科学的な評価のもとに政治決断を

メディアは視聴率が優先かと思わせるような、コロナ感染症の報道が過熱している。第5波の終わりにあった、これからは重症者数が重要だったという話は吹き飛び、連日過去最多と大騒ぎしている。

埼玉医大の教授も重症者はいないとテレビで語っていたし、一部の有名人がようやく「ウイルス分類を変更すれば」と提唱しているが、多勢に無勢で収まる気配はない。

緊急事態宣言は必要か?
SeanPavonePhoto/iStock(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

「年末年始と成人式で人の流れが増えたからだ」と専門家は言うが、専門家が言わなくてもそんなことは誰でもわかることだ。

まん延防止策の開始前から、実効再生産数は急激に減っている。沖縄では感染者数は1月15日の1826名をピークに減少しており、実効再生産数は1月9日の10.36が最も高く、1月20日には1を切っている(減少に転じている)。広島も1月6日の14.45から1月27日には1.13となり、ピーアウトが近いと思われる。東京都と大阪府の実効再生産数の最大値は5.26(1月10日)と4.83(1月9日)であるので、沖縄県と広島県の高い数字は県外から一気に感染者が流入したものと推測される。

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沖縄県の第5波の感染者数と重症者数のピークは809名(8月26日)と139名(9月2日)であり、今回のピークは1829名(1月15日)、47名(1月25日)で、感染者数が2倍以上だが重症者数は3分の1程度だ。重症者/感染者数は0.17から0.026と6分の1以下である。

もちろん、最多の日を単純に比較して済むものではないし、高齢者に感染が拡大して重症化率が多少は上がるかもしれないが、明らかに第5波とは異なる状況である。これまでのコロナ感染症とオミクロン株とは特徴が異なっている。

日本のワクチン2回接種率は80%強であるので、ワクチン接種者とワクチン非接種者の感染者や重症者に占める割合が、80:20であれば、ワクチンの効果はなくなったと言えるし、もし、50:50であれば受けていない人たちのワクチン接種をさらに積極的に勧めるべきである。米国では重症化した人は圧倒的に非接種者に多いと報告されている。単なる病床使用率だけでなく、どの程度の負荷がかかっているのかのデータが不可欠である。

今頃、「マスクをしてちゃんと欲しい」などしか言わない専門家など必要ない。10歳未満のコロナ感染者は150,000人を超えているが、重症者は1名、死者はゼロである。10歳代では24万人の感染者のうち4名が亡くなっているとはいえ、経済を止める必要があるのかどうかの冷静な議論が必要だ。

私を含む高齢者が自分の身を守れば、若・中年層の行動制限は厳しくなくていいように思う。

PCR検査をしなくてもコロナ感染症と判断していいなら、2類分類を5類か、それ相当に変更すればいい。PCR検査も抗原検査も十分提供できない中で、インフルエンザ感染に近くなってきているようだし。

科学的、統計学的な解釈をもとに、科学的な対策を取るべきではないのか?コロナ重症者が確実に入院でき、他の病気でも救急医療が必要な患者さんのアクセスが確保される、それを考えるのが政治だと思う。言うまでもないが、重症者におけるウイルスゲノム解析は必須である。

そして、抗体だけでなく、細胞免疫を考える科学力も不可欠だ。

文・中村 祐輔

文・中村 祐輔/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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