24時間、傷口に漬けるだけで再生するようです。

米国のタフツ大学(TU)とハーバード大学(HU)で行われた研究によれば、24時間漬け込むだけで、大人のカエルの後ろ脚を再生させる化学物質のカクテルを開発した、とのこと。

オタマジャクシのはえかけの脚とは異なり、大人のカエルの脚は通常、切り落とされても再生しません。

しかし新たに開発された化学物質のカクテルに、傷口に24時間はめるだけで、骨の再生は不完全なものの、脚の指の1本1本までが識別できるほど、形状を回復させることに成功し、カエルは再び普通に泳げるようになりました。

研究内容の詳細は2022年1月26日に『Science Advances』にて公開されています。

目次

再生しないハズのカエルの後ろ足を再生する化学物質を発見!
現在研究者たちはマウスの脚を切り落として哺乳類での検証を行っている

再生しないハズのカエルの後ろ足を再生する化学物質を発見!

再生しないハズのカエルの後ろ足を再生する化学物質を発見! 次は哺乳類
(画像=再生しないハズのカエルの後ろ足を再生する化学物質を発見! / Credit:Acute multidrug delivery via a wearable bioreactor facilitates long-term limb regeneration and functional recovery in adult Xenopus laevis (2022)、『ナゾロジー』より引用)

地球上の動物の多くには再生能力が備わっています。

特にヒトデやプラナリアなどの動物は、千切りにされても、切り身から全身を復元する、驚くべき再生能力が知られています。

またオオサンショウウオやウーパールーパー(アホロートル)などの脊椎動物でも、切り落とされた手足をほぼ完璧に再生することが可能です。

一方、人間やマウス、カラスなど哺乳類や鳥類では、そのような劇的な手足の再生は確認されておらず、再生を可能にするために必要な基礎的条件すら確かめることができませんでした。

そこで今回、タフツ大学とハーバード大学の研究者たちが目をつけたのは、アフリカツメガエルでした。

オタマジャクシ時代のカエルは、はえかけの脚が切り取られても、再生することが可能ですが、大人になったカエルは手足の再生能力がありません。

そのため研究者たちは大人のカエルを「ギリギリ再生できない存在」とみなし、僅かな後押しで再生が実現する可能性があると考え、再生条件を探る実験を行いました。

結果、絹タンパク質と5種類の化学物質(BDNF、1,4-DPCA、RD5、 GH、およびRA)を組み合わせたカクテルを切断から24時間の間、傷口に漬け込むことで、カエルの脚を再生できることが判明します。

再生された脚は骨こそ不十分でしたが筋肉・血管・神経が通常の脚と同じパターンで形成され、最終的(18カ月後)にカエルは再生された脚で通常と同じように泳いだり壁を昇ったりすることができるようになりました。

この結果は、特定の化学物質の組み合わせに短時間浸すだけで、18カ月物長期にわたる再生プロセスをスタートさせられることを示します。

また研究者たちが再生が起きているカエルの傷口の遺伝子を解析したところ、胚発生時(卵の中)で脚を作る時と同じ遺伝子が働いていることが判明します。

そのため研究者たちは、化学物質のカクテルが「羊水」のような働きをすることで、カエルの脚の再形成につながったと結論しました。