上空400kmを周回する巨大な実験施設、国際宇宙ステーション(ISS)──

中国が宇宙ステーションを構築する以前は、運用が続く唯一の有人滞在拠点であり3000件以上の科学実験が実施されてきました。

一方、ISSは老朽化が進んでおり、ポストISS時代の検討が急がれています。

アメリカは民間企業による宇宙ステーション構築を支援しつつ、2030年までISSの運用を延長した意向を発表。この動きを受けて、日本においても継続参加の検討が本格的に始まりました。

これまでの経緯や日本の意思決定の論点と流れをまとめます。

2025年以降の地球低軌道活動はどうなる?米国はISSの運用を延長。日本は夏頃に政府が方針を決定する見込み
(画像=Credit : NASAl、『宙畑』より引用)

ISS誕生から2024年までの運用継続合意まで

まずは、ISS構築と運用の歴史を振り返ります。

ISSは1998年に最初のモジュールが打ち上げられ、軌道上での組み立てが開始。40数回に分けてモジュールや部品が打ち上げられ、2011年に完成しました。

当初ISSの設計寿命は2016年までとされていて、参加国間で運用の継続が合意されていたのは2015年まででした。これまでに運用期間が2度延長され、補修を行いながら運用が続けられている状況です。現在参加国間では、少なくとも2024年までの運用継続が合意されています。

NASAが2024年までの継続を発表したのは、オバマ政権時代の2014年1月。有人火星探査を見据えた研究活動にISSが必要であること、そしてISSでの科学実験が医学や産業の発展に貢献することなどが継続に踏み切った理由として挙げられました。

2025年以降の地球低軌道活動はどうなる?米国はISSの運用を延長。日本は夏頃に政府が方針を決定する見込み
(画像=オバマ元大統領がケネディ宇宙センターを訪れた際の写真
Credit : NASA/Bill Ingalls、『宙畑』より引用)

日本は2014年4月に文部科学省の宇宙開発利用部会に国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会を設置し、ISSの運用継続に対してどのような姿勢を取るか検討を始め、2015年12月に延長参加に合意しています。

アメリカが2030年までの延長を発表。民間主体の運用へのシームレスな移行が狙い

NASAが2度目のISS運用延長が発表してから7年が経った昨年2021年12月末、NASAのネルソン長官は、ISSの運用を2030年まで延長する方針を発表しました。

老朽化が懸念されているISSですが、2021年7月に実施された技術評価から「適切な保守を継続しながら、2030年まで地球低軌道における卓越した生産的なプラットフォームとして維持できる」と認められています。

2025年以降の地球低軌道活動はどうなる?米国はISSの運用を延長。日本は夏頃に政府が方針を決定する見込み
(画像= 船外活動を行う宇宙飛行士の様子
Credit : NASA、『宙畑』より引用)

延長の背景について、ネルソン長官は談話で、アルテミス計画に向けた技術革新が期待できることや搭載されている観測装置が気候サイクルの理解に役立てられること、そして2030年までの運用延長により、2020年代後半には、地球低軌道での活動能力を商業的な所有・運用へとシームレスに移行させることが可能となるということを挙げています。

NASAは2021年7月にISSの後継となり得る商業宇宙ステーション構築を支援するCommercial LEO Destinations(CLD)プログラムを発表し、提案を募集。その結果、12月にブルーオリジン、ナノラックス、ノースロップ・グラマンの3社が選定され、NASA総額470億円を支援することを発表しました。

2025年以降の地球低軌道活動はどうなる?米国はISSの運用を延長。日本は夏頃に政府が方針を決定する見込み
(画像= 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会会議資料より
Credit : 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会、『宙畑』より引用)

3社はそれぞれ宇宙関連企業と連合を組み、独自の商用宇宙ステーション構築を目指しています。構築は2020年代後半に予定されていて、2029年から2030年までの2年間でNASAのISS利用をこれらに移行する方針です。