なぜロシアの言い分を検証しない?

また、ロシアのNATOについての主張だけではなく、コソボ空爆とクリミア併合を同一視したり、ロシア系住民がウクライナで不当に差別されているという主張も前述した媒体は受け入れている。これらの主張は識者たちが不正確であると指摘しているし、大概それらの主張は穴は歴史の知識さえあれば見抜けるものである。

筆者は決して意図的に日本のメデイアが誤情報を広めてはいないと思うが、不勉強であるとは言わざるを得ない。また、このままロシア側の主張が一方的に発信される状況が続いてしまえば、日本がロシアの「いかなる攻撃に対しても強い行動をとること」を困難にしてしまう。

ロシアにとっての戦場はウクライナだけではなく、遠く離れた日本でも情報戦争という形式で展開しているのである。

ウクライナだけではなく、日本も最前線

無論、NATO拡大の方針が完璧ではなかったことは疑いようがない。長らくソ連の圧政に苦しんでいた東ヨーロッパ諸国とNATOを恐れるロシアを仲介しながら、西側が双方の相互理解を図る方法は存在したはずであり、その点では反省はあるのかもしれない。

しかし、今回のウクライナ危機の最中においてロシアがNATOに対して抱いている敵対心は誇大妄想に過ぎないし、ベダプスト覚書でロシアがウクライナの主権を尊重している以上、その約束を反故にすることは果たしてよいのか。

ウクライナ危機から遠く離れた出来事ではない。日本のメデイアへとロシアのプロパガンダが浸透している現状、それがもたらす影響について考慮すれば、対岸の火事として認識しなければならない。ロシアの要求がなんであれ、それを一方的に武力で押し付ける事態を許容してはいけないのである。

文・鎌田 慈央/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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