新潟県の西部に位置する佐渡島は、日本海側最大の島であり、海産物の宝庫とも言える豊かな海に囲まれています。
そんな佐渡島の近海で、新種の環形動物(ゴカイ、ミミズ、ヒルなどの無脊椎動物グループ)が発見されました。
東京大学大学院理学系研究科 附属臨海実験所に所属する三浦 徹(みうら とおる)教授ら研究チームが潜水調査により、体が尾部に向かって分岐するRamisyllis属の新種を見つけたのです。
これはまるで怪獣キングギドラのように分岐していることから、「キングギドラシリス(R. kingghidorahi)」と名付けられています。
研究の詳細は、1月19日付の科学誌『Organisms Diversity & Evolution』に掲載されています。
目次
日本で体が分岐する環形動物の新種が発見される
佐渡島で発見された「小さいキングギドラ」
日本で体が分岐する環形動物の新種が発見される
新しく発見されたキングギドラシリスは、環形動物Ramisyllis属の新種です。
Ramisyllis属は、体が枝分かれする奇妙な生物で、2006年にオーストラリア北部の浅海域で初めて発見され、2012年に「R. multicaudata」として正式に新種記載されました。
この生物については、最近になってようやく内部構造が明かされ、昨年その論文が発表されています。
このR. multicaudataに関する研究については、下記の記事で紹介しているので、興味のある人はこちらを参照してください。
とはいえ、体が分岐する動物の例は非常に少なく、未解明な部分が多くあります。
新種の発見報告もないため、研究は完全に停滞していました。
ところが2019年10月、三浦氏ら研究チームの潜水調査によって、日本の新潟県佐渡島南部の宿根木(しゅくねぎ)町付近の海から、体が分岐するRamisyllis属が見つかったのです。
採集された個体を分析した結果、オーストラリアで発見されたR. multicaudataと類似点はあるものの同一ではなく、近縁の新種であることが判明。
その特徴から有名な怪獣にちなんで、キングギドラシリス(学名:Ramisyllis kingghidorahi, またはR. kingghidorahi)と名付けられました。
では、新種キングギドラシリスにはどんな特徴があるのでしょうか。
佐渡島で発見された「小さいキングギドラ」
キングギドラシリスは、単一の頭部をもち、尾部に向かって分岐する性質があります。
体が枝状に分岐するとき、消化管や神経、筋肉も一緒に分岐するようです。
また分岐した多数の尾部からは繁殖個体を放出できるとのこと。
さらに尾部から海水を取り込んで、栄養吸収効率を上げることも可能だと考えられています。
そしてこれらの特徴は、カイメンを宿主とする際、有利に働きます。
カイメンの体内にキングギドラシリスの体を張り巡らすことで、効率よく栄養を吸収し、十分な繁殖が可能になるのです。
実際、佐渡島で採集されたキングギドラシリスも、水深十数mの岩場に付着するカイメン内部に生息していました。
さて、本種の特性については、このようにいくつか判明していますが、未だに解明できていない部分が非常に多くあります。
一般的な動物と比べて極めて特殊な存在なため、今後の進展によっては生物学の常識が覆される可能性もあるのだとか。
日本の佐渡島で発見された「小さなキングギドラ」は、今後も未知の情報を与えてくれるかもしれません。
参考文献
体が分岐する環形動物の新種発見:佐渡島のキングギドラシリス
元論文
Ramisyllis kingghidorahi n. sp., a new branching annelid from Japan
提供元・ナゾロジー
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