拡大解釈の誤謬
Fallacy of extension
論敵の言説を不当に拡大解釈して、その点を批判する
<説明>
「拡大解釈の誤謬」とは、論敵の言説を不当に拡大解釈して、その拡大解釈した点について批判するという論点歪曲の誤謬であり、ストローマン論証の一つです。詭弁を使うマニピュレーターは、前提を意図的に歪曲することで自分にとって好都合な結論を導きます。
誤謬の形式
Aが言説SAを主張する。
BがAが主張する言説SAを拡大解釈した言説SA‘を偽造する。
Bが言説SA‘を偽と証明する。
したがって、Aの言説SAは偽である。
<例>
米国市民は進化論を信じていない。
したがって米国市民は非科学的だ。
米国では多くの市民がキリスト教を信仰し、その創造論を様々な解釈で受け取っていますが、そのことを根拠に「米国市民は進化論を信じていない」とするのは【軽率な概括】であり、真ではありません。また、誤った知識をもっていない人間は事実上存在しないことから、「進化論を信じていない」ことを根拠にして「進化論を信じていない人」の全体的評価を「非科学的」とするのも帰納的には強いとは言えません。さらに進化論の体系のすべてが真であるとは限らないので、それを信じないことを「非科学的」と断ずることは演繹的に妥当ではありません。このように言語的な曖昧さによって不備が存在する論証は、言語の曖昧さの拡大解釈によって成立しています。この拡大解釈が論点を歪めるのです。