天才に蓋をする日本

また、天才に対する処遇が日米で大きく異なる点もこの違いに寄与するだろう。そんな象徴的な事件が過去にあった。

2016年、17歳少年が佐賀県立高校の校内サーバーや、県教委の教育情報システムにハッキングをして個人情報を抜き取って逮捕された。Twitter上では「優秀な能力の持ち主」「率先して能力を買い取るべき」という声があがっていたが、実際のところ、その後この少年が手腕を買われたという話を聞かない。

同じ時期、米国では「Hack the Pentagon(国防総省をハックせよ)」というコンテストを開き、米国防総省をハッキングした高校生を表彰、このハッキングコンテストの結果としてネットワーク上の脆弱性などを発見するに至ったという。日本とは対象的な対応だろう。

また、米国内での話ではないが、オーストラリアにおいて「雇ってほしい」と考えて、アップルのメインフレームをハッキングした10代の少年は有罪判決を記録されず、「彼は情報通信の分野で才能を持っている」と判断された事件があった。本来は犯罪に抵触する行為でも、その人物の意図に深い悪意がなく、高い能力を殺してしまう選択をしなかった寛大な判断に感じられる。

思うに日本は、優れた才能を発揮する土壌がないように感じる。イノベーションを破壊してしまうような、強すぎる法規制などはその一つだ。特にIT分野においては、才能の拡張性が極めて大きいため、それを受け止める土壌がなければ手腕を発揮しようという意欲を持った人物が現れにくいのではないだろうか。

優等生の持つ卓越した頭脳をどの分野に活かすか?ということについて言えば、日本では医者が強力な受け皿となっている。医者には、国内最高クラスの社会的地位と高収入は確約されている。その一方で、IT分野についてはたとえ優秀な能力があっても、それを存分に発揮し育てる土壌がない。以上が日本の優等生からIT起業家ではなく、医者が生まれると考える論拠である。

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日本の優等生がIT起業せず、医者を目指す理由
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

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文・黒坂 岳央/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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