「脱サラして起業したい」と夢見る人は少なくありません。でも、本当に脱サラする必要があるのでしょうか? ビジネスプロデューサー、シリアルアントレプレナー(連続起業家)として知られる松田充弘さんの著書『会社を辞めない起業』では、「失敗せずに起業するためには、会社を辞めないほうが超有利である」といいます。
※本記事は同書の一部を抜粋・編集したものです。
サラリーマンという特権を捨ててはいけない
サラリーマンでいながら「起業」を考えている人たちの多くは、会社に対して多かれ少なかれ何らかの不安か不満を持っているのではないでしょうか。
- 仕事がつまらない
- 上司と相性が合わない
- あまりに忙しすぎて、好きなことを楽しむ余裕がない
- 給料が安すぎる…
もしかしたら、今日の日中に仕事で大失敗をして落ち込んでしまって、どうにかして会社を辞められないかと思い悩む帰り道に、本屋さんでこの本に出会ったというような方もいるかもしれません。
ですが、どうか早まらないでください。会社を辞めてはいけません。起業は、サラリーマンを続けながらスタートすることができますし、そのほうが最終的に成功する可能性も高くなります。
ビジネスは、うまくいかないことがほとんどです。ユニクロの柳井さんの「1勝9敗」の話を思い出してください(68ページ)。ほとんどが失敗するのです。今から起業をして、それがうまくいく可能性は1勝9敗なら10%ですが、実際の数字はもうちょっと厳しいのではないかと私は感じています。
サラリーマンでいることの何よりの強みは、安定した収入が確実に入ってくることです。しかも、とりあえず一定の仕事量をこなしてさえいれば、その収入は保証されます。会社が嫌い、仕事がつらい、上司が苦手……であっても、給料は入ってくる。これほど恵まれた特権はありません。
「サラリーマン人生が嫌だからこそ起業を考えているのに、そんなことを言われても…」と思われたかもしれませんが、永遠にサラリーマンでいるべきだと言っているわけではありません。来るべき時機が来たら、もちろん辞めて、マイビジネスに専念していただきます。
そのタイミングは、マイビジネスからの収入がサラリーマンの給料を超えたときです。それが最もよいタイミングです。だから、それまでは決して会社を辞めてはいけません。
起業家からのアドバイス
サラリーマンだけを続けている限り気づくことが少ないサラリーマンの最大の価値、それは「毎月、安定した収入が入ってくること」です。 変化の多い世の中で、ビジネスとは本来とても不安定なものです。会社の経営だって同じです。それでもサラリーマンは、その真逆の「安定」を得ることができる。こんな特権、そう簡単に手放したくはないですよね。
サラリーマンのうちにビジネスモデルを検証する
ビジネスを形にするには、まず「何をやりたいか」「何ができるか」を洗い出してリスト化し、「ニーズ」と「ユニーク性」によるマッピングを行って、マイビジネスの優先順位を検討します。
ただし、これらのほとんどは「机上のシミュレーション」であり、言ってみれば「空想」に近いものです。
そのため、その空想プランを一連のビジネスモデルの流れの中で実際に検証していく必要があります。身近な知人や友人に対してテストマーケティングを行い、売り方やプライシング(値付け)について探っていくのです。これも会社勤めをしていれば、たとえ失敗しても何度も繰り返し検証することができるメリットがあります。
【ビジネスモデル検証の流れ】
提供する商品・サービスを準備する
↓
お客さまを集める
↓
実際に利用してもらう(購入してもらう)
↓
お金をいただいて、入金完了(お金をいただく場合)
↓
感想をいただく(アンケートを実施する)
↓
次回につなげる(リピートしてもらう)
これが、スムーズに流れていくかどうかを確認します。
- 提供する商品やサービス・ソリューションは、予定通りの品質のものを準備できたか
- お客さまは、どれくらい集められたか(想定人数を超えているか)
- 実際に利用してもらって満足していただけたか
- 金額は適正か(「こんな程度のサービスにお金は払えない」と思われていないか)
- 再び利用していただけそうか
1つずつについて、リアルに試していきます。もしも、想定外のことが起こったり、うまくいかなかった場合は、その部分をきちんと修正していきます。項目ごとに考えていたときには気づかなかったことが、一連の流れの中に置いてみるとよく見えてくるものです。
もしも何の問題もなくうまく流れる場合は、今度は「コストをかけずに、もっと集客数を増やせないか」「単価をもっと上げられないか」など、さらにプラスになる要素を追求します。検証と修正を重ねて、より強いビジネスモデルに仕上げていくことが重要です。
起業家からのアドバイス
マイビジネスのビジネスモデルは継続的に、半永久的に「検証」「改善」「磨き上げ」をしなければなりません。常に外部環境は変化し続けています。モデルを固定してしまうと、いつか必ずお客さまのニーズと合わなくなってしまいます。
このように、サラリーマンを続けながらの起業は心理的余裕だけではなく、丹念な「ビジネスモデルの検証と修正」を行う時間&金銭的な余裕にもつながります。本書では「規程で副業がNGとされている場合にどういう選択をすべきか」など、「会社を辞めずに起業する方法」について、幅広いアドバイスを掲載しています。興味のある方は、ぜひお読みください。
松田充弘(まつだ・みつひろ)
1971年大阪府生まれ。ビジネスプロデューサー・シリアルアントレプレナー・プロフェッショナルビジネスコーチ・グロービスパートナーファカルティ(客員准教授)。株式会社Next Action・株式会社GM-NeXT/代表取締役社長。目元美容サロンJIYUGAOKA eye salons グループ代表兼オーナー。
これまでに自ら13事業の新規立ち上げを行い、全てが現存事業として展開中。その経験を生かし、ビジネスリーダー研修を年間平均180講座実施している。受講者は年間平均4,500名。また、事業の立ち上げ・拡大・副業・複業支援を目的としたビジネスパーソン(経営者・学生・主婦・シニアも含む)向けのコーチングを1か月平均50人のクライアントに実施中。
提供元・日本実業出版社
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