かつての三菱イメージといえば、やはりラリーを中心としたモータースポーツ。過酷な戦いのなかから、その技術を磨いてきたメーカーであり、数々の栄光を憶えている方が多いのではないでしょうか。そんな三菱が、モータースポーツシーンを経て磨き続けてきたのが4WD技術です。
かつてラリーの代名詞だった三菱

1992年に登場したランサーエボリューションは、衝撃的なモデルでした。
1クラス上のギャランVR4に搭載されていた4G63ターボエンジンを、コンパクトセダンであるランサーのエンジンルームに無理やり詰め込み、世界ラリー選手権(WRC)用ホモロゲーションモデルとして発売されました。
これは、当時のWRC常勝マシンであったランチアと同じ考え方(小型ハッチバックに2.0Lターボエンジンを押し込む)で、三菱も本気でWRCに勝ちに行くマシンを世に送り出したという意気込みの象徴でもありました。
その後の活躍はご存じのとおり、1996~1999年にレジェンドドライバー、トミ・マキネン(現トヨタ・ガズーレーシングWRC監督)がドライバーズタイトル4連覇を果たしたのです。
そんなランエボの快進撃を支えたのが、三菱の開発した「曲がる4WD」というべき機構です。
常勝三菱の秘密兵器だった「AYC」

ランエボIVから塔載されたのが、アクティブ・ヨー・コントロール(AYC)です。
ハンドル角、速度、ブレーキ、旋回Gなどのデータを基に、左右の駆動と制動力をコントロールするシステムで、これによりコーナリング中に発生するヨーモーメントを制御し、4WDの弱点ともいえる旋回性能を大幅に向上させました。
ランエボのWRCでの強さは、このAYCに寄るところもあり、ユーザーの多くはストリートやワインディングでこの恩恵にあやかったかもしれませんね。
複合技術の粋、AWC(オールホイールコントロール)

前述のWRCはもちろん、パリダカでのパジェロの活躍等、三菱の4WDモデルがモータースポーツシーンで大いに活躍をしてきました。
こうしたレースシーンをリードした三菱の技術が、現在の市販車にふんだんに盛り込まれているのです。
アウトランダーやRVRといった三菱の4WDモデルには、AWC(オールホイールコントロール)という装備が塔載されています。これは三菱が掲げる「走る歓び」と「確かな安心」を実現する装備です。
前述のAYCはもちろん、ランエボVIIより塔載された技術ACD(アクティブ・センター・ディファレンシャル)は、ハンドル角、エンジントルク、ブレーキ、旋回Gなどのデータを基に、前後輪間の駆動制限をコントロールするものです。
つまり、AYCとACDの統合制御によって、路面状況が変化しても最適なトラクションを各輪に配分し、車体を安定させる技術です。
加えてABS、ASC(トラクションコントロール)といった4輪スリップコントロール機構も備え、より高度な車体制御・安全性能を得ています。
かつて三菱がWRCで、グラベル、ターマックを鬼神の如く走らせるために必死に開発した技術が、快適かつ安全に私達が走行するための技術に転用された、というわけなのです。
モータースポーツに参戦する意義

ある一定の世代にとって、三菱といえばラリーアート、そしてWRCのイメージが非常に強いと思います。
これは苛烈な戦いのなかでランサーを進化させ続けてきた三菱の歴史を共有しているからに他なりません。だからこそ、三菱がWRC撤退した際には、多くのファンが落胆したことと思いますし、その象徴であるランサーエボリューションがラインナップから消えてしまったのは非常に残念です。
現在、WRCでの栄光の時期を支えたエースドライバー、トミ・マキネンはトヨタのGAZOOレーシングの監督として、復帰第2戦でトヨタを優勝に導きました。こうしたモータースポーツシーンでの活躍は、メーカーにとってコマーシャルとブランディングにつながるのはもちろん、先述のように確実に市販車の進化へと繋がるものなのです。
だからこそ、三菱も経営を立て直して、ふたたびWRCをはじめとしたシーンで活躍してほしい、と願う方は少なくないことでしょう。
提供元・CarMe
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