トレーニングがもたらす脳の変化

網膜に余分な錐体細胞を持つことは、網膜から出された信号が形になる仕組みをかなり複雑にする。そしてこのことは、これらの信号を繰り返し受け取る脳の接続にも大きく影響する。このように、外界の刺激などによって機能的・構造的な変化を起こす神経系の性質を「神経の可塑性」と呼ぶ。

たとえば、同程度の視覚を持つ2人の個人であっても、人生の初期にさらされた経験に基づいて、人生の後期にそれぞれの視覚は大きく異なる。その原因は明確に分かっていないが、神経システムが信号の使い方を学習する、つまり神経接続が情報を大脳皮質が使えるようにコード化しているからではないかと、研究チームは推測している。

常人の100倍「色の数」が見える女性
(画像=“Rainbow Gully, Mission Hills, SD” / Credit: ConcettaAntico.com、『ナゾロジー』より引用)

世の中に4色型色覚を持つ人々は数多く存在すれど、彼ら全員が、コンチェッタさんのように特殊な色の認識の仕方をするわけではない。これらの色に注意を向けようと、脳のトレーニングを行っているわけではないからだ。

コンチェッタさんの場合は例外だった。5歳の時点で、自分は周囲と何かが違うと感じ始め、7歳で絵を描きはじめたころには色彩の虜になったのだそうだ。絵を描くことで十分な訓練を受けた彼女の脳は、4色型色覚という特性を有利に活かすよう接続されていったのだ。