日本の自己認識を再確認するチャンス

端的に言うと、現在の日本の外交には武力による裏付けがないので致命的に無力です。また経済力にも陰りがさしている状態が長く続き、存在感は年々低下する一方です。その直接的な原因や背景は様々に考えられますが、ここでは論じません。一つ言えることは、「社会とは相当の賢人でも一個人に理解できるような単純なものではない」ということでしょう。

今回のウクライナ危機は、日本と日本人が自分自身の国家観や世界のなかでの位置づけについて深く考えるチャンスです。実はロシアによる2014年のクリミア半島併合の時も絶好の機会だったのですがその時は見逃しました。

今はまだ言及する政治家や有識者が少ない状況ですが、紛争が激化した際には自ずと関心が高まるでしょう。そのときは「悪いロシア」という皮相的な思考で片付けることなく、日本人自身が我が事として捉えて現実的な対応ができるようにしたいものです。

国防について「保護」されている状態と相互に役割を果たす状態は全く異なります。「日米同盟」が言葉だけの「同盟」ではないというためには、現状の強い依存状態を今一度見直すことも大切です。

湾岸戦争の際、米国が日本に言った“Show the flag.”には複数の意味(:「旗幟鮮明に」または「部隊を」など)があるようですが、「国際的な安定に対して日本が貢献できること」について、自信を持って独自の「旗」をたてられる国にしたいものです。

文・田村 和広/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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