保坂区長が指揮する世田谷区の抗原検査キットのバラ撒きは、散々な結果に終わった。4万個を駅頭などで配布したが、朝早くから並んだものの、貰えなかった人たちからは不満が噴出。キットが不足している医療関係者からも批判の声が上がり、駅頭以外に区内薬局(239か所)を通じて20万キットを配ろうと目論んでいたものの、急遽中止。そのうちたった5万キットだけを医療機関に回す方針に転換したが、実際に配布できているのは1万6000個だけというお粗末ぶりである。
駅頭では配布する時に身元も何も確認しないので、世田谷区と何ら関係ない人も受け取っていた可能性があるばかりか、ついには転売ヤーも出現し、12000円で売られていたことが発覚。
何しろ、綿棒で鼻の奥まで差し込む苦痛を伴うこの検査キットを、どれだけの人が実際に使用したのか検証する術もないというのだ。挙句の果てには、転売ヤーも出現する始末で、無料とは謳うものの、私たちの血税4億円を投入する事業であることを強調しておきたい。
とんでもないことに、このバラ撒きは第8次補正予算案に入っているので、これから質疑されるものなのだが、議会を無視してすでに実行されてしまっているという悪質さである。私はこれにもちろん反対だが、なぜこうした横暴が許されるのかといえば、それは保坂区長の議会軽視に起因していることは言うまでもない。
そして、このバラ撒き施策は、私が散々批判してきた「世田谷モデル」を継承したものであり、何が何でも無症状者の中から陽性者を炙り出したいという、区長の一種の(非科学的な)信仰が根本にある。ゆえに、手を変え品を変え、「世田谷モデルは生き続ける」とかねてから私が指摘した通りに、なっている。
残念でならない。石原慎太郎さんの顰に倣ってカッコよく、「君ら反省しろよ」と言いたいところだが、その後に見せる石原さん一流の笑みのような魅力を持ち合わせない私は、本気で醜い憤怒の相になっている。それは本当のことだが、もっと正確に言えば、呆れて言葉も出ない。これなんか見ては、二の句が継げない
保坂区長は「若い人たちから広がったオミクロン株で、高齢者施設でのクラスターが起きているというニュースを聞いて胸が痛む。」と書いているのだが、若い人の感染と施設のクラスター化に、どいう因果関係があるというのか。
万事こういう主観的な判断で物事を推し進める保坂区政は、いよいよ区民の敵と断じざるを得ない。
文・稗島 進/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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