがあるようです。
しかし人工雪ならではのメリットもあります。
世界中どこでも、ほぼ同じ条件の雪をつくりだすことができるのです。
逆に天然雪だと、そうはいきません。
天然雪の特徴は、天候に大きく左右されてしまうからです。
たとえば、場所やタイミングによって、べったりと湿った雪になることもあれば、さらさらとしたパウダースノーになることもあります。
スキーなどの競技においては、滑りに大きな違いをもたらすでしょう。
また将来を考えると、私たちは好みにかかわらず、オリンピックで人工雪を選択せざるをえないかもしれません。
2022年1月にオンラインで公開された論文(Current Issues in Tourism, 2022)によると、「過去半世紀に冬季オリンピックを開催した21都市のうち、今世紀末までにウィンタースポーツに適した気候を維持しているのは、1カ所だけ」だというのです。
地球温暖化による影響は大きく、ほとんどの国が人工雪に頼らなければならなくなるかもしれません。
今回のオリンピックで話題になった人工雪は、世界中の人々が抱える将来の問題でもありました。
冬季オリンピックを楽しみ続けるためにも、地球温暖化の問題を見逃すことはできないのです。
参考文献
A Satellite View of 2022 Olympic Terrain From NASA
ALL THE SNOW AT THE BEIJING WINTER OLYMPICS IS ARTIFICIALLY MADE
提供元・ナゾロジー
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