血液中のLDL(悪玉)コレステロールが増えて血管内にたまると、動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすおそれがあります。

健康診断で指摘され、大豆製品などの機能性食品を意識して食べるようにしている人もいるでしょう。

では、こうした食事で本当にコレステロール値は下がるのでしょうか?

金城学院大学 生活環境学部に所属する白井 禎朗(しらい よしろう)氏ら研究チームは、大豆料理などを従業員食堂に取り入れ、それら機能性食品がコレステロール値にどの程度影響をあたえるのか調査しました。

その結果、従業員が大豆料理を1回頼むごとに、コレステロール値が低下すると判明。

研究の詳細は、2022年1月31日付の学術誌『Food & Function』に掲載されました。

目次

  1. 機能性食品を従業員食堂に取り入れる
  2. 大豆製品と大麦ごはんは1回の摂取ごとに効果がアップ!

機能性食品を従業員食堂に取り入れる

臨床試験により、大豆製品、大麦、高カテキン緑茶などの機能性食品が心血管代謝値(BMI、収縮期血圧、LDLコレステロール、中性脂肪など)を改善すると分かっています。

しかし、実生活での効果は十分に検証されていません。

そこで研究チームは、トヨタ自動車およびその関連会社の協力のもと従業員食堂に大豆製品、大麦ごはん、高カテキン緑茶を取り入れ、摂取した個人の数値がどのように変化するか調査することにしました。

機能性食品の提供が開始されたのは2019年7月であり、890名の男性が実験に参加。

提供開始される前に行われた1回目の健康診断の結果と、2019年10月~2020年9月に行われた2回目の健康診断の結果を比べました。

社食で大豆料理を一回頼むごとにコレステロールが下がる
(画像=社食を利用して大豆料理の効果を調査 / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

従業員食堂はカフェテリア方式で運営されており、参加者は自分で好きなものを選んで食べることができます。

個人ごとに大豆製品、大麦ごはん、高カテキン緑茶をどれだけ摂取したかカウントできるため、「個人の変化」や「食品ごとの効果性」を知ることができるでしょう。

ちなみに機能性食品の効果は、食堂の卓上にポップ形式で提示されました。

では、自分の意志で機能性食品を選んで食べた人たちには、どんな効果がもたらされたのでしょうか?

大豆製品と大麦ごはんは1回の摂取ごとに効果がアップ!

12週間で機能性食品を摂取した回数を調べた結果、大豆製品と大麦ごはんには確かな効果が見られました。

社食で大豆料理を一回頼むごとにコレステロールが下がる
(画像=追跡時の 12 週間前からの機能性食品の摂取回数と心血管代謝値の変化量との関連 / Credit:白井 禎朗(金城学院大学)ら_英国王立化学会誌「Food & Function」にて研究成果が公表(2022)、『ナゾロジー』より 引用)

まず大豆製品を1回食べると、LDLコレステロールが0.16mg/dL低下すると判明。

グラフを見ると、摂取回数が多ければ多いほどコレステロールの数値が下がると分かります。

また大麦ごはんを1回食べると、収縮期血圧(いわゆる上の血圧)が0.11mmHg、ヘモグロビンA1c(血糖値の平均値と考えられる)が 0.003%低下していました。

こちらも摂取回数が多ければ多いほど数値が下がると分かりますね。

ちなみに高カテキン緑茶の効果は表れませんでした。

社食で大豆料理を一回頼むごとにコレステロールが下がる
(画像=大豆製品と大麦ごはんを1回食べるごとに、心血管代謝値が改善する / Credit:白井 禎朗(金城学院大学)ら_英国王立化学会誌「Food & Function」にて研究成果が公表(2022)、『ナゾロジー』より 引用)

今回の研究から、大豆や大麦などの機能性食品の摂取が、確かに心血管代謝値を改善すると分かります。

「たまに食べたところで意味はない」と考えるのではなく、「食べる回数が1回増えるごとに、効果がアップしていく」と考えるべきです。

また「機能性食品の摂取を意識させるポップ」によって健康を促進させられる、とも考えられます。

掲示内容に促されて大豆製品や大麦ごはんを選択する頻度が増えるなら、その人の健康は確実に改善されるのです。

当然、この効果は食堂以外にも適用できるでしょう。

機能性食品の効果を、冷蔵庫などの目の付くところに貼っておくなら、自然と摂取回数が増え、健康が改善されていくはずです。

コレステロールが気になる方は、ぜひ大豆食品の摂取を意識してみてくださいね。

参考文献
英国王立化学会誌「Food & Function」にて研究成果が公表
元論文
Association between functional foods and cardiometabolic health in a real-life setting: a longitudinal observational study using objective diet records from an electronic purchase system

提供元・ナゾロジー

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