ドローン技術の進展を見ると明らかなように、近年、世界中で無人航空機の開発が行われています。
これまで良く耳にしたのは小型のドローンの無人機でした。しかし現在は大型の航空機に自律性を付与することにも力がそそがれているのです。
そして2022年2月5日、アメリカの航空機開発会社「ロッキード・マーティン」は、軍用ヘリ「ブラックホーク」を無人飛行させることに成功しました。
自律飛行システムを備えたブラックホークが、30分の試験飛行の間で、離陸・飛行・着陸のすべてを人間の力を借りずに完遂したのです。
目次
ブラックホークの完全無人化に成功
危険地帯への物資輸送や人命救助に利用できる
ブラックホークの完全無人化に成功
軍用ヘリ「ブラックホーク」の無人飛行試験には、国防高等研究計画局(DARPA)が協力しています。
DARPAが開発した自律飛行システム「ALIAS(AIrcrew Labor In-Cockpit Automation System)」が搭載されているのです。
ALIASがブラックホークに搭載されたのは、今回が初めてではありません。
これまでにもパイロットが搭乗している状態で、数々のテストが行われてきました。
しかし、「パイロットのバックアップがある状態」では、ALIASの自律性を完全に証明するものとはなりません。
そこで今回初めて、完全無人のブラックホークを使って、離陸から着陸までの一連の自律飛行を試すことに。
そして2月5日から始まった飛行テストの結果、30分の完全無人飛行を成し遂げました。
また、この飛行試験では、都市部の飛行を想定して、さまざまな建物(シミュレーション上)を避けて飛ぶよう指示されました。
それでも無人ブラックホークは、リアルタイムで正確なルートを導き出し、ミッションをクリアしたのです。
この試験によりALIASは、従来の自律飛行システムのような「パイロットのサポート」だけにとどまらず、「パイロットの代わり」になることを証明しました。
では軍用ヘリの無人化は、今後どのように利用されていくのでしょうか?
危険地帯への物資輸送や人命救助に利用できる
従来の自律飛行システムのほとんどは、パイロットのアシスタントとして活躍してきました。
そのため簡単なタスクはこなせますが、複雑で想定外の事態には、必ず人間が対処しなければいけませんでした。
しかし飛行試験で証明されたように、ALIASの自律性能は「パイロットの代わりになる」レベルです。
通常の操縦から緊急事態に至るまで、すべてALIASが行えるのです。
この事実は、遂行できるミッションの幅を大きく広げます。
実際、テストパイロットのベンジャミン・ウィリアムソン氏は次のように述べました。
「パイロットは、任務のどの時点でも、自律モードと操縦モードを自信をもって変更できます」
例えばパイロットは、操縦をALIASに任せることで、機械操作よりもミッションの管理に集中できるでしょう。
また、状況によってはALIASの操縦がパイロットを凌駕します。
視界の悪い場所で自律モードに切り替えれば、ALIASがさまざまなセンサーを使って適切にナビゲートしてくれるのです。
さらに完全な無人機としても利用できると考えられます。
パイロットを危険にさらさず、危険地帯での物資運搬や人命救助が可能になるのです。
ただし多くの人が感じているように、大きな懸念点もあります。
完全な無人機に武器を搭載すれば、「無人殺戮兵器」になりえるのです。
今後、無人ブラックホークがどのように用いられるか注目できるでしょう。
参考文献
Safe, Reliable, and Uninhabited: First Autonomous BLACK HAWK® Helicopter Flight
Fully autonomous Black Hawk helicopter takes to the skies without a pilot for the first time: Could now be used in warzones
提供元・ナゾロジー
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