
サウジ戦に感じられた日本代表の「競争」
話は戻って、前述のサウジアラビア戦。日本代表、特にセンターバック(CB)の位置でプレーした板倉滉と谷口彰悟を観ていると、適度な競争の必要性を改めて感じた。
それは日本代表の普段のCBコンビ、吉田麻也と冨安健洋を欠いたアクシデントによって生まれた競争だった。板倉と谷口は、植田直道や中谷進之介との競争を制しホームの2連戦でスタメン出場すると、見事にクリーンシート(無失点)を達成。中盤の守備が機能していたこともあるが、危なげのない働きを見せた。言うまでもないが、2人ともに競争を勝ち抜いたから今がある。
板倉が所属するのはシャルケ04。2020/21シーズンに降格してしまい現在はドイツ2部所属のクラブだが、今2021/22シーズンも28,000人を超える平均観客動員数を誇り各国の代表選手が所属している。その中で板倉はレギュラーを勝ち取り、代表においても存在感を高めてきた。
谷口はJリーグ王者の川崎フロンターレ所属。2014年に筑波大学から入団して以来、一時的にスタメンを外れることはあっても最終的にはCBの位置には谷口がいる。2020年からはキャプテンを務め、そしてチームは2年連続でJ1リーグのチャンピオンに輝いている。
環境こそ違えど競争を制した両者はともに、相手フォワード(FW)と激しくやり合いまるで自由を与えなかった。
最終予選の4戦連続得点で、一躍ヒーローになりつつある伊東純也にしてもそうだ。爆発的なスピードが目立つが、サウジアラビア戦の1点目に繋がった突破の場面は、相手選手との不利な体勢からの競り合いを諦めなかったことで生まれた。所属するベルギーのヘンクでも、加入当初は批判的な声も浴びたが年々出場数を伸ばし、今では「ベルギーサッカー界最高の選手の1人」と報じられるほどになっている。
日本スポーツ界全体における将来への懸念
育成年代のサッカー指導者の方に話を伺う機会が時折ある。その際によく聞くのが「近頃、負けん気を表に出すことが苦手な子が多い」という内容だ。教育の現場で競争の機会が減っていることだけが原因ではないだろうが、今後日本サッカー界、ひいては日本スポーツ界全体の課題になる可能性は高い。
2002年日韓ワールドカップの頃の日本代表は、技術では今の日本代表に到底及ばなかった。でも、思い出してほしい。60%を超える視聴率を叩き出したように、多くの日本人は当事者として彼らを熱く応援していた。意識していたわけではないかもしれないが、あの日本代表は結果として闘志が前面に出ていた。
現在の技術が上な選手達、今後現れるであろうさらに上手な選手達が、負けん気を、闘志を表に出すことができるか否か。それは案外、日本サッカー界の人気に大きな影響を与えるのではないだろうか。
精神論だと言われるかもしれないが、スポーツにおいて精神や感情は重要だ。感動して泣いたり、負けて悔しがったり。心や感情が動かされるからこそ、人はスポーツに夢中になるのだから。
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