「新発売」「○○限定」「売上NO.1」と書かれている商品を、思わず手に取ってしまったことがあるでしょう。

このように、魅力的なパッケージデザインやフレーズは、商品の売り上げに大きく貢献します。

そして新しい研究では、パッケージに書かれている1つのフレーズが、実際に消費者の味覚にまで影響を与えると判明しました。

アメリカ・オハイオ州立大学(OSU)食品科学技術学部に所属するクリストファー・シモンズ氏ら研究チームが、同じクッキーでもラベルの一言で味の評価が大きく変化すると報告したのです。

研究の詳細は、2021年12月16日付の学術誌『Food Quality and Preference』に掲載されました。

目次

  1. 同じ商品でもネガティブなラベルがあるとまずく感じる
  2. ネガティブなラベルは「味覚を研ぎ澄ます」のに役立つかも

同じ商品でもネガティブなラベルがあるとまずく感じる

食品業界では、「発売した商品が不評だった」ということがよくあります。

発売前の「消費者による試食テスト」では好評だった製品でも、いざ発売してみると、「おいしくない」という苦情が殺到するのです。

そこで研究チームは、製品の品質以外に、消費者の評価に影響を及ぼす要因を調査することにしました。

ラベルに書かれた一言で「同じクッキーの味」が変わってしまうと判明
(画像=全く同じクッキーでも、ネガティブなフレーズがあると不味くなる / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究ではパッケージに書かれているフレーズに焦点が当てられました。

実験では、オハイオ州立大学に所属する58人の成人が、全く同じチョコレートチップクッキーを3つ試食。

しかしそれぞれのクッキーには以下の異なるラベルが貼られていました。

  • 「標準的」
  • 「リニューアル・改良しました」
  • 「クレームあり」

その結果、参加者たちは「3つのクッキーの味と食感はそれぞれ異なっている」と認識しました。

そして研究チームの予想通り、「リニューアル」ラベルのクッキーは、「クレーム」ラベルのクッキーよりも「かなり美味しい」という評価が得られました。

さらにポジティブなフレーズよりもネガティブなフレーズの方が、消費者の味覚に強い影響を与えると判明しています。

「新しい味に挑戦した商品」や「チーズや野菜のように好き嫌いの分かれるもの」が、低評価コメントやネガティブなフレーズの影響を受けるのは、なんとなく想像しやすいでしょう。

しかし今回の実験では、ほとんどの人が大好きで安定したおいしさをもつチョコチップクッキーでも、それらネガティブなフレーズの影響を受けると分かったのです。

そして研究チームが行った62名の参加者による別の実験でも、同様の結果が得られました。

ですから私たち消費者は、既に購入した食品については低評価コメントを見ないよう意識することが大切です。

そうすることで味覚がネガティブな影響を受けず、おいしく食べられるでしょう。

とはいえ、「ネガティブなラベル」は、完全に悪者というわけでもありません。

研究チームは、「ネガティブなラベルがより良い食品をつくるのに役立つかもしれない」と述べています。

ネガティブなラベルは「味覚を研ぎ澄ます」のに役立つかも

ネガティブなフレーズは、確かにクッキーの評価を下げました。

この結果は、次の疑問を生じさせます。

「ネガティブなフレーズによって得られた評価は、製品の実際の欠点を明らかにしているのか、もしくは単なる想像上の欠点なのか?」という疑問です。

この点、研究チームは、「ラベルが味覚すべてに影響を与えるわけではない」という結果に注目しています。

例えば、クラッカーに「クレームあり」のラベルを貼っても、塩味、色、香りなどの評価は影響を受けませんでした。

またチョコチップクッキーの場合は、色、チョコレートチップの量、チョコレート風味などの評価が、ラベルの影響を受けなかったとのこと。

ラベルに書かれた一言で「同じクッキーの味」が変わってしまうと判明
(画像=ネガティブなラベルの影響を利用した試食テストで、隠れた欠点を見つけられるかも / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

これらの結果は、ラベルによって「人の味覚が狂うわけではない」ことを示唆しています。

そのためチームは、「ネガティブなラベルが、人の感覚を研ぎ澄まして隠れた欠点を見つけるのに役立つ」という可能性を見いだしました。

もしかしたら、発売前の消費者テストに「ネガティブラベル入りの試食」を含めることで、従来のテストでは気づけなかった欠点を明らかするかもしれないのです。

低評価コメントの影響を受けづらい「完成度の高い商品」を生み出すことも可能でしょう。

とはいえ今回の研究だけでは、まだ確証には至っていません。

そのためチームは、もっと大規模な実験を行って同じ結果が得られるか試したいと考えています。


参考文献

Just Two Words on a Cookie Label Can Mess Up How It Tastes, Study Finds

元論文

The impact of applied labeling context on consumer acceptance of differently valenced products


提供元・ナゾロジー

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